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第二章 入学式
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しおりを挟む「四人部屋か!すっげぇ楽しそうだ!」
部屋の表札には僕と兎君以外にふたつの名前が連なっていた。
鳥羽 文貴
浪木 将翔
まさか四人部屋だとは思わなかった。普通(?)は二人部屋じゃない?
兎君に続いて中に入ると共同リビングらしきところに2人の生徒がいた。
一人は細身で僕より身長が低く肩まで伸ばした銀髪が綺麗な子だ。顔立ちも整っていて、その髪色も相まって一瞬見惚れてしまった。ただ、死んだように濁った菫色の瞳が気になる。左手にはめた手袋も相まってワケありっぽそうだ。
最後の一人は.....「あぁ、この人αなんだ」とわかるほどオーラを持っている長身の人だ。左サイドを耳にかけた灰色髪のショートで、焦げ茶の瞳。
αって目つきが悪いやつしか居ないのかな?
(二人ともクセが強そう)
素直にそう思った。
「おっすー!俺は兎道 湊都!!湊都でいいぜ」
コミュ力高い!さすが兎君だね
「俺は浪木 将翔だ。好きなように呼んでくれて構わんぜ~」
兎君に最初に反応したのは灰色髪の男。目つきの悪さが嘘のように人懐っこい笑みを浮かべた。
「私は鳥羽 文貴です。Ωです、よろしく」
「「えっ!?」」
僕と兎君の声が重なった。
Ωだって?いや、えっ?
僕はケーキ君(浪木 将翔)を見て文ちゃんを見て....理解できないと呟く。
「ケーキ君はαですよね?」
「ケーキ君?もしかして俺のことか!?なんでケーキ.....あぁ、ショートケーキか」
察しがいいようで。将翔→しょうと→ショート→ショートケーキ!!
「まぁ確かに俺はαだ」
「ならΩと一緒の部屋になったらダメじゃねぇか!」
それ、君が言う?兎君。心配そうに文ちゃんを見てるけど君は自分のことを考えて。
「その点は大丈夫。私番がいるので。ほら」
ほらと言われて見せられたのは首輪のついてない項。そこにはガッツリ噛み跡が残っていた。
なるほど.....。
「番がいるなら発情期がきても大丈夫ですね」
「もうその年で番がいんのか......すげぇ」
「まぁ、どのみちΩだろうがなんだろうが俺はEDだから襲われる心配しなくてもいいんだけどな」
「へぇEDですか....ん?」
「EDってなんだ?」
「「......ED!?」」
今度は僕と文ちゃんの声が重なった。
サラリとぶっ込まれたけど、ソレはデリケートな問題では!?言っちゃっていいの??
「だからEDってなんだよ!?」
「湊都君、EDっていうのは勃起不全のことなんだ」
「ぼ.....はぁ!?あっ、EDって勃起不全のことか!!」
「美人さんと可愛子ちゃんからそんな連呼されたら変な気持ちになっちまうな」
「ですがEDでもΩの発情期に当てられて治った事例があるじゃないですか?ケーキ君もそれで治るかもしれないですよ?荒治療ですが」
「それも試したんだが効果なかったんだよなぁ。ま、別に困ることじゃねぇし」
「確かにそうですけど」
「「はぁ!?」」
「なんですか?」
「なんだよ、そんな大声だして」
兎君と文ちゃんに信じられないものを見るような目で見られたが、何をそんなに驚くことがあるのか分からない。
僕とケーキ君は首を傾げる。
「オナニーはどうすんだよ!?まさかしないのか!?」
「してないっていうか、できねぇし」
「僕はしないですね」
「マジか!?」
「それは生物としてどうなのかなって思うけど....。普段の生活の中でムラムラする瞬間とかない?」
「ある」
「ないですね」
「燈弥君はもう人間じゃなくて聖人か何かだね。将翔君はまだ大丈夫。間に合うよ」
その言い方だと僕はもう手遅れってことになるんだけど。なに、男として終わってるって言いたいのかな?
「というかシモの話は終わりにしません?この部屋についていくつか聞きたいことがあるんですが」
兎君への心配事がなくなったから、もうシモの話はしなくてもいいや。それでも気は抜けないけど。
「なんで四人部屋なんですか?」
「戦闘で昂った熱を冷ますために二人部屋内での強姦が多発したんだとかそんな理由だ」
「ろくでもない理由ですね。じゃあこのリビングの右側にある扉が僕達の寝室ですか?」
そう聞くと肯定の返事が返ってきた。
扉を開けると二段ベットが壁際に一つづつ置いてあり、そのベッドを挟むように真ん中にテーブルが置いてある。
鍵付きのロッカーみたいなものもあるため、見られたくないものを仕舞うのに困らなさそうだ。
「本当に『寝るだけ』の空間ですね」
「狭くね!?俺もっと広い部屋を想像してたのに!」
「これが一般生徒用の部屋だから。もっと広い部屋がいいなら成績上位に入るしかないね」
「そうそう。成績上位者達は一人部屋か二人部屋を与えられるんだよなぁ。ほんとずりぃわ」
「どうやったら成績上位者になれんだ?やっぱ勉強か?実技か?」
「「知らない」」
「え?」
「??」
知らない?
「持ち上がり組の俺でもその成績上位っていうのが何を示してんのかわかんねぇんだよ」
「私はこれでも筆記が学年10位以内に入るんだけど、そういった打診は来たことないよ」
「え!文貴めっちゃ頭いいじゃん!!」
「となると実技ですかね?」
「知り合いに実技上位の奴がいるけど文貴と同じで音沙汰なしだとよ」
「謎ですね.....因みにーー」
ぐぅぅぅぅ......!
「「「.......」」」
「えへへへ....」
三人して兎君を凝視する。このタイミングでお腹を鳴らすとは.....。
「ご飯食べましょうか」
「食堂行くか?お前ら使い方知らねぇだろ」
「お願いします」
こうして僕達四人は食堂へと向かうことにした。
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