狂った世界に中指を立てて笑う

キセイ

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第一章 始まり

《side チビ》 爆発

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《side  チビ》


目が覚めると俺は森にいた。

そう、一人で。

おかしなことにどこを見渡してもそばに弥斗が居ない。


「弥斗.....?」


やっぱりおかしい。だって俺は確かに触れたんだ弥斗に。弥斗に好きって伝えて、それで弥斗も俺の事を好きって言ってくれた。
俺達は両想いなんだ。キスだってしたし.....。

なのにそばに居ない。

もしかして夢だったのだろうか?俺があまりにも弥斗を求めすぎて都合のいい夢を見たんだろうか?
だって、弥斗があんなこと言うはずねぇから。
だって、弥斗がこれは夢だって言ってたから。


「.....ふざけんなよ俺!あれが夢なわけねぇ!!」


頭を振り、ギュッと自分の体を抱きしめるようにそう叫ぶ。

俺はあの唇の柔らかさを覚えている。
俺はあの気持ちよさそうな眼差しを覚えている。
俺はあの優しい声を覚えている。
俺はあの熱さを覚えている。

何より、優しく頭を撫でられた感触を覚えている。

絶対に夢じゃない。ところどころ記憶が抜けてぼんやりしているがあの熱は確かなものだ。

弥斗は死んでない。生きてる。生きてるんだ。

(夢じゃねぇ)

確信した俺は噛み締める。
それを知れただけでも俺はまだ生きていけると。頑張れると。
弥斗がここに居ないのは俺が気絶して引き止めれなかったからだ。俺は自分がまだまだ力不足なんだと痛感した。
.......だから弥斗がそばに居ないことに愚痴愚痴言うのは我慢しよう。

(俺だって成長するんだ)


「.....それにしても弥斗はどこかおかしかったな」

......よくよく思い出してみれば珍しくワンピースなんか着て、裸足だった。こんな森を裸足で歩くなんてよっぽどのことがない限り有り得ない状況なはず。

(もしかしたらその状況のせいで俺から離れなきゃいけなかったとか?.....それは俺の願望だな)

保留だ。


「.......」


ダメだ。一度そんな考えが思い浮かぶと脳裏にこびりついたように離れなくなる。
弥斗は俺の事を思って居なくなったのだと。


「~っ、早く強くならねぇと」


そうだ。早く早く強くなる。
じゃねぇと

(だって、弥斗に知らない匂い.....が......)

俺ははたと気づく。
弥斗に抱きついたとき知らない匂いがした。その匂いが気持ち悪くて、嫌いで、苛立たしくて。それで俺は弥斗が欲しくなったんだ。
あと、首元につけられた赤い痣みたいなやつを見つけてイラついて剥がそうともした。

段々と記憶が鮮明に見えるようになってくる。霞みがかったようにぼんやりとした記憶が。

(あ?......弥斗のうなじに凸凹した感触あったよな?)

首に手を回したときのことを思い出すと、自身の手に感触が蘇る。それは確かに凸凹していた。
うなじに凸凹の痕なんてそんなの.....


「番みてぇじゃん.....、!?」


俺は自分が言った言葉に全身が鳥肌立った。咄嗟に歯を噛み締め、喉から出てきそうだった気持ちを抑える。

番?つがい???
弥斗は噛まれたのか??
もう伴侶が出来たのか?

(俺以外に?)

視界が赤くなった。怒りに支配されそうだ。

(番はダメだ!!!!)

そう思っても、俺にはどうすることもできない。


「....まさかもう手遅れなのか?」


そう気づいた瞬間、感情が爆発する。
すると俺を中心に熱風が巻き起こり青い火柱が立つ。青い視界の中、俺は右手を見るといつの間にか始動した魂写棒アルマタクトがそこにはあった。
周りはパチパチと音を立て炭になっていくのに俺は青い炎の中にいながら熱さもなんにも感じない。


そして俺はただ吐き捨てた。


「弥斗に噛み付いた奴殺す」


森は青い炎に包まれる。






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