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【ひぐれの気持ち】僕はきっと、このときのために。
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何だ?!
あの赤い髪毛の女……魔人ミゼって言ったか?
空気がビリビリってふるえてる!
あいつ、ゼッタイにヤバい!
それに……。
『ゴート! 魔人って、こいつのことか! こいつをたおせばいいのか!』
「おやおや、せっかちだねえ~そこの猫獣人は。でも、なかなか強そうだ。お前もアタシにいっぱい力をくれそうだね」
力?
力をうばうのか?
「ひぐれ、きけ! 魔人は、もともとはファルガス帝国の人間だ! 月の女神さまと勇者が我らの国を守るためにはってくれた結界を見つけ、攻撃をするために生みだしたあらたな種族だ! 魔人は、たおした相手や弱い相手から、力や魔力をうばいとる!」
『何だって?! でも、うばった力をつかえるのって、いっしゅんだけじゃないのか?』
その魔法は聞いたことあるけど、そんな感じじゃなかったっけ?
「魔人の術はちがう! うばわれたものは、魂がぬかれたように眠ってしまう! 魔人にうばわれつづける! 我らのミリ姫さまも眠ったまま……幸せになった国は今はもう……魔人ども! ファルガス帝国よ! 我らがそれほどにくいか! だが、我らもお前たちをゆるさん!」
魔人のやつら、何てことを!
「あらあら、ぜ~んぶ説明してくれてありがとう♪ゴート。アンタは強いから倒せなかったんだけど、よわっちいものから力と魔力をもらってアタシも強くなったのさ。アンタと戦う前にその神のしもべの子オオカミから力をもらっておきたかったんだけどねえ。うまく逃げやがった」
ぐるる!!
子オオカミ、コイツに追いかけられてたのか!
めちゃめちゃこの子、怒ってる。
でも。
僕も腹がたっている。
「何でそんなひどいこと、するんですか!!」
「おやおや、小石なんて投げてあぶないねえ。何てことするんだい、この子は」
よるっ?!
ニヤニヤと笑っているミゼに、よるが泣きながら小石を投げている。ダメだよ! 危ないよ!
ゴートといっしょに、子オオカミを抱っこしたよるを背中にかばう。
「よるさま! おさがりください!」
「よる、ダメだ! そんなことをして魔人を怒らせたら、よるもあぶないよ!」
ふりかえって、よるの目を見た。
ああ、ダメだ。
この目は、カズキやファルルとそっくりだ。
ホンキで言いたいことがあるときのよるは、止められないんだ。
「け、ケガしてる! 弱ってる! こんな……こんなちっちゃいわんちゃんを何でいじめるの?! 強くなくったって、子供だって、イヤなものはイヤ! 言いたい事だって、大切なモノだって、まもりたい大事なモノだっていっぱいある! ……させない! させない! この子はよるがゼッタイまもる!」
「あらあら、元気がいいね。なら、お前もその子オオカミも、ゴートも猫獣人も、み~んな力をもらっておこうかねえ。あははは! アタシが魔人のなかで最強になっちゃうかもねえ!」
「よる、足はやいもん! ランドセルしょっても、すっごいはやいんだから!」
「な~んか、めんどくさい子だねえ。ちゃ~んとまもりな? 行きな、【炎の矢】」
ヤバい!
ミゼが魔法をつかった!
「きゃああああ!」
させるかよ!
●
よる。
僕の大好きな、よる。
カズキとファルルが日本にいくときに、僕もなんとなくついていった。いろいろなことをしながらのんびりとしてたっけ。
そして、キミが生まれた。幸せそうな顔で眠り、笑い、泣くキミを見て、とても幸せだった。
でも、赤ちゃんのそばに猫の僕がいるといけないってパソコンでしらべたら出てきたから、僕はおひっこしをした。でも、カズキとファルルがいっしょうけんめい僕にブラッシングして、毛がぬけないようにして、しょっちゅうキミと会わせてくれたっけ。やっぱりうれしかったなあ。
” だあだー、うや! ”
” にゃーにゃ! ”
” ひぐえ! ”
” ひぐれ、かあいかあい♡ ”
” カツオブシ、持ってきたの! えへへ ”
” ひぐれ! テストで100点取ったのー! ”
” おともだちとけんかしちゃった。どうしようひぐれ……ぐすっ、うえええ ”
” ひぐれ、来てくれたんだね。ありがとう ”
” ひぐれ ”
” ひぐれ! ”
すっごくすっごく大事にしてくれた。
僕に幸せをいっぱいくれた。
よるのそばにいれて、ほんとうに幸せだった。
もしかしたら、僕はこのときのためにこの日本に来たのかもしれない。このときのために生きてきたのかもしれない。
きっとそうだ。大好きなカズキとファルルの、そしてふたりの大切な、僕の大好きなよるをまもるために、僕はここにいるんだ。
だから。
だから。
●
バシュッ!!
「あっ?! ひぐれ!」
「おや? ツメでアタシの炎の矢を消すなんて、いがいとやるねえ。アンタ、名前は?」
『もと月の女神、ファルルの『疾風のしもべ』ヒース……ひぐれだ! そして僕はよるの騎士! よるには、ゆびいっぽんふれさせないぞ!』
●
命をかけて、よるをまもりぬいてみせる!
あの赤い髪毛の女……魔人ミゼって言ったか?
空気がビリビリってふるえてる!
あいつ、ゼッタイにヤバい!
それに……。
『ゴート! 魔人って、こいつのことか! こいつをたおせばいいのか!』
「おやおや、せっかちだねえ~そこの猫獣人は。でも、なかなか強そうだ。お前もアタシにいっぱい力をくれそうだね」
力?
力をうばうのか?
「ひぐれ、きけ! 魔人は、もともとはファルガス帝国の人間だ! 月の女神さまと勇者が我らの国を守るためにはってくれた結界を見つけ、攻撃をするために生みだしたあらたな種族だ! 魔人は、たおした相手や弱い相手から、力や魔力をうばいとる!」
『何だって?! でも、うばった力をつかえるのって、いっしゅんだけじゃないのか?』
その魔法は聞いたことあるけど、そんな感じじゃなかったっけ?
「魔人の術はちがう! うばわれたものは、魂がぬかれたように眠ってしまう! 魔人にうばわれつづける! 我らのミリ姫さまも眠ったまま……幸せになった国は今はもう……魔人ども! ファルガス帝国よ! 我らがそれほどにくいか! だが、我らもお前たちをゆるさん!」
魔人のやつら、何てことを!
「あらあら、ぜ~んぶ説明してくれてありがとう♪ゴート。アンタは強いから倒せなかったんだけど、よわっちいものから力と魔力をもらってアタシも強くなったのさ。アンタと戦う前にその神のしもべの子オオカミから力をもらっておきたかったんだけどねえ。うまく逃げやがった」
ぐるる!!
子オオカミ、コイツに追いかけられてたのか!
めちゃめちゃこの子、怒ってる。
でも。
僕も腹がたっている。
「何でそんなひどいこと、するんですか!!」
「おやおや、小石なんて投げてあぶないねえ。何てことするんだい、この子は」
よるっ?!
ニヤニヤと笑っているミゼに、よるが泣きながら小石を投げている。ダメだよ! 危ないよ!
ゴートといっしょに、子オオカミを抱っこしたよるを背中にかばう。
「よるさま! おさがりください!」
「よる、ダメだ! そんなことをして魔人を怒らせたら、よるもあぶないよ!」
ふりかえって、よるの目を見た。
ああ、ダメだ。
この目は、カズキやファルルとそっくりだ。
ホンキで言いたいことがあるときのよるは、止められないんだ。
「け、ケガしてる! 弱ってる! こんな……こんなちっちゃいわんちゃんを何でいじめるの?! 強くなくったって、子供だって、イヤなものはイヤ! 言いたい事だって、大切なモノだって、まもりたい大事なモノだっていっぱいある! ……させない! させない! この子はよるがゼッタイまもる!」
「あらあら、元気がいいね。なら、お前もその子オオカミも、ゴートも猫獣人も、み~んな力をもらっておこうかねえ。あははは! アタシが魔人のなかで最強になっちゃうかもねえ!」
「よる、足はやいもん! ランドセルしょっても、すっごいはやいんだから!」
「な~んか、めんどくさい子だねえ。ちゃ~んとまもりな? 行きな、【炎の矢】」
ヤバい!
ミゼが魔法をつかった!
「きゃああああ!」
させるかよ!
●
よる。
僕の大好きな、よる。
カズキとファルルが日本にいくときに、僕もなんとなくついていった。いろいろなことをしながらのんびりとしてたっけ。
そして、キミが生まれた。幸せそうな顔で眠り、笑い、泣くキミを見て、とても幸せだった。
でも、赤ちゃんのそばに猫の僕がいるといけないってパソコンでしらべたら出てきたから、僕はおひっこしをした。でも、カズキとファルルがいっしょうけんめい僕にブラッシングして、毛がぬけないようにして、しょっちゅうキミと会わせてくれたっけ。やっぱりうれしかったなあ。
” だあだー、うや! ”
” にゃーにゃ! ”
” ひぐえ! ”
” ひぐれ、かあいかあい♡ ”
” カツオブシ、持ってきたの! えへへ ”
” ひぐれ! テストで100点取ったのー! ”
” おともだちとけんかしちゃった。どうしようひぐれ……ぐすっ、うえええ ”
” ひぐれ、来てくれたんだね。ありがとう ”
” ひぐれ ”
” ひぐれ! ”
すっごくすっごく大事にしてくれた。
僕に幸せをいっぱいくれた。
よるのそばにいれて、ほんとうに幸せだった。
もしかしたら、僕はこのときのためにこの日本に来たのかもしれない。このときのために生きてきたのかもしれない。
きっとそうだ。大好きなカズキとファルルの、そしてふたりの大切な、僕の大好きなよるをまもるために、僕はここにいるんだ。
だから。
だから。
●
バシュッ!!
「あっ?! ひぐれ!」
「おや? ツメでアタシの炎の矢を消すなんて、いがいとやるねえ。アンタ、名前は?」
『もと月の女神、ファルルの『疾風のしもべ』ヒース……ひぐれだ! そして僕はよるの騎士! よるには、ゆびいっぽんふれさせないぞ!』
●
命をかけて、よるをまもりぬいてみせる!
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