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声?

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 ごろ、ごろごろごろ。



 のど、鳴ってるや。可愛い!
 いっぱい撫でであげる。
 ひぐれに会えてうれしいな。
 
「本当は私も……寂しかったんだ。よかったあ、ひぐれが来てくれて」

 でも、いっぱいしょんぼりしてたのはナイショだよ?ひぐれとよるだけのヒミツ。

 指きりげんまんはできないから、肉球ぷにぷにぷに。お手手を上下に、にゃんにゃんにゃあん。
 
 はい、できました。ウソついたらカツオブシはお預けなのです、うふふ。

『夕方』と『夜』のコソコソ話って、おもしろいね。

「ひぐれはいつもここに来るの?」



 にゃん。



「あはは、お返事みたい! 『そうだよ』とか? ……それとも、ひとりぼっちのよるが心配になったとか?」



 うなあ。



 あ、おひざの上に来た。
 くりくりしたおめめだね!
 カワイイ!

 でも。

 本当に心配して、近くに来てくれたのかも。泣きそう。

「えへへ……そんなひぐれによるからのプレゼントです。 林間学校で使うカツオブシ、小さい袋がいくつかあるよ! 食べる?」



 にゃあ。



「ふふふ。おすまし顔を、ごろにゃんごろにゃんさせてあげましょう!」

 カツオブシ、カツオブシのパック……あった!
 するするーって、開けちゃいます。



 ……うなあ!
 うなあああああん!
 
 ごろごろごろごろ!
 ふうう、ごろごろごろ!



 すっごいごろごろ言ってるう!
 つ、爪、痛たたあ?!

 待って待って!
 はい、どうぞ!

 ふがふが、ごろごろしてる!
 手の平、くすぐったい!

 でも喜んでるみたい、よかったあ。
 ひと袋ぜーんぶ、食べていいからね。

 私も、持ってきたオヤツ食べちゃお!
 何食べよう!
 
 
 でも。

 オヤツ食べたら帰ろうかな。

 よるがお部屋にいないって知ったら、お父さんとお母さん、迷子になった時みたいにいっぱい汗かいて探しちゃうよ。またお父さん、泣いちゃうかも。

 よるがしたいことって、そんなこと?
 ううん、違うよ。

 それに。

 お父さんはお母さんが大好き。
 お母さんもお父さんが大好き。

 大好き同士、ケンカしてる。
 ケンカなんてしたいはずない。
 
 なら、止めないと。

 よるもお父さんとお母さん、大好きだもん。
 負けてないもん。

 よるの頑張りが足りないんだ。
 ちゃんと、もっと。

 お話を聞いて! って。
 お話を聞かせて! って。

 よるが仲直りさせるんだ! って気合いを入れないとダメなんだよ。

 ね、ひぐれ…………え?
 キョロキョロして、どうしたの?



 ……!!!
 ふ、うなああああああああああっ!!!




「ひぐれ、どうしたの?! そんなこわい声出すのやめて!」

 上っ?!

 木も葉っぱも何もないよ?
 もっと上……お星さま?


 やだあ、こわいよ!
 

 

『お願…………!』




 声?
 女の人の、声?

 ひぐれが見てる方から……上、誰もいないよ!
 ユーレイ?! 
 
「きゃ……」



” よる! ”



「ああ……えっ?」

 男の人の声も聞こえる?
 誰?
 ユーレイいっぱい?!


 
” ファルルにカズキ、気づいて! ラナの声が世界を越えてきた! よるにまで届いてヤバい! ”




 まさか、これ……ひぐれ?!




” よる、僕を離さないで! あ、そんなばかな! 体が! ”



「は、はい! でも待っ、て……きゃあああああっ! 落ちる! えっ?! ひぐれ! ひぐれえ! お父さん! お母さん!」
 

 





『誰か、あの子を助けて!』



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