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Last Episode 星喰いと呼ばれた少年と死を奏でる少女①
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「さあ、また暫し付き合え。ここからは、私の時間だ」
自分の膝枕に頭を預けるユウの頬をつつき、レラは楽しげに笑う。
●
レラの渾身の術を籠めた大鎌を胸に受け、ユウのこの星での生命は終わりを告げた。レラは穏やかな表情で目を閉じるユウを、じいっ、と眺めた。
「この星に二度と訪れる事ができずとも、誰もお前の事を覚えていなくとも、常に全力で……か。生まれ育った星で愛する者共の記憶から消えたお前の。その強さはいったい何処からくる?」
レラは満天の星空の下に浮かぶ球体魔法陣を見上げた。銀色の球体は、ユウの体から溢れ出る星の力を吸収し続けている。
「今回は封印下のお前の力を眷属権限で借り受けて術に籠めてみたが、大鎌が真っ先に悲鳴を上げるとはな。今回もお前の旅路に終止符を打てなそうだ、すまんな」
呟くレラの視界の端で流星群が尾を引きながら、星空を駆けていく。
●
「む、星の力が止まったか」
ユウの体から流れ出ていたた白い光の勢いが減じ、ユウが自らを削り取って星へ捧げる銀色の光に変わった。
「……今でも、お前が望んでも望まなくても、その運命から開放したいと思う気持ちは変わらん。だが、もうお前を殺せない悔しさに涙する事はない。実を言うとな……お前と、『星の子』達と共に過ごす日々も捨てがたくなった」
レラは、自らの想いを籠めて、ユウの頭を撫でる。
「誰がお前を忘れても、私がお前との星の思い出を語ってやろう。星がお前を拒絶しても、私達が寄り添おう。お前に付き合い、笑って泣こう。美味いものを作って、せいぜいこれからも私達の機嫌を取ってくれよ?」
球体に急速に流れ込んでいた白銀の光の勢いが減っていく様を、ちらり、と見たレラはそのまま、その様子を眺め続ける。
すると。
ユウがレラの目前から消え、入れ替わりに白銀の揺らめきがレラの頭上に出現した。
「当たり前のように出てくるなぞ生意気だが、予想通りだな。さあ、ユウよ。皆で行くとしよう」
微笑んだレラは、浮かんでいるユウの魂に語り掛ける。
●
「いつか、私がお前を……この因果律から開放したなら」
レラが、揺らめきから視線を外す。
「むう。ま、何だ……何処かの星の輪廻に紐付いて、また出逢えたその時は……お前と暮らし、子を成し、皆と共に儚く細やかな時を……」
生きてゆくのも、悪くないと思っているよ。
はにかんで呟いたレラの姿が、掻き消えた。
急激に膨張していく球体の傍を白銀の光が空へと駆け上がり、寄り添うように黒が追随する。
そこに。
数瞬遅れて、もう一つの漆黒が黒白の光に合流した。
それは、星と自らの意思を携えて新たな『星の子』となったエステランダであった。
そして三柱の光が星を離れた後。
待ちかねていたかのように球体が星を飲み込み、その姿を消した。
自分の膝枕に頭を預けるユウの頬をつつき、レラは楽しげに笑う。
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レラの渾身の術を籠めた大鎌を胸に受け、ユウのこの星での生命は終わりを告げた。レラは穏やかな表情で目を閉じるユウを、じいっ、と眺めた。
「この星に二度と訪れる事ができずとも、誰もお前の事を覚えていなくとも、常に全力で……か。生まれ育った星で愛する者共の記憶から消えたお前の。その強さはいったい何処からくる?」
レラは満天の星空の下に浮かぶ球体魔法陣を見上げた。銀色の球体は、ユウの体から溢れ出る星の力を吸収し続けている。
「今回は封印下のお前の力を眷属権限で借り受けて術に籠めてみたが、大鎌が真っ先に悲鳴を上げるとはな。今回もお前の旅路に終止符を打てなそうだ、すまんな」
呟くレラの視界の端で流星群が尾を引きながら、星空を駆けていく。
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「む、星の力が止まったか」
ユウの体から流れ出ていたた白い光の勢いが減じ、ユウが自らを削り取って星へ捧げる銀色の光に変わった。
「……今でも、お前が望んでも望まなくても、その運命から開放したいと思う気持ちは変わらん。だが、もうお前を殺せない悔しさに涙する事はない。実を言うとな……お前と、『星の子』達と共に過ごす日々も捨てがたくなった」
レラは、自らの想いを籠めて、ユウの頭を撫でる。
「誰がお前を忘れても、私がお前との星の思い出を語ってやろう。星がお前を拒絶しても、私達が寄り添おう。お前に付き合い、笑って泣こう。美味いものを作って、せいぜいこれからも私達の機嫌を取ってくれよ?」
球体に急速に流れ込んでいた白銀の光の勢いが減っていく様を、ちらり、と見たレラはそのまま、その様子を眺め続ける。
すると。
ユウがレラの目前から消え、入れ替わりに白銀の揺らめきがレラの頭上に出現した。
「当たり前のように出てくるなぞ生意気だが、予想通りだな。さあ、ユウよ。皆で行くとしよう」
微笑んだレラは、浮かんでいるユウの魂に語り掛ける。
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「いつか、私がお前を……この因果律から開放したなら」
レラが、揺らめきから視線を外す。
「むう。ま、何だ……何処かの星の輪廻に紐付いて、また出逢えたその時は……お前と暮らし、子を成し、皆と共に儚く細やかな時を……」
生きてゆくのも、悪くないと思っているよ。
はにかんで呟いたレラの姿が、掻き消えた。
急激に膨張していく球体の傍を白銀の光が空へと駆け上がり、寄り添うように黒が追随する。
そこに。
数瞬遅れて、もう一つの漆黒が黒白の光に合流した。
それは、星と自らの意思を携えて新たな『星の子』となったエステランダであった。
そして三柱の光が星を離れた後。
待ちかねていたかのように球体が星を飲み込み、その姿を消した。
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