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13 今日こそはトドメを差してやる。

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 結論から言えば。

 レラが自らの力の大部分を行使した『崩魂』の術はユウの魂を消滅させることができなかった。力を移し終えたユウの魂を包み込んだレラの術が、かき消されたのだ。

 納得の行かないレラがユウと行動を共にする為に選んだ方法は、ユウの眷属という形で付き従い、自らの力が及ばない理由を探る事だった。

(最初は、『酔狂な奴だ』としか思えなかったな。憎まれ追われ、それでも……星の滅びの中で敵味方関係なく、余計なものを拾っていくユウに何度首を捻ったか)



 ユウに戻りゆく『星の子』達を眺めながらボンヤリと記憶の断片を紐解くレラの目の前で、額にビッシリと汗を浮かべたユウが目を開けた。

「ふう、お待たせ」
「終わったか。今日はどんな死に方がいい」

 大鎌を頭上で、ぐるり、と回転させたレラにユウは両手を突き出した。

「わあ! 少し! 少しだけ待って!」
「いつでも声を掛けろ。今日こそはトドメを差してやる」
「あ、はは……少しだけ」

 レラに手を合わせたユウは、凍る大地を眺めた。

「……ごめんね。が大切に育んできたものを書き換えてしまう」
「……感傷に浸っている所に悪いが、今回はどうするつもりだ? いっそ星の始まりまで戻して『ユウの星』とでも名付けたらどうだ?」
「しないよ?!」

 ニマニマと笑うレラの発言に驚愕したユウが両手を前に突き出した。次いで、苦笑いを浮かべる。

「びっくりした。そもそも、僕にはそこまでの力はないよ」
「……そうか、残念だ。ほわほわ性根で自己評価が低い、自虐性溢れるお前そのもののような星の様を見たかったのだがな」
「レラ、ひどくない?!」
「ま、いい。邪魔したな、続けろ」
「……もー」

 がっくりと肩を落としたユウが、へんにょりとした顔で凍り付いた大地を、空をまた眺める。その瞳は澄み渡り、穏やかな深みを帯びている。
 
(お前の封印の中にある、救われた星々がお前へ、と『星の子』達に託した力は今や、星どころか星系さえも改変は容易いだろう。星が再びお前が来るのを拒絶するのは、お前を憎むからではない。逆だろうな)



 レラがユウの『改変』を見てきた中で、ほぼ確信を得た事がいくつかある。

『改変』を行えば、元の時間に戻った時点で当然の如くユウはいない。

 記憶を残せる精神体や生命体であろうと、新たに歩んだ生命の中で星の滅びなど覚えている訳がない。

 当然、ユウが成した事もこの星にいた事も覚えていない。

 だが。

 星は違う。

 その一部を巻き戻した所で、記憶の全ては消えはしないのである。

(星の意思に突如割り込み、魂を削って星を滅びの恐怖と痛みから救う。しかもユウは呼ばれれば星の滅びに全力で向き合う。何の打算もなく、憎まれようとも自分自身が忘れ去られても、だ。救われた星々は『星の子』とそんなお前を見て、傷つくお前にもう救われたくないのだろう)

 レラが自らも感じた、そのやるせない感情。





『……必ず、殺す! 必ず、殺してやる! 馬鹿げた因果律、星喰いと呼ばれ続けても、どれほど憎まれ蔑まれても星を救い続けるお前を! 必ず、必ずだ!! 必ず、私の手で……解放してやる!!』





 こと切れたユウを抱え、泣きながら夜空に向かって絶叫した自分を思い出して、苦笑いする。




(ユウが見ていないからこそ、泣きも叫びもできる。もし見られていたならば……いや。いやいやいや。ユウからはそんな話を一度も聞いた事が無い。そんな訳無いっ!)

 目を閉じて、プルプル! と首を振って懸念を払ったレラは、ほんのりと赤らんだ頬をさすった。

(……もちろん。お前を解放したいが為に傍にいる事は変わらないが、今は在り様が少し違うな。いつの日か……そう、いつの日か……というのなら)

 風景を眺めては時折胸に手を当てて祈りのように目を閉じるユウを見て、レラは微笑む。
 




 
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