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11 レラの怒り
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『黒爪・風舞』
袈裟、逆袈裟、横殴り。
魂が凍えそうな風斬り音と共にレラが縦横無尽に大鎌を振れば、その切っ先から生まれた黒い三日月が無数に枝分かれして敵へと襲いかかる。
ノルンとエステランダに群がる人外へと、天を駆けながら絶え間ない攻撃を加えるレラは二人の周囲に我先にと敵がひしめき合う状況に眉を顰める。
(執拗すぎる。何故に神樹へと向かわずにあの者共は二人へと襲いかかる?)
レラの視線の先には、神樹へと向かっていた集団の中から、方向を変えて二人の方へと向かってきている。
(ま、神樹から得た力で調子に乗っているのだろうな。とはいえ、いくら神格といえども数百は厳しいか。特にノルンは回復特化だからな……どれ、エステランダの道を開いてやろう。私にはユウの真似は出来ん)
魔物達が集まる理由に見当がついたレラが殲滅魔法を保留したところに、狼と羽を生やした精霊の群れが襲い掛かってきた。
「馬鹿共が、力の差もわからないか……何だと?」
轟々と軽やかに大鎌で周りを薙ぎ払ったレラが、目を見開いた。エステランダとノルンの目の前に、ひと際大きい狼と光輝く精霊が立ちはだかっていたのだ。
「ち、陽動とは小癪な」
レラが苛立ちの表情を見せ、行く手を阻む者達だけに切っ先を集中し始めた。
●
眷属を呼び寄せ応戦していたエステランダと、その傷を必死に癒すノルン。
が。
群れと共に襲いかかる獣や人外の頭の熾烈な攻撃に、とうとうエステランダが歩みを止めた。
それでも。
エステランダは無数の攻撃を受けてもノルンを守り続ける。自分の傷を厭わないノルンが、エステランダ達を癒やし続ける。
まるで、生命を分け合う半身を守る様に。
ぎゅうう!!
レラの金色の瞳が怒りの余りに収縮する。
普段は小競り合いを繰り返し、わあわあギャアギャア、といがみ合う二人ではあるが、そこには言葉に出来ない程の安心感と優しさ、想いが詰まっている。
レラと『星の子』は。
共にユウを想い。
時には支え。
手を取り。
笑い。
哀しみを分かちあい。
気が遠くなる程の長い年月を過ごしてきたのだ。
●
レラは。
低く。
低く。
囁いた。
「些少の力に浮かれ、我を忘れる馬鹿共よ」
" 逆唱 "
「震えて眠れ」
” 冥龍の牙 ”
●
逆唱。
魔力総量が極めて多いレラが生んだ魔法である。
必要な魔力と詠唱を後払いにして結果を先に求め、成功したのちに結果に見合った代償を奉じ、術が完成する。
ノルンのみではなく自らが認めた存在に仇なす行動を、レラは許さない。
ましてや神格、星に深く寄り添う化身や精霊が取り乱しては貪る様は目も当てられない。
レラはエステランダとノルンに群がる敵ばかりでなく、二人に危害を加える可能性のある敵全ての拘束と、即時消滅を願った。
(魂から、叫べ)
そして、逆唱が発動すれば。
求めた全てを、はじき出す。
レラの呟きに、地から湧き出た黒い顎がエステランダとノルンの周囲の敵全てに喰らいついた。顎は次々と、絶叫する魔物達を天空へと運んでいき、嚙み砕いて飲み込んでは消滅していく。
(ユウ、任せたぞ)
倒れ伏した二人に共有のイベントリから出したエリクサーを飲ませたレラは、ユウを見やった。
その視線の先には、佇んで瞑目するユウがいる。
そして、その周りで。無数の言葉が銀の光と共に天と大地を舞い踊っていた。
●
(ごめんね)
絶
言
献
天 虚
命 冥
地 願
花 闇 光
風 輪 終
無 色
全 木 叫
去 涙 死
愛 来 情 冥
苦 鋼 天
廻 囁 生 破
聖 嘆 暗 末
始 乱 咲
流 界 絶 幻 集
縁 光 天
別 臨 邂
極 整
歩 小 奏
季 夢
睡
破
我
願
界
再
●
" 極氷の星"
●
ゴパア!
ヒュンヒュンヒュンヒュン!
白く天を染める厚い雲を割って出現し飛来した、隕石と見紛うほどの無数の氷が、着弾する度に地表を凍らせていく。
大地を。
命を。
何もかもを。
一つ残らず呑み込んでいく。
●
神樹は僅かな力を残したまま凍り付き、この星と共に生きてきた生命ともに眠りについた。
(……ごめんね。僕は、君達を助けに来たんじゃない)
袈裟、逆袈裟、横殴り。
魂が凍えそうな風斬り音と共にレラが縦横無尽に大鎌を振れば、その切っ先から生まれた黒い三日月が無数に枝分かれして敵へと襲いかかる。
ノルンとエステランダに群がる人外へと、天を駆けながら絶え間ない攻撃を加えるレラは二人の周囲に我先にと敵がひしめき合う状況に眉を顰める。
(執拗すぎる。何故に神樹へと向かわずにあの者共は二人へと襲いかかる?)
レラの視線の先には、神樹へと向かっていた集団の中から、方向を変えて二人の方へと向かってきている。
(ま、神樹から得た力で調子に乗っているのだろうな。とはいえ、いくら神格といえども数百は厳しいか。特にノルンは回復特化だからな……どれ、エステランダの道を開いてやろう。私にはユウの真似は出来ん)
魔物達が集まる理由に見当がついたレラが殲滅魔法を保留したところに、狼と羽を生やした精霊の群れが襲い掛かってきた。
「馬鹿共が、力の差もわからないか……何だと?」
轟々と軽やかに大鎌で周りを薙ぎ払ったレラが、目を見開いた。エステランダとノルンの目の前に、ひと際大きい狼と光輝く精霊が立ちはだかっていたのだ。
「ち、陽動とは小癪な」
レラが苛立ちの表情を見せ、行く手を阻む者達だけに切っ先を集中し始めた。
●
眷属を呼び寄せ応戦していたエステランダと、その傷を必死に癒すノルン。
が。
群れと共に襲いかかる獣や人外の頭の熾烈な攻撃に、とうとうエステランダが歩みを止めた。
それでも。
エステランダは無数の攻撃を受けてもノルンを守り続ける。自分の傷を厭わないノルンが、エステランダ達を癒やし続ける。
まるで、生命を分け合う半身を守る様に。
ぎゅうう!!
レラの金色の瞳が怒りの余りに収縮する。
普段は小競り合いを繰り返し、わあわあギャアギャア、といがみ合う二人ではあるが、そこには言葉に出来ない程の安心感と優しさ、想いが詰まっている。
レラと『星の子』は。
共にユウを想い。
時には支え。
手を取り。
笑い。
哀しみを分かちあい。
気が遠くなる程の長い年月を過ごしてきたのだ。
●
レラは。
低く。
低く。
囁いた。
「些少の力に浮かれ、我を忘れる馬鹿共よ」
" 逆唱 "
「震えて眠れ」
” 冥龍の牙 ”
●
逆唱。
魔力総量が極めて多いレラが生んだ魔法である。
必要な魔力と詠唱を後払いにして結果を先に求め、成功したのちに結果に見合った代償を奉じ、術が完成する。
ノルンのみではなく自らが認めた存在に仇なす行動を、レラは許さない。
ましてや神格、星に深く寄り添う化身や精霊が取り乱しては貪る様は目も当てられない。
レラはエステランダとノルンに群がる敵ばかりでなく、二人に危害を加える可能性のある敵全ての拘束と、即時消滅を願った。
(魂から、叫べ)
そして、逆唱が発動すれば。
求めた全てを、はじき出す。
レラの呟きに、地から湧き出た黒い顎がエステランダとノルンの周囲の敵全てに喰らいついた。顎は次々と、絶叫する魔物達を天空へと運んでいき、嚙み砕いて飲み込んでは消滅していく。
(ユウ、任せたぞ)
倒れ伏した二人に共有のイベントリから出したエリクサーを飲ませたレラは、ユウを見やった。
その視線の先には、佇んで瞑目するユウがいる。
そして、その周りで。無数の言葉が銀の光と共に天と大地を舞い踊っていた。
●
(ごめんね)
絶
言
献
天 虚
命 冥
地 願
花 闇 光
風 輪 終
無 色
全 木 叫
去 涙 死
愛 来 情 冥
苦 鋼 天
廻 囁 生 破
聖 嘆 暗 末
始 乱 咲
流 界 絶 幻 集
縁 光 天
別 臨 邂
極 整
歩 小 奏
季 夢
睡
破
我
願
界
再
●
" 極氷の星"
●
ゴパア!
ヒュンヒュンヒュンヒュン!
白く天を染める厚い雲を割って出現し飛来した、隕石と見紛うほどの無数の氷が、着弾する度に地表を凍らせていく。
大地を。
命を。
何もかもを。
一つ残らず呑み込んでいく。
●
神樹は僅かな力を残したまま凍り付き、この星と共に生きてきた生命ともに眠りについた。
(……ごめんね。僕は、君達を助けに来たんじゃない)
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