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6 駆けあーし、進め!
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熊の魔物に襲われた所で、映像が消えた。ゾーマはごろりと大の字になり、手助けをしてくれた少女と可愛らしい幼な子達を思う。
『サーシャ。ガキ共。もう何もしてやれねえが……』
その時。
昇る金色の光の間を降りてきた光達を見つける。
『……降りてくんのもあんのか』
ゾーマは興味なさげに呟き、胡坐をかいた。
どどんっ!
『のわ?! 何だよ!』
その背中への衝撃に驚いたゾーマは振り向く。
(とーた!)
(おとーさん!)
幼な子達が、ゾーマの背にしがみついている。
『こっ……コルト?! リシア?!』
そして。
(ゾーマ)
ゾーマの前で、ふわり、と膝をついた女性。
『マリ……サ』
ゾーマの瞳から、大粒の涙が零れ落ちる。それを見たマリサが、立ち上がってコルトとリシアをちょいちょい、と呼んだ。
幼な子達がマリサにしがみつく。
『ま、待ってくれ! マリサ、コルト、リシア!』
その言葉に、マリサがゾーマを見る。
ゾーマは土下座をして、想いをぶつけた。
『神さんに礼を言う前に、別れちまう前に言いてえ事がある! ……お前らを守れなくって、幸せにしてやれなくって……悪かった」
涙を滴らせるゾーマに、困り顔をするマリサ。
「家族になってくれて、生まれてきてくれて、ありがとう。もし、よ! 次の人生で万が一巡り合えた時は、そん時は……、そん時、は……。お前らがいねえなんてよ、耐えらん……ねん、だ』
途切れ途切れになったゾーマの言葉に。
マリサは唇を尖らせた。
(お父さんひどいね。迎えにきたのにねー)
(ひどいねー)
(ねー)
『……へ?』
ゾーマが涙まみれの顔を上げて、三人を見た。
(何を言い出すかと思ったら……起立! 早くしないと行けなくなるよ!)
『お、おう? え? 俺……一緒に行っても……いいの?』
(ぷぷぷ、そのびっくり顔も、私達を心配しすぎて泣いちゃう顔も……懐かしいなあ)
夫の顔を愛おしげに見つめるマリサの表情が、キリリ、と引き締まった。
(命の神様がね、『早く迎えに行け。尊い方々のたっての頼みだ』って。やっぱりゾーマはすごいね! だからぐずぐずしない! 二人で手ぇ引っ張って! 駆けあーし、進め!)
(おー!)
(はーい!)
幼な子達に両手を引っ張られて走るゾーマ。
他の光の粒の中に、顔見知り達の姿が重なる。
『みんな、いやがる! 神さん、神様……神様! ありがとうございます! ありがとうございます! ありがと……』
大粒の涙を溢しながら泣き笑いをするゾーマとマリサ、そして楽し気にゾーマの手を握りしめて離さない、コルト、リシア。
そうして。
走り出した四人と、ゾーマ達を包み込むように揺らめいていた金色の光の粒は、身を寄せ合うように天に昇って行った。
『サーシャ。ガキ共。もう何もしてやれねえが……』
その時。
昇る金色の光の間を降りてきた光達を見つける。
『……降りてくんのもあんのか』
ゾーマは興味なさげに呟き、胡坐をかいた。
どどんっ!
『のわ?! 何だよ!』
その背中への衝撃に驚いたゾーマは振り向く。
(とーた!)
(おとーさん!)
幼な子達が、ゾーマの背にしがみついている。
『こっ……コルト?! リシア?!』
そして。
(ゾーマ)
ゾーマの前で、ふわり、と膝をついた女性。
『マリ……サ』
ゾーマの瞳から、大粒の涙が零れ落ちる。それを見たマリサが、立ち上がってコルトとリシアをちょいちょい、と呼んだ。
幼な子達がマリサにしがみつく。
『ま、待ってくれ! マリサ、コルト、リシア!』
その言葉に、マリサがゾーマを見る。
ゾーマは土下座をして、想いをぶつけた。
『神さんに礼を言う前に、別れちまう前に言いてえ事がある! ……お前らを守れなくって、幸せにしてやれなくって……悪かった」
涙を滴らせるゾーマに、困り顔をするマリサ。
「家族になってくれて、生まれてきてくれて、ありがとう。もし、よ! 次の人生で万が一巡り合えた時は、そん時は……、そん時、は……。お前らがいねえなんてよ、耐えらん……ねん、だ』
途切れ途切れになったゾーマの言葉に。
マリサは唇を尖らせた。
(お父さんひどいね。迎えにきたのにねー)
(ひどいねー)
(ねー)
『……へ?』
ゾーマが涙まみれの顔を上げて、三人を見た。
(何を言い出すかと思ったら……起立! 早くしないと行けなくなるよ!)
『お、おう? え? 俺……一緒に行っても……いいの?』
(ぷぷぷ、そのびっくり顔も、私達を心配しすぎて泣いちゃう顔も……懐かしいなあ)
夫の顔を愛おしげに見つめるマリサの表情が、キリリ、と引き締まった。
(命の神様がね、『早く迎えに行け。尊い方々のたっての頼みだ』って。やっぱりゾーマはすごいね! だからぐずぐずしない! 二人で手ぇ引っ張って! 駆けあーし、進め!)
(おー!)
(はーい!)
幼な子達に両手を引っ張られて走るゾーマ。
他の光の粒の中に、顔見知り達の姿が重なる。
『みんな、いやがる! 神さん、神様……神様! ありがとうございます! ありがとうございます! ありがと……』
大粒の涙を溢しながら泣き笑いをするゾーマとマリサ、そして楽し気にゾーマの手を握りしめて離さない、コルト、リシア。
そうして。
走り出した四人と、ゾーマ達を包み込むように揺らめいていた金色の光の粒は、身を寄せ合うように天に昇って行った。
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