上 下
6 / 15

6 駆けあーし、進め!

しおりを挟む
 熊の魔物に襲われた所で、映像が消えた。ゾーマはごろりと大の字になり、手助けをしてくれた少女と可愛らしい幼な子達を思う。

『サーシャ。ガキ共。もう何もしてやれねえが……』

 その時。

 昇る金色の光の間を降りてきた光達を見つける。

『……降りてくんのもあんのか』
 
 ゾーマは興味なさげに呟き、胡坐をかいた。



 どどんっ!



『のわ?! 何だよ!』

 その背中への衝撃に驚いたゾーマは振り向く。
 
(とーた!)
(おとーさん!)

 幼な子達が、ゾーマの背にしがみついている。

『こっ……コルト?! リシア?!』

 そして。

(ゾーマ)

 ゾーマの前で、ふわり、と膝をついた女性。

『マリ……サ』

 ゾーマの瞳から、大粒の涙が零れ落ちる。それを見たマリサが、立ち上がってコルトとリシアをちょいちょい、と呼んだ。

 幼な子達がマリサにしがみつく。

『ま、待ってくれ! マリサ、コルト、リシア!』

 その言葉に、マリサがゾーマを見る。
 ゾーマは土下座をして、想いをぶつけた。

『神さんに礼を言う前に、別れちまう前に言いてえ事がある! ……お前らを守れなくって、幸せにしてやれなくって……悪かった」

 涙を滴らせるゾーマに、困り顔をするマリサ。

「家族になってくれて、生まれてきてくれて、ありがとう。もし、よ! 次の人生で万が一巡り合えた時は、そん時は……、そん時、は……。お前らがいねえなんてよ、耐えらん……ねん、だ』

 途切れ途切れになったゾーマの言葉に。





 マリサは唇を尖らせた。

(お父さんひどいね。迎えにきたのにねー)
(ひどいねー)
(ねー)
 
『……へ?』

 ゾーマが涙まみれの顔を上げて、三人を見た。

(何を言い出すかと思ったら……起立! 早くしないと行けなくなるよ!)

『お、おう? え? 俺……一緒に行っても……いいの?』

(ぷぷぷ、そのびっくり顔も、私達を心配しすぎて泣いちゃう顔も……懐かしいなあ)

 夫の顔を愛おしげに見つめるマリサの表情が、キリリ、と引き締まった。

(命の神様がね、『早く迎えに行け。尊い方々のたっての頼みだ』って。やっぱりゾーマはすごいね! だからぐずぐずしない! 二人で手ぇ引っ張って! 駆けあーし、進め!)
(おー!)
(はーい!)

 幼な子達に両手を引っ張られて走るゾーマ。
 他の光の粒の中に、顔見知り達の姿が重なる。

『みんな、いやがる! 神さん、神様……神様! ありがとうございます! ありがとうございます! ありがと……』

 大粒の涙を溢しながら泣き笑いをするゾーマとマリサ、そして楽し気にゾーマの手を握りしめて離さない、コルト、リシア。

 そうして。

 走り出した四人と、ゾーマ達を包み込むように揺らめいていた金色の光の粒は、身を寄せ合うように天に昇って行った。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸
ファンタジー
天上魔界「イイルクオン」 世界は大きく分けて二つの勢力が存在する。 ”人類”と”魔族” 生存圏を争って日夜争いを続けている。 しかしそんな中、戦争に背を向け、ただひたすらに宝を追い求める男がいた。 トレジャーハンターその名はラルフ。 夢とロマンを求め、日夜、洞窟や遺跡に潜る。 そこで出会った未知との遭遇はラルフの人生の大きな転換期となり世界が動く 欺瞞、裏切り、秩序の崩壊、 世界の均衡が崩れた時、終焉を迎える。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

召喚体質、返上希望

篠原 皐月
ファンタジー
 資産運用会社、桐生アセットマネジメント勤務の高梨天輝(あき)は、幼少期に両親を事故で失い、二卵性双生児の妹、海晴(みはる)の他は近親者がいない、天涯孤独一歩手前状態。しかし妹に加え、姉妹を引き取った遠縁の桐生家の面々に囲まれ、色々物思う事はあったものの無事に成長。  長じるに従い、才能豊かな妹や義理の兄弟と己を比較して劣等感を感じることはあったものの、25歳の今現在はアナリストとしての仕事にも慣れ、比較的平穏な日々を送っていた。と思いきや、異世界召喚という、自分の正気を疑う事態が勃発。   しかもそれは既に家族が把握済みの上、自分以外にも同様のトラブルに巻き込まれた人物がいたらしいと判明し、天輝の困惑は深まる一方。果たして、天輝はこれまで同様の平穏な生活を取り戻せるのか?  以前、単発読み切りで出した『備えあれば憂いなし』の連載版で、「カクヨム」「小説家になろう」からの転載作品になります。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

日本国転生

北乃大空
SF
 女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。  或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。  ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。  その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。  ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。  その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...