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【挿し絵あり】1 黒髪の少年と銀髪の少女

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 暁闇の中で、森の一角の空間が揺らいだ。

 球体が浮かび上がり、大きさを増していく。
 鳥達が森の変化に驚き、一斉に羽ばたいた。

 球体は接地した瞬間に消え、少年少女が姿を現す。周りを見渡した銀髪の少女、レラがポニーテールをふるり、と揺らしながら少年に話しかけた。





「ユウ、今回は何故呼ばれた? 何を為す?」

 名を呼ばれた黒髪の少年は瞳を伏せる。

「んー、『星の意思』を通して原因の始まりから見てきたんだけど」
「ふむ」
「星の環境を整えている『神樹』に目をつけた国があって、囲い込んで力をここ数十年吸い上げ続けたみたい。その結果、星が悲鳴を上げた」



「……数十年で揺らぐ星など、どうにもならないだろう。そんな星の声が何故届いた?」

 眉をひそめ、戯けた動きと共に首を傾げるレラ。

 永き時をユウと行動を共にし、星々を巡ってきた。そんな二人が、寿命の近い星から呼ばれた事は一度もないのだ。突発的な事象に星がダメージを受け、ユウとレラがその星に降り立つという事がほとんどなのである。

 そこにユウが、言葉を継いだ。
 
「本当はね、星の命は十分にあった。だけど」

 指を一つずつ折り曲げながら、レラに説明する。

 
 神樹からの搾取による国力の向上。
 効率的な搾取手段の開発。
 計画性のない搾取により、漏れ出る力。
 周辺の生物の変異。
 神樹を目指す生物と国との神樹の奪い合い。
 更なる搾取による対抗手段の開発……


「ユウ」

 言葉の途中で、レラが言葉を挟んだ。

 くるぅ。

「私にひもじい思いをさせるな」
「あ、はい。話に飽きてお腹減ったんだね」





 " 優しい風と獣達の惑星ウィンディア・ヘヴン フェルネ "

 ユウが呟いた瞬間銀毛の仔狼が傍に出現した。

「フェルネ。周りを見ててもらえるかな? 後で美味しいお肉あげるから」
『わふ!』

 お座りから尻尾を盛大に振ったフェルネは、ユウに前足を差し出した。

「あはは、はい。お手がしたいんだね」

 ぽん。

 フェルネはユウが差し出した手に、嬉しげに尻尾を振りばがら片足を乗せた。
 
「いい子だね」
「おい、フェルネ。お手」

 レラがしゃがみ、片手を差し出した。

 ぽふ。

 フェルネはレラの頭にお手をする。

「……もう一度だけチャンスをやる。お手」

 ぽし。

 今度はその鼻にお手が乗る。レラの顔が真っ赤に染まり、その手元に身長を遥かに超える大鎌が出現した。

「喜べ。貴様の命日は今日だ」

 ふんっ!

 フェルネはソッポを向いた。

「そこを動くな貴様ああぁぁ!」
『わおーん! わうわうわうわうっ!』

 駆け出すフェルネを大鎌を構えたレラが追う。ユウはくすくすと苦笑いをしながら、食事の準備に取りかかった。





 ユウは、レラと『星の子』達っていつもあんな感じだよね……などと思いつつも、イベントリ無限収納からテーブルや椅子、食材を取り出していると。

(声……?)

 男の大声と子供達の泣き声が聞こえてきた。

 ユウがその方角を見ていると、泣きながらヨタヨタと逃げ惑う子供達と、追い立てる男が見えた。その後ろで大型の獣が木をなぎ倒している。

 高価そうな商人服を着た男の叫びが聞こえた。

「この獣畜生! こっち来んじゃねぇよ!」

(獣に追われている奴隷商と奴隷の子供達、か。レラとフェルネはどこまで行ったんだろう?)

 " レラ、フェルネ。戻ってきて "

 男の過去がユウは一人と一匹に語りかけ、様子をうかがう。
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