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開戦
48 おい!どうなってやがるんだ!
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ダノンの町西方、カルド海域。
海原を進み、ダノンの町の海岸線に上陸しようと目論んでいたグレブ帝国の十隻の帆船の姿があった。
船団の後方上では竜が滑空し、または翼をはためかせ滞空する、という動きを繰り返していた。
前方を見る際の竜の視線は、とある一点に集中している。
そしてダノンの町を見る度に、くぐもった唸り声を上げていた。
まるで、これから起こるであろう闘いに戸惑うように。
船団がダノンの町に到着する迄、あと二時間。
その中の、ひと際大きい旗艦内は怒号と混乱で満ち溢れていた。
●
艦長席よりさらに高い位置にある椅子に座り、腹立たしげに体を揺すっていたグレブ帝国皇帝ファルナスは怒鳴り声をあげた。
「おい!どうなってやがるんだ!何で攻撃が始まんねえんだよ!先に攻撃する筈だった奴らはどこにいんだ!竜は!マルイエ!」
「別艦の召喚術師と各隊に確認を取っておりますゆえ、お待ちを」
「ちんたらしてんじゃねえよ!早くしろ!」
「はっ」
恭しく頭を下げたマルイエは、既に部下に指示を出しメッセージバードを飛ばさせている。
ダァン!!
椅子のひじ掛けに握りしめた手を叩きつけるファルナス。
(どうなってやがる!何が起きてる!ぼやぼやしてんじゃねえよ、この役立たず共が!俺の国が目の前にあるってのによ!……もうグズグズしちゃいらんねえ!)
「マルイエ!竜を先に行かせろ!ブレスでも吐かせて、ビビッて白旗でも上げてくりゃあ上等だ!」
「仰せのままに。おい!十番艦にメッセージバードを飛ばして、召喚術師達に竜を先行させろ!」
「はっ!」
情報将校の術師が新たなメッセージバードを次々と飛ばしていく。
その光景を横目で追いつつ、宰相マルイエはそっと息を吐いた。
(まさかに、竜を含め三方に放たれた我が軍をダノンに到達させぬほどの力量とは……。とはいえ、今までの戦から竜さえいれば何とかなるとでもファルナス様は思ったのだろうが、焦りすぎだの)
辱めを受けそうになったザンザムールの王女をファルナスの手から離れさせたマルイエは、その後宰相としての権限を行使する事に専念をさせられ、軍議には参加できずに出航を迎えていた。
(そして、三方に全戦力を配置してはいないだろう。拠点としてダノンに固執するファルナス様があの町に攻め入らなかった事がない。待ち構えていよう。本陣が、竜をも抑え込んだ戦力が。だが、行くしかあるまい。人を介して何度も策を進言したが及ばなんだ、無念)
マルイエは自分の力量不足に、拳を握りしめた。
だが、すぐに思考を切り替える。
闘いはすぐそこまで来ているのだ、と。
海原を進み、ダノンの町の海岸線に上陸しようと目論んでいたグレブ帝国の十隻の帆船の姿があった。
船団の後方上では竜が滑空し、または翼をはためかせ滞空する、という動きを繰り返していた。
前方を見る際の竜の視線は、とある一点に集中している。
そしてダノンの町を見る度に、くぐもった唸り声を上げていた。
まるで、これから起こるであろう闘いに戸惑うように。
船団がダノンの町に到着する迄、あと二時間。
その中の、ひと際大きい旗艦内は怒号と混乱で満ち溢れていた。
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艦長席よりさらに高い位置にある椅子に座り、腹立たしげに体を揺すっていたグレブ帝国皇帝ファルナスは怒鳴り声をあげた。
「おい!どうなってやがるんだ!何で攻撃が始まんねえんだよ!先に攻撃する筈だった奴らはどこにいんだ!竜は!マルイエ!」
「別艦の召喚術師と各隊に確認を取っておりますゆえ、お待ちを」
「ちんたらしてんじゃねえよ!早くしろ!」
「はっ」
恭しく頭を下げたマルイエは、既に部下に指示を出しメッセージバードを飛ばさせている。
ダァン!!
椅子のひじ掛けに握りしめた手を叩きつけるファルナス。
(どうなってやがる!何が起きてる!ぼやぼやしてんじゃねえよ、この役立たず共が!俺の国が目の前にあるってのによ!……もうグズグズしちゃいらんねえ!)
「マルイエ!竜を先に行かせろ!ブレスでも吐かせて、ビビッて白旗でも上げてくりゃあ上等だ!」
「仰せのままに。おい!十番艦にメッセージバードを飛ばして、召喚術師達に竜を先行させろ!」
「はっ!」
情報将校の術師が新たなメッセージバードを次々と飛ばしていく。
その光景を横目で追いつつ、宰相マルイエはそっと息を吐いた。
(まさかに、竜を含め三方に放たれた我が軍をダノンに到達させぬほどの力量とは……。とはいえ、今までの戦から竜さえいれば何とかなるとでもファルナス様は思ったのだろうが、焦りすぎだの)
辱めを受けそうになったザンザムールの王女をファルナスの手から離れさせたマルイエは、その後宰相としての権限を行使する事に専念をさせられ、軍議には参加できずに出航を迎えていた。
(そして、三方に全戦力を配置してはいないだろう。拠点としてダノンに固執するファルナス様があの町に攻め入らなかった事がない。待ち構えていよう。本陣が、竜をも抑え込んだ戦力が。だが、行くしかあるまい。人を介して何度も策を進言したが及ばなんだ、無念)
マルイエは自分の力量不足に、拳を握りしめた。
だが、すぐに思考を切り替える。
闘いはすぐそこまで来ているのだ、と。
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