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開戦
44 グレブ兵達の絶叫
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絶叫。
怒鳴り声。
嘲笑。
蔑み。
怒号。
悲鳴。
泣き声。
苦悶。
懇願。
ありとあらゆる負の中で、展開される光景は。
「貴方!貴方ぁ」
「お父さん!お母さん!……二人に酷い事しないで!!やめて!」
「ほう、上玉じゃねえか。ま、こいつらはコッテリと尋問してやらないと、なあ?」
自宅の床に押さえつけられた男。
続々と入り込んでくる兵士達に、男の妻と娘のドレスが荒々しく引きちぎられる。
「娘は!娘は勘弁してください!!貴方あ!エイリを!お願い!」
「やめて!お母さんを離して!ねえ!お父さん!お母さんを連れて逃げて!早く!」
泣け叫びながらも互いを庇おうとする二人。
「やめろ!やめてくれえ!金でも、俺の命でもいい!二人はそれで見逃してくれ!」
「うっせえなあ。どうせ、ぜえ~んぶ頂くんだからよ。ま、オメエはいらねえか」
グレブ偵察隊の将校の胸に、グレブ軍の兵士の剣が突き立った。
「がはっ!」
「お父さん!酷い……!何て事を!許さない!絶対に許さない!」
「何でもします!私何でもしますから!お父さんを助けてええええ!!」
「んあ?どうせ助かんねえし、どうせ何でもさせるから気にすんな」
「や、やめろ……やめてくれ……」
ズルズルと引きずられていく妻と娘に手を伸ばし、呼吸を止めた男。
グレブの兵士全てが違いこそあれ絶望と悲しみ、怒りや苦しさの中で意識を失い、命を揺らし。
また新たに始まりゆく絶望に飲まれていった。
●
「ふぅ。アストさんに皆さん。後は抜け出てくるグレブの兵隊に注意を怠らないでくださいね?」
門を開けてもらい、狛犬の『吽』を伴って外壁に上がってきた奏。
そこからは、動きを止めて座り込み、また地面を転がって叫ぶグレブの全隊の姿が遠くに見えている。
「な、なあ。何を……したんだ?凄いことになってるが、精神干渉の魔法?祈り……だったか……かけたのか?」
恐る恐る聞いたアスト。
「これは、自分達が過去にした事、これからしようと思っている事を……立場を置き換えて何回も見せているだけです。自分がされたら、どういう気持ちになるのかを知ってもらう為に」
「ま、マジか……」
「もちろん、突き抜けちゃってる人は抜け出てくると思いますので注意して見てた方がいいかと。何をイメージしているのかは、私にもわからないんです」
●
だが、結局。
辛うじて持ちこたえた幾ばくの兵士達は逃げ去り。
それ以外の倒れ伏した者達は、レンダ公国の増援が駆けつけて包囲された後も意識を取り戻す事がないままに、捕縛されていった。
怒鳴り声。
嘲笑。
蔑み。
怒号。
悲鳴。
泣き声。
苦悶。
懇願。
ありとあらゆる負の中で、展開される光景は。
「貴方!貴方ぁ」
「お父さん!お母さん!……二人に酷い事しないで!!やめて!」
「ほう、上玉じゃねえか。ま、こいつらはコッテリと尋問してやらないと、なあ?」
自宅の床に押さえつけられた男。
続々と入り込んでくる兵士達に、男の妻と娘のドレスが荒々しく引きちぎられる。
「娘は!娘は勘弁してください!!貴方あ!エイリを!お願い!」
「やめて!お母さんを離して!ねえ!お父さん!お母さんを連れて逃げて!早く!」
泣け叫びながらも互いを庇おうとする二人。
「やめろ!やめてくれえ!金でも、俺の命でもいい!二人はそれで見逃してくれ!」
「うっせえなあ。どうせ、ぜえ~んぶ頂くんだからよ。ま、オメエはいらねえか」
グレブ偵察隊の将校の胸に、グレブ軍の兵士の剣が突き立った。
「がはっ!」
「お父さん!酷い……!何て事を!許さない!絶対に許さない!」
「何でもします!私何でもしますから!お父さんを助けてええええ!!」
「んあ?どうせ助かんねえし、どうせ何でもさせるから気にすんな」
「や、やめろ……やめてくれ……」
ズルズルと引きずられていく妻と娘に手を伸ばし、呼吸を止めた男。
グレブの兵士全てが違いこそあれ絶望と悲しみ、怒りや苦しさの中で意識を失い、命を揺らし。
また新たに始まりゆく絶望に飲まれていった。
●
「ふぅ。アストさんに皆さん。後は抜け出てくるグレブの兵隊に注意を怠らないでくださいね?」
門を開けてもらい、狛犬の『吽』を伴って外壁に上がってきた奏。
そこからは、動きを止めて座り込み、また地面を転がって叫ぶグレブの全隊の姿が遠くに見えている。
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「ま、マジか……」
「もちろん、突き抜けちゃってる人は抜け出てくると思いますので注意して見てた方がいいかと。何をイメージしているのかは、私にもわからないんです」
●
だが、結局。
辛うじて持ちこたえた幾ばくの兵士達は逃げ去り。
それ以外の倒れ伏した者達は、レンダ公国の増援が駆けつけて包囲された後も意識を取り戻す事がないままに、捕縛されていった。
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