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ダノンの街へ

35 私、これからも!蓮次と一緒にぃ!

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 大声を出して発言を遮り、エルをぺし!ぺし!と叩く奏。

 そこに京が乗っかり、小声で奏に話しかけた。

「でも、僕らはここで奏ちゃんに結構頑張ってほしいかも」
「だ、だって!だって!はじゅかしいよう……」

 耳まで真っ赤に染まった顔に両手を当て、いやんいやん!と首を振る奏。
 が、京は眉をしかめて語り続ける。


「でもさ、蓮さんは優しいから、このままだとまたどこかで僕らを平和な日本に返そうとするかもしれない。奏ちゃん、もう帰る気ないでしょ?蓮さんにそれくらいの気持ち、見せといたっていいんじゃない?」
「そうよ~。まずは自分の気持ちを出していかないと。告白されるの待ってるわけじゃないでしょ?」

 京とエルの後押しに感謝しながら奏はなるほど……と考えた。

(蓮次は私達を返すつもりだから、恋愛をする、連れ添う相手として私とエルを見ていない。それにそもそも、子ども扱いだ。好みのタイプじゃないってだけなのかもしれないけど……ふぬぬ)

 ここで、言えなかったらどこで言うのか。
 言える保証なんてない。

 ましてや、ここは異世界。
 日本に比べたら、いくら奏が強くなったとはいえ何が起きるのか分からない世界なのである。
 
 言える時に。
 言いたい時に。
 言うべきなのだ、と奏は考えを改めた。

(じゃあ、何て言う?蓮次は子供達にご飯を食べてもらって、おいしいって言ってもらった時は本当にうれしそう。私もうれしいし、蓮次のお手伝いもできる。……これからも私がいてほしいって、子供達のご飯を作るのに私がいなきゃダメだって思われたい)

 そこまで考えて。
 言うべき言葉を決めた。


 これからも蓮次とずっと、子供達のご飯を作りたい。


 これからも。
 その言葉に決意と願いを込めて。

 



 奏が、ガルディやゼペスと楽しそうに話す蓮次にツカツカと歩み寄っていく。

 キラキラと期待の目で奏を見る京とエル。

「奏。これからもよろしく頼まぁ」 

 蓮次の笑顔。
 
 口は悪いけれど、本当に優しくて頼りになる蓮次の笑顔を見て、自分の蓮次への気持ちの大きさに顔を赤らめる。
 
 そして。

 耳まで赤く、熱くした奏は。

「うん!よろしくね!私……私!」
「ああ」
「私、これからも!蓮次と一緒にぃ!子供を作りたいの!」


 ぴしり、と凍りついた空間。


「か、奏ちゃん!どういう事?!れ、蓮さん!」
「盛大に、奏ちゃんに先を越されてたなんてー」

 京とエルが奏と蓮次に駆け寄る。
 ゼペスとガルディは、大きな拍手をしている。

 そして、蓮次の返答は。

「お、おう……??」

 珍しく目を白黒させている蓮次。

 奏は床にペタリと座り込んで、白目を剥いた。
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