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ダノンの街へ

29 数日中にこの街を出て頂きたいのです

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 ゼペスの館の応接室に通された四人。

「いたっ!みんな笑ってたのに何で僕だけ?!」
「呼吸困難になるほど笑ってたのは誰っ!!」

 顔を赤らめて、京の体を叩き続けるエル。

「いやいや、我に返った後の反応が毎回面白すぎなんだよエルは」
「ま、いいじゃねえか。いいモン見せてもらったぜ、てえしたもんだ」
「私も二つの顔を持つ女なんだ。蓮次見たい?」
「ちょっとー奏ちゃん、何するつもりなのよー」

 蓮次の顔をちらちら見る奏に、呆れたエル。

 そこに。

 ガチャリ、と扉が開いて、ゼペスとガルディの兄弟が姿を現した。

「大変お待たせ致しました。今、飲み物を換えさせましょう。君達はその後は、私が呼ぶまで来なくていい」
「はっ」

 お茶を入れ換えた執事とメイドが、恭しく礼をしながら下がっていく。





「なるほど。魔法を打ち出していたのは『魔法銃』に変化した精霊だったんですねぇ」
「エル殿。後で私と訓練場でお手合わせ願えませんか。なあに、踏んでもらっても構いません!はっはっはっ!」
「怖すぎる事言わないでください!」

 破顔したガルディにドン引きのエル。

「お前、踏まれたいだけじゃないのか?」
「いえ!そんな事は!はっは!はっはっはっ!」

 エルが立ち上がって、すすす、と京の後ろに隠れた。

 ゴン!

「ぬあ?!」
「仕事に戻れ。エルさんを怯えさせるな!」

 頭を殴られて、悶絶するガルディ。

「大変失礼しました。バカな弟は放っておいて本題に入りましょう」

 居住まいを正したゼペスは言った。

「グレブ帝国が攻めてくる、という情報が入りました」
「あん?そいつなら道中に聞いたぜ?手え貸せ、とでも言いてえのかい」

 蓮次無表情でゼペスの顔を見つめる。

「いえ。大変申し訳無いんですが、数日中にこの街を出て頂きたいのです。この世界を救う為に魔王と闘ってくださった『マツリバヤシ』の皆様の、お手を煩わせるにはいきません」


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