異世界花火 ～よう、楽しんでるかい～

ダノンの街へ

28 そんなに見たら、メッ！

　エルの一言で、周りから大歓声が上がった。

「やったー！まま、ままー！」
「お姉ちゃーんっ！！」
「エール！エール！エルさんかっこ、いー！」
「エルさんすごいですー！」
「私も土くれのように踏まれてみたい……」
「おい、お前ってやつは……」

　ミュウやロブル、ラステラ達を含めて興奮する人々をよそに、蓮次は手を叩いて大笑いをし、京と奏かなでは溜め息をつく。

「いいねえいいねえ、相変わらず粋だねえ」
「いいねえ、じゃないわよ。これからが大変だってわかってるでしょ？」
「ま、しょうがないけどね。どうなることやら」

　エルに駆け寄ろうとする人々を眺めている三人の前で、ガルディが待ったをかけた。

「待て！そ奴らの捕縛が先だ！」

　白目を剥くコルドンとエンゲラ、藻掻いていているワルキンに駆け寄り、縄をかけて引き立てていく衛兵達。

　エルは、ふぅ、と溜め息をついて白と黒とくるくると回し、ショルダーホルスターに白と黒をしまうそぶりを見せた。

　が、そこでエルは、周りからの注目と大歓声に気が付いた。

　途端に、きょろきょろあせあせ、と自信なさげな表情を見せ始める。




”　système en panneシステムダウン　”




　ひゅるるるるるる……。

　ぽてっ。ふらふら、べし！

　とすっ。ぶんぶんぶんぶん。

　回転中に変身が解けた白と黒は地面に落ちた。

　黒は着地した後に、地面に突っ込んだ。
　空中大回転は精霊でもキツいのである。

　白は落下して内股座りになり、真っ赤にした顔を両手で隠し、『お嫁にいけない！』と言わんばかりに首を振り続けている。
　最後に、ぺろりん！とされた反動である。

　そして注目の、当のエルはというと。



　バッ！！



　周りに向かって両手を突き出した。
　何事か、と息をのむ観衆。



　エルは、右を見て左を見て。
　耳まで顔を赤らめて。

　自分のローブを地面から拾い。
　ぽすぽす、と土を払い。

　袖を通して。
　首元の一番上までボタンをかけて。
　人差し指を胸元で、ぴし！と振りかざし。

　そして。




「そんなに見たら…………メッ！」