異世界花火 ~よう、楽しんでるかい~

マクスウェルの仔猫

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ダノンの街へ

21 おいで?ぎゅー!ってしてあげる

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 ふわり、ふわり。

 屈んでいたエルのローブの裾から、大人の顔ほどの大きさの一対の精霊が顔を出して、ゆるりと羽を打ちながらエルの横に浮かぶ。

 淡麗な顔に透き通る白い肌、ツンと尖った耳。

 服装までも全く一緒だが、その名の通り髪の色が白と黒に分かれている二人にミュウは目を輝かせた。

「ふあ!よーせーさん?!よーせーさんだ!」
「ふふ、私のお友達なの。ノワールはミュウちゃんのお皿に料理を戻して。ブロンは二人のお洋服と黒が集めたお料理をキレイにしてね」

 胸に手を当てた白は、ミュウとロブルに手を伸ばした。
 淡く白い光が二人を包み込み、服の汚れが落ちていく。
 黒が集めた食材も同様だった。

「ふおおお……!」
「あ、あれ?なんかいい匂いが……する」

 白い光の中で、瞬く間にきれいになっていく自分の手や服をキラキラとした目で見つめるミュウと、自分の体の匂いを嗅ぐロブル。

 顔に赤みが差し、服の隙間や首筋から血色の良い肌が見え隠れする。
 
「これでよし、と」
「しろいよーせーさんすっごい!あ!くろのよーせーさんもー!」
「こっちの落としたお肉もお野菜もキレイになったら、よし。私のご飯にしちゃおう。何作ろうかしら」

 顎に人差し指をあてて楽しげに笑うエルに、ミュウは顔を青ざめさせる。

「おとしちゃったのはみゅうが……」
「だーめー。私は精霊の魔法があるから大丈夫。ミュウちゃんとロブル君には私達が別の美味しいお料理作ってあげるわよ。そんな顔しないの♪」

 ミュウを撫でるエルを見て、ロブルが慌てた。

「お姉ちゃんの服がすっごい汚れてる!多分ミュウが……汚してごめんなさい!」
「んー?私の服は別にいいの。二人とも優しくていい子、嬉しくなっちゃう。白に黒、おいでー」

 ニコニコと笑い、二人を気遣うエル。
 そんなエルに、二人は顔を見合わせて瞳を潤ませた。

 精霊を戻し、自分の服の汚れはそのままに立ち上がろうとしたエルに、

「じゃ、調理場の方で一緒に……えっ?」

 ミュウがしがみついた。

「ま、まま……!まま、まま……あああああ!」

 ロブルはミュウの傍でエルの袖を掴む。

「お、おか……お母……さん、お母……!おか……あさ…………!」

 ぼろぼろと大粒の涙を零す二人に、目を点にしたエル。

(あらあらー、お母さんを思い出しちゃったのかしら。え?!いくつに見えてるの?!私、17なんだけど……ま、今はいいか)

「おいで?ミュウとロブル、いっぱいぎゅー!ってしてあげる」

 エルは自分にしがみつく二人を抱きしめて、そっと撫で続けた。



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