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ダノンの街へ
19 ま、あすこにいる二人に任せようぜ
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身上話にからりと笑う蓮次は、気遣わしげな顔をした京を見て、自分の頭をぺしりと叩いた。
「おっとっと、こりゃいけねえや。しみったれた身上話ですまねえな。ま、おめさんも、一休みしたらどうでえ?」
「あ、うん」
「冷えたうめえ茶、飲むかい?茶請けならガキ共用にたんまりと拵えてあるしな」
「いいね。奏ちゃんやエルはどんなだろ?休めるかな?」
京が臨時の野外調理場に目を向けた、その時。
子供の叫び声が、人々が並ぶ列から聞こえてきた。
「あん?」
「あ、あの子!」
蓮次と京が目を向けた先には。
ミュウが地面に倒れ込み、ロブルがミュウを抱き起こしながら、別の子供達に向かって叫んでいた。
●
「ミュウ!……何すんだよお前ら!」
「……ミュウがウロチョロしてるから、いけないんだ」
「おにいちゃん……みゅう、ヘーキだよ?……あっ」
孤児院のスタッフや大人、年上の子供達が自分達の為に作ってくれた、おいしいゴハンが地面で土と草にまみれて転がってるのを見て大粒の涙を溢すミュウ。
しゃくり上げながらひとつひとつの肉や野菜を、拾っては手で払い、ふうふうと吹き、皿に拾い集めていく。
「おにくさん、おやさいさん、ごめんなさい。みゅうが……みゅうがいけないの……ごめんなさい…………」
「お、お前がどんくさいからいけねえ……んだぞ」
「そーだそーだ!エランのいうとおりだ!自分のせいー!」
「てめえらー!!」
そんなミュウを見て囃し立てる子供達の真ん中で狼狽えている子供に、ロブルが掴みかかっていく。
それを見た京が飛び出そうとするのを蓮次が止めた。
「蓮さん?!」
「ま、あすこにいる二人に任せようぜ」
蓮次がニヤリと笑って指を差すその先には。
「こらぁ!何してんのよ!」
「どうしたのかしら?」
腕を組んで仁王立ちする奏と、ミュウを抱き起こすエルがいたのだった。
「ほら、泣かない泣かない。どうしたの?お姉ちゃんに教えて?」
地面に膝をついて料理を拾い集めるミュウを抱き起こしたエル。
「ころんで、おにくさんとおやさいさんをぜんぶ、おとしちゃったの。みゅうが、いけないことしちゃったの……!」
そこまで言って堪え切れずにまた大粒の涙を溢し、空に向かって泣くミュウ。
「そう。転んで……ねえ」
ふわりとした、それでいて真っ直ぐに子供達を見ながら微笑むエルに、ミュウにちょっかいを掛けた子供達は途端にオドオドとし始めた。
「おっとっと、こりゃいけねえや。しみったれた身上話ですまねえな。ま、おめさんも、一休みしたらどうでえ?」
「あ、うん」
「冷えたうめえ茶、飲むかい?茶請けならガキ共用にたんまりと拵えてあるしな」
「いいね。奏ちゃんやエルはどんなだろ?休めるかな?」
京が臨時の野外調理場に目を向けた、その時。
子供の叫び声が、人々が並ぶ列から聞こえてきた。
「あん?」
「あ、あの子!」
蓮次と京が目を向けた先には。
ミュウが地面に倒れ込み、ロブルがミュウを抱き起こしながら、別の子供達に向かって叫んでいた。
●
「ミュウ!……何すんだよお前ら!」
「……ミュウがウロチョロしてるから、いけないんだ」
「おにいちゃん……みゅう、ヘーキだよ?……あっ」
孤児院のスタッフや大人、年上の子供達が自分達の為に作ってくれた、おいしいゴハンが地面で土と草にまみれて転がってるのを見て大粒の涙を溢すミュウ。
しゃくり上げながらひとつひとつの肉や野菜を、拾っては手で払い、ふうふうと吹き、皿に拾い集めていく。
「おにくさん、おやさいさん、ごめんなさい。みゅうが……みゅうがいけないの……ごめんなさい…………」
「お、お前がどんくさいからいけねえ……んだぞ」
「そーだそーだ!エランのいうとおりだ!自分のせいー!」
「てめえらー!!」
そんなミュウを見て囃し立てる子供達の真ん中で狼狽えている子供に、ロブルが掴みかかっていく。
それを見た京が飛び出そうとするのを蓮次が止めた。
「蓮さん?!」
「ま、あすこにいる二人に任せようぜ」
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「どうしたのかしら?」
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「ころんで、おにくさんとおやさいさんをぜんぶ、おとしちゃったの。みゅうが、いけないことしちゃったの……!」
そこまで言って堪え切れずにまた大粒の涙を溢し、空に向かって泣くミュウ。
「そう。転んで……ねえ」
ふわりとした、それでいて真っ直ぐに子供達を見ながら微笑むエルに、ミュウにちょっかいを掛けた子供達は途端にオドオドとし始めた。
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