異世界花火 ~よう、楽しんでるかい~

マクスウェルの仔猫

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ダノンの街へ

18 おにくさん、おやさいさん、ごめんなさい 

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 ごん、ごーん。

「はいはーい!ちゃんと並んで進んだら、すぐにご飯が食べれるよー!順番抜かしした人は、一番後ろに並びなおしだからねー!」
「お代わり自由でいっぱいあるから、慌てないで焦らないで下さーい!」

 時折鍋とお玉で音を出し、列に沿って説明を重ねるラステラとケルン。
 京は、二人が手に負えない事態が起きた時のフォロー役として、二列に並ぶ人々と二人を見守っている。

「なあ、今日腹いっぱい食べれるってさ!ミュウは何食べたい?お兄ちゃんが取ってきてやるから!」
「ほんと?みゅう、おっきいおにくたべたいな」

 犬の獣人と思われる幼い兄妹の兄が嬉しそうに妹に問いかけると、妹は小さい手の親指と人差し指で、これくらいのお肉!と輪っかを作って兄に見せた。

「今日はきっと食べれるぞ!!」
「ほんとに?じゃあおにいちゃんもいっしょにたべよ?」
「ああ!」

 兄の服を掴み嬉しそうにぴょんぴょん飛ぶ妹と、その頭を撫でる兄。

(お腹いっぱい食べてね。蓮さんも喜ぶよ)

 京はそんな兄妹を見て、微笑んだ。





「なあ!なあ!すげえだろ!俺の飯!」
「お前、皿に肉だけかよ……俺も!」
「はぐはぐはぐはぐ!はぐはぐはぐはぐ!」
「この『ダシマキ』?ふわふわしてすっごくおいしい!」
「おさかなに『ショーユ』?このくらい?」
「最初は少しだけかけて、味見してみたら?」

 孤児院から出されたテーブルセットや地べたに座って、ワイワイきゃあきゃあと大人も子供もはしゃぎながら思い思いの料理を食べている。

「…………!……!!…………」
「ミュウ、そんなに口の中に詰め込まなくても……おかわり、するか?」

 こくこく!
 こくこく!

 ミュウが頬をいっぱいに膨らませ、ロブルにおかわりする!アピールを繰り返す。

「……!ぷは!みゅうまたおにくのとこにいきたい!」
「お、おう。次は何食べたい?野菜も食べないとダメだ」
「うん!」

 京がニコニコと、先ほど見かけた兄妹が手をつないで駆け出すところを見ていると、頭に被せた手ぬぐいを取りながら蓮次がやってきた。

「どうでえ、塩梅は」
「みんな喜んでるよ。もう仕込みは終わったの?」
「ああ。ついでに先の分も仕込み済みだ。奏の巾着袋無限収納にぶっ込んどいた」
「巾着袋……!大泥棒も真っ青だね」
「ちげえねえ」

 くすくすと笑う京の横で、蓮次がこきりこきり、と首をほぐしながら辺りを見渡して、目を細めている。

「ま、ガキ共が喜ぶ顔が何よりだ。腹あ空かせすぎたら心も身体も冷えちまう」
「蓮さん……」
「俺も親なし、身よりもいねえ。このっくれえの時分にゃ年がら年中腹空かしてたからわかんのさ」

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