異世界花火 ~よう、楽しんでるかい~

マクスウェルの仔猫

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ダノンの街へ

13 ダノンの街でのちょっとした騒動

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 エルデと別れを告げカシとナナンを送り届けた一行はダノンの町に辿り着いた。
 料理を、美味しさを目いっぱい味わう為に人化していた玉藻前はその変化を解き、名残惜しそうに空間の揺らぎの中へと戻っている。

 来訪者を迎え入れる外門には、かなりの人間や亜人たちが列をなしていた。

「どうする?俺らはヨハンの護衛として、商人の特別通行証を持っているヨハンと一緒に先に門内に入れるぜ?一緒に行くか?」

 そんなアストの言葉に。

「ま、いいさ。これも道中のうちだからな。急ぎ旅じゃねえし、のんびりでいい」
「そうか、じゃあ、先に行くぜ?」
「蓮次、町に入ったら俺の商会にすぐ来いよ?なかなかいいもんそろってるし、お前の言っていた魚介類の専用の倉庫もある。楽しみにしといてくれ」
「お、いいねえ。そいつは楽しみだ」

 ヨハンはガハハハ!と笑って馬車に乗り込んでいく。

「蓮次さん!みなさん!町でお待ちしてまーす!ありがとうございました!」
「みなさん、ダノンの町、沢山案内しますよー!」

 ラステラとケルンが満面の笑顔で手を振り、馬車へと駆けよっていく。

「ま、おもしれえ奴らだったな」
「そうだね、みんな仲良くて、優しい人ばっかりで。この世界って、けっこう危ない事や命にかかわることって多いじゃない?だから、優しい人はとことん優しくて、毎日本気で精いっぱい生きてるのかもしれないね」

 奏がうんうん、と頷きながら周りを見渡した。

「だな。ま、ちっとばっかし元気がねえ奴らはたんまりとうめえもん食わしてやって、町の御代官の許しが出たら一丁祭りでもやってみるかい」

 楽しそうに笑う蓮次に、京とエルもほほ笑んだ。



 

 一時間ほど待ち、蓮次達の順番がやってきた。

「ん?『祭囃子』……聞いたことねえなあ、そんなパーティー」

 蓮次達四人の顔を楽しげに見比べながら、門の番人が笑う。
 番人の失礼極まりない視線に、奏が大声を上げる。

「何よ!ギルドには登録しているし、調べもしないで何でそんなこと言うのよ!」

 顔を真っ赤にして文句をつける奏に、少しひるんだ番人も、負けじと言い返す。

「パーティーなんて、冒険者なんてどれだけいると思ってるんだ?いちいち調べてらんないね。ま、ちょっとした気持ちづくしとか、お姉ちゃんのがあれば、もうすこーし早く通れるかもしれないねえ」
「なっ!」

 あからさまに賄賂や金品、また女性との何かを期待し、また要求する番人に、顔をしかめる奏、京、エル。

 だが、蓮次だけは楽しそうな顔をして、番人を眺めている。
 小悪党など、蓮次がいた時代でも、異世界にでも、どこにでもいるのだ。

「ま、今は解散しちまったしな。知らねえ奴も多いかもしんねえな。じゃあ、通行許可がねえとかそういった時は、どうなっちまうんだい?」

 番人は待ってました、とばかりに顔をほころばせる。

「そういう時はな、まあ、たとえ話だ。ここで俺が通行許可を出している。だが、アンタたちは身元もしれない、いわば不審者だ。だが、にかかれば、そんなものはちょろいものさ。ちょっと今晩お高い酒が飲めるくらいのコレを俺によこすか、そこのお姉ちゃんたちと……」
「貴様!検問にどれだけ時間を費やしている!」

 番人の話の途中で、大きな音を立てて検問の入り口から入ってきた人間達がいた。番人の上司らしき人間と、ヨハンである。

「ヨハンが、いつまで経っても客人が自分の店に来ない、とここに来た。検問をしている部屋を覗いていけば、ヨハンが『この人達だ』という。この方々は王家の紋章を封にした書状を持ち、かの魔王戦で活躍された『祭囃子』だぞ?それなのにお前はいつまでも喋っていて、一向に通す気配がない」
「い、いや……偽物かもしれませんし」

 それを聞いた上司が、机に目いっぱい拳を叩きつけた。

「ひっ」

 番人が顔を青褪めさせる。

「何のために、そこに連絡用の魔法具があると思っている!そういった場合はギルドに照会しろと言っているだろうが!」
「は、はい」

 上司は蓮次達の方を向き、丁重に頭を下げた。

「申し訳ありませんでした。私はこの門の責任者、ガルディと申します。私は皆様と王都でお会いしたことがあります。どうぞ、お通り下さい。このものはきつく処罰しておきますので」

 そういったガルディに、手をひらひらと振る蓮次。

「通れんならいいのさ。ありがとな」
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