異世界花火 ~よう、楽しんでるかい~

マクスウェルの仔猫

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召喚者パーティー『祭囃子』のぶらり旅

6 ガッハハハ!任せろ!

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 アストの人選を聞いたラステラは飛び上がった。
 森に入る人数が、余りにも少なすぎるのだ。

 護衛についている時の取り決めを忘れて、ラステラはアストに詰め寄る。 

「お父さん!四人で『ルアージュの森』に入るなんて無茶だよ!ヨハンさんが荷物の事を気にしなくていいって言ってくれてるんだったら……みんなで!」
「ダメだ」
「何で!危ないよ!だったら、私が……!」
 
 アストは、涙を浮かべて地団駄を踏むラステラの頭をぽん、と叩いた。

「時間がない、聞け。俺達はこの森の強い獣やヌシを倒しに行く訳じゃない。子供達を探して保護するだけだ。下手に大人数で行けば、探す範囲が広がる代わりに獣に出くわす危険が増えて、全員が生きて帰れる確率が格段に下がる」
「で、でも……そんなの!」

 アストの話を理解はしても、納得がいかず必死で食い下がろうとするラステラ。

「だから、少数で行く。子供の足だ、早々に追いつけるだろう。ケルンが動物と子供達の気配を探り、子供がいたらヨハンと俺と蓮次が抱える。あとは、蓮次。『俺らは誰が残っても、森に入ってもいいぜ?』の言葉、魔王を倒して、生き抜いた腕……信じてもいいんだな?」
「ああ、任せな」

 蓮次が顎を引いて、さらりと請け負う。

「ヤバいの来たら、頼んだぜ?……そんなところだ。お前らは、俺達が子供達を抱えて戻ってきた時に、万が一獣に襲われていたら援護を頼む。任せたぞ?」
「うん……わかった!その時は全力で、お父さんを守るから!」

 アストに返事をしたラステラは、拳を握りしめながらヨハンと蓮次の方を向く。

「蓮次さん!ヨハンさん!父とケルン、子供たちの事、お願いします!そして皆で、無事に帰ってきて下さいね!」
「ガッハハハ!任せろ!」
「ああ」

 ヨハンが頼もしげに返事をし、蓮次は右腕を上げた。

「よし。俺が先頭、ケルンとヨハンは中衛の位置で辺りを探ってくれ。戦闘になっても、決して参加するな。俺と後衛の蓮次で何とかする。行くぞ!」





 馬車の前まで戻ってきた居残り組のゼガンは、同じく居残りの奏、京、エルに訪ねた。

「なあ。『祭囃子』の噂や活躍はギルドを通して聞いていたが、俺達『白夜』は魔王討伐戦にお呼びがかからんかった側だ。アンタらにとっちゃあムカつく質問ですまねえが、アニキやケルン、ヨハンの命が掛かってるからえて聞く。蓮次は……アンタらの中でも更につええんだろ?な?」

 縋るように問いかけてくるザガンに、三人は顎に手を当てて空を見上げる。

「強いわよ。……ただ、説明するとなるとちょっと難しいの。剣と攻撃魔法なら京と奏ちゃんの方が上だと思うし、そもそも蓮さんが剣や魔法を使っているのを見たことがないよね?魔王戦の時もそうだった」

 エルが首を捻りながら、そうザガンに答えた。
 奏が後に続く。

「そうね。蓮次の使をする子は、どの子も間違いなくスゴい。あれが召喚魔法っていうなら蓮次は最強だよ。けどあの子たち、召喚されてる感じじゃなくない?魔法の気配がしないし、なんか勝手に出てくるみたいだし。蓮次が強いかって聞かれたらうまく言えない」
「お、おい!心配になってくるじゃねえかよ!」

 顔を青くさせるザガン。
 
 が。
 エルはザガンに、にっこり!と笑いかける。

「大丈夫。蓮さんが本気を出したら私達じゃどうにもできないくらい強いと思うわ?」
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