上 下
5 / 61
召喚者パーティー『祭囃子』のぶらり旅

5 どうすんだ?手伝うかい?

しおりを挟む
 蓮次が馬車の外に出ると、ヨハンを含めた五人が状況の確認をしていた。

「ケルン、子供達はどこから森に入ったんだ」
「あの辺り!僕より少し年下っぽい男の子が女の子と小さい子を手助けして柵を越えてった!何度も叫んで、ルーティにもお願いして止めようとしたんだけど……」

 くぅん。

 ラプラドールレトリバーをふた回りほど大きくしたような大型の四つ足動物が、ケルンの傍で項垂xうなだれる。

「お父……隊長!ケルンとルーティ悪くないよ!ルーティが駆け出して、いっぱい吠えて、ケルンが子供を止めようと一生懸命叫んでるの見てたの!」
「ああ……わかってる、よくやった」

 アストがケルンとルーティの頭をゴシゴシと撫でた。

 そこに、蓮次が割り込んだ。

「すまねえな。ちぃと手助けしてくれる姐さんがいてよ。ガキどもを追わせてやっちゃくんねえかい?」
「あん?そいつはありがたいが……その狐はただの動物か?それとも魔獣か?」
「ま、俺らんとこでは化身様、だな。なあ、おめさん」

 くぉん。

 蓮次に返事をするように鳴く子狐。
 アストがチラリとケルンを見やった。

「ケルン、お前のテイマーとしての見立てを聞こう。この子狐が森に入って、無事でいられると思うか?」

 見習いとはいえ、テイマーとして育ちつつあるケルンの意見を求めたのである。
 一人のテイマーとして頼られている状況に、ケルンは顔を紅潮させた。
 
 ケルンは子狐をじいっと覗き込んだ。
 子狐は首を傾げてケルンを見つめている。

「はい、隊長!……この子、すごく力があると思われます!能力やステータスは見えませんが、その現象はこの森の強い獣たちと一緒です!」

 その言葉にアストは頷き、次いで蓮次を見やった。

「ケルン、てえしたもんだな。じゃ、おめさん頼んだぜ?立派にお勤めしたらよ、うめえもんと食わせてやっからよ」

 く、おおおん!

 蓮次の言葉に飛び跳ね、宙でくるりと回転した子狐は着地と同時に駆け出した。

 そして瞬く間に柵の上部を足場にして、森の中へと消えていく。
 その背を見ていた蓮次が、アストに言った。

「んで、どうすんだ?手伝うかい?」

 蓮次のその言葉に、アストが頷いた。

「お前たちも手伝ってくれるのか?ありがたい。それなら……まず子供達を確保したい。人数は三人らしい。が……こちらにはヨハンと馬車という護衛対象がある」
「ん?俺も行くぞ?」
「ヨハン、無茶言うな!死にたいのか?!」
「お前は俺が荷物と子供の命を天秤にかけると思うのか?子供を連れて逃げるなら、戦力以外にも人手があった方がいいだろう。何なら、客人のパーティーに護衛を頼めばいい。が、盗賊が来たら逃げてくれても構わんよ」

 ガハハハ!と高笑いするヨハン。

「俺らは誰が残っても、森に入ってもいいぜ?」
 
 二人の言葉に、アストが考え込む。

 そして。

「……わかった。じゃあ、森には俺とヨハン、ケルンと蓮次で行く。あとは馬車の護衛と……もし俺らが一日経っても戻らなかったら、騎士団、警備隊、ギルドに報告を入れてくれ。森から幻獣が出てこないという保証はないからな」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ
ファンタジー
主人公ゴウキは幼馴染である女勇者クレアのパーティーに属する前衛の拳闘士である。 スラムで育ち喧嘩に明け暮れていたゴウキに声をかけ、特待生として学校に通わせてくれたクレアに恩を感じ、ゴウキは苛烈な戦闘塗れの勇者パーティーに加入して日々活躍していた。 だがクレアは人の良い両親に育てられた人間を疑うことを知らずに育った脳内お花畑の女の子。 そんな彼女のパーティーにはエリート神官で腹黒のリフト、クレアと同じくゴウキと幼馴染の聖女ミリアと、剣聖マリスというリーダーと気持ちを同じくするお人よしの聖人ばかりが揃う。 勇者パーティーの聖人達は普段の立ち振る舞いもさることながら、戦いにおいても「美しい」と言わしめるスマートな戦いぶりに周囲は彼らを国の誇りだと称える。 そんなパーティーでゴウキ一人だけ・・・人を疑い、荒っぽい言動、額にある大きな古傷、『拳鬼』と呼ばれるほどの荒々しく泥臭い戦闘スタイル・・・そんな異色な彼が浮いていた。 周囲からも『清』の中の『濁』だと彼のパーティー在籍を疑問視する声も多い。 素直過ぎる勇者パーティーの面々にゴウキは捻くれ者とカテゴライズされ、パーティーと意見を違えることが多く、衝突を繰り返すが常となっていた。 しかしゴウキはゴウキなりに救世の道を歩めることに誇りを持っており、パーティーを離れようとは思っていなかった。 そんなある日、ゴウキは勇者パーティーをいつの間にか追放処分とされていた。失意の底に沈むゴウキだったが、『濁』なる存在と認知されていると思っていたはずの彼には思いの外人望があることに気付く。 『濁』の存在である自分にも『濁』なりの救世の道があることに気付き、ゴウキは勇者パーティーと決別して己の道を歩み始めるが、流れに流れいつの間にか『マフィア』を率いるようになってしまい、立場の違いから勇者と争うように・・・ 一方、人を疑うことのないクレア達は防波堤となっていたゴウキがいなくなったことで、悪意ある者達の食い物にされ弱体化しつつあった。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

異世界でゆるゆる生活を満喫す 

葉月ゆな
ファンタジー
辺境伯家の三男坊。数か月前の高熱で前世は日本人だったこと、社会人でブラック企業に勤めていたことを思い出す。どうして亡くなったのかは記憶にない。ただもう前世のように働いて働いて夢も希望もなかった日々は送らない。 もふもふと魔法の世界で楽しく生きる、この生活を絶対死守するのだと誓っている。 家族に助けられ、面倒ごとは優秀な他人に任せる主人公。でも頼られるといやとはいえない。 ざまぁや成り上がりはなく、思いつくままに好きに行動する日常生活ゆるゆるファンタジーライフのご都合主義です。

人生負け組のスローライフ

雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした! 俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!! ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。 じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。  ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。 ―――――――――――――――――――――― 第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました! 皆様の応援ありがとうございます! ――――――――――――――――――――――

転生して異世界の第7王子に生まれ変わったが、魔力が0で無能者と言われ、僻地に追放されたので自由に生きる。

黒ハット
ファンタジー
ヤクザだった大宅宗一35歳は死んで記憶を持ったまま異世界の第7王子に転生する。魔力が0で魔法を使えないので、無能者と言われて王族の籍を抜かれ僻地の領主に追放される。魔法を使える事が分かって2回目の人生は前世の知識と魔法を使って領地を発展させながら自由に生きるつもりだったが、波乱万丈の人生を送る事になる

七代目は「帝国」最後の皇后

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「帝国」貴族・ホロベシ男爵が流れ弾に当たり死亡。搬送する同行者のナギと大陸横断列車の個室が一緒になった「連合」の財団のぼんぼんシルベスタ・デカダ助教授は彼女に何を見るのか。 「四代目は身代わりの皇后」と同じ世界の二~三代先の時代の話。

異世界転生でチートを授かった俺、最弱劣等職なのに実は最強だけど目立ちたくないのでまったりスローライフをめざす ~奴隷を買って魔法学(以下略)

朝食ダンゴ
ファンタジー
不慮の事故(死神の手違い)で命を落としてしまった日本人・御厨 蓮(みくりや れん)は、間違えて死んでしまったお詫びにチートスキルを与えられ、ロートス・アルバレスとして異世界に転生する。 「目立つとろくなことがない。絶対に目立たず生きていくぞ」 生前、目立っていたことで死神に間違えられ死ぬことになってしまった経験から、異世界では決して目立たないことを決意するロートス。 十三歳の誕生日に行われた「鑑定の儀」で、クソスキルを与えられたロートスは、最弱劣等職「無職」となる。 そうなると、両親に将来を心配され、半ば強制的に魔法学園へ入学させられてしまう。 魔法学園のある王都ブランドンに向かう途中で、捨て売りされていた奴隷少女サラを購入したロートスは、とにかく目立たない平穏な学園生活を願うのだった……。 ※『小説家になろう』でも掲載しています。

魔がさした? 私も魔をさしますのでよろしく。

ユユ
恋愛
幼い頃から築いてきた彼との関係は 愛だと思っていた。 何度も“好き”と言われ 次第に心を寄せるようになった。 だけど 彼の浮気を知ってしまった。 私の頭の中にあった愛の城は 完全に崩壊した。 彼の口にする“愛”は偽物だった。 * 作り話です * 短編で終わらせたいです * 暇つぶしにどうぞ

処理中です...