7 / 10
6 僕だって! 私だって!
しおりを挟む
子供達を不安がらせまいと、ゆったりとしたリアクションを交えながら絵里は語り続ける。
『楽しくみんなで泳いでいたいだけなのに……そう思ってたら、誰かが叫んだんだ。「リーダーは食べさせない!俺も体当たりする!」』
(ごめんね、お待たせ! カツ夫達のカッコいいとこだよ!)
ぐっ!
胸の前で力強く拳を握りしめて言い放った絵里に、子供達が、わぁ!と声を上げる。
「僕も! 僕も体当たりするよ!」
「応援しようよ! 頑張れ! 頑張れ!」
「僕のヤマタノオロチぃ! 行けえっ!」
「きゃうあうあーい! だぁだ!」
「りいだ! かっちょ! きゃああ!」
「うわ! 心ぉ! 飛び跳ねたら危ないよ?! ふふっ……泣いたカラスが何とやら、ね」
子供達の顔が輝き始め、先程まで泣いていた心も母親の腕の中で笑顔を見せて一緒にはしゃいでいる。その姿に力をもらった絵里は、ゆっくりとしっかりと話を続けていった。
『その言葉に勇気をもらった僕とみんなは、力いっぱい叫んだ。「僕も!」「私も!」「ワシもじゃ!」「アタチも!」そうして、全員でクジラさんやイルカさんも一緒に、シャチのヤツに体当りしたんだ!そうすると……』
「「「「「「「………………!」」」」」」」
「あうー! だぁ!」
「はやや……」
子供達は息を詰めて絵里を見つめ、赤ちゃんと心は可愛い声をあげる。絵里は更に観衆が増えた事に、もう気付かない。
『……シャチのヤツが「いたっ!いたたた!やめてくれ!もう食べようとしたりしないから!ぐすっ……うおおおおん!」と泣いて逃げたんだ! シャチのヤツをリーダーの勇気と頑張り、僕達の気持ちで追い払う事ができたんだ!』
子供達から、大きな大きな歓声が上がった。
後ろで聞いていた保護者や図書館のスタッフ達からも小さな歓声が零れ出る。
(あと、ちょっと……もう少しで終わり!)
絵里は最後のストーリーを静かに紡ぐ。
『僕はあれからもっと、身体が大きくなった。シャチやサメが来ても、みんなで勇気を出して追い払えるようになった」
絵里は微笑みながら、最後まで聴いてくれた子供達や多くの見守る大人達と視線を合わせて、ゆっくりと話し続けた。
やり遂げた達成感と皆の反応に嬉し気に頬を染めた絵里は、顔いっぱいのふわふわ笑顔でまた周りの笑顔を呼び込んでいく。
「リーダーみたいに勇気があれば、僕らみたいに力を合わせれば。体がおっきなヤツラにも絶対負けないよ。今日も海は青く澄んでて、太陽がキラキラしてる。今日もみんなと、どこにいこうかなぁ』
絵里はそこで、ペコリ、と頭を下げた。
「……カツ夫と海の仲間たち、おしまい」
『楽しくみんなで泳いでいたいだけなのに……そう思ってたら、誰かが叫んだんだ。「リーダーは食べさせない!俺も体当たりする!」』
(ごめんね、お待たせ! カツ夫達のカッコいいとこだよ!)
ぐっ!
胸の前で力強く拳を握りしめて言い放った絵里に、子供達が、わぁ!と声を上げる。
「僕も! 僕も体当たりするよ!」
「応援しようよ! 頑張れ! 頑張れ!」
「僕のヤマタノオロチぃ! 行けえっ!」
「きゃうあうあーい! だぁだ!」
「りいだ! かっちょ! きゃああ!」
「うわ! 心ぉ! 飛び跳ねたら危ないよ?! ふふっ……泣いたカラスが何とやら、ね」
子供達の顔が輝き始め、先程まで泣いていた心も母親の腕の中で笑顔を見せて一緒にはしゃいでいる。その姿に力をもらった絵里は、ゆっくりとしっかりと話を続けていった。
『その言葉に勇気をもらった僕とみんなは、力いっぱい叫んだ。「僕も!」「私も!」「ワシもじゃ!」「アタチも!」そうして、全員でクジラさんやイルカさんも一緒に、シャチのヤツに体当りしたんだ!そうすると……』
「「「「「「「………………!」」」」」」」
「あうー! だぁ!」
「はやや……」
子供達は息を詰めて絵里を見つめ、赤ちゃんと心は可愛い声をあげる。絵里は更に観衆が増えた事に、もう気付かない。
『……シャチのヤツが「いたっ!いたたた!やめてくれ!もう食べようとしたりしないから!ぐすっ……うおおおおん!」と泣いて逃げたんだ! シャチのヤツをリーダーの勇気と頑張り、僕達の気持ちで追い払う事ができたんだ!』
子供達から、大きな大きな歓声が上がった。
後ろで聞いていた保護者や図書館のスタッフ達からも小さな歓声が零れ出る。
(あと、ちょっと……もう少しで終わり!)
絵里は最後のストーリーを静かに紡ぐ。
『僕はあれからもっと、身体が大きくなった。シャチやサメが来ても、みんなで勇気を出して追い払えるようになった」
絵里は微笑みながら、最後まで聴いてくれた子供達や多くの見守る大人達と視線を合わせて、ゆっくりと話し続けた。
やり遂げた達成感と皆の反応に嬉し気に頬を染めた絵里は、顔いっぱいのふわふわ笑顔でまた周りの笑顔を呼び込んでいく。
「リーダーみたいに勇気があれば、僕らみたいに力を合わせれば。体がおっきなヤツラにも絶対負けないよ。今日も海は青く澄んでて、太陽がキラキラしてる。今日もみんなと、どこにいこうかなぁ』
絵里はそこで、ペコリ、と頭を下げた。
「……カツ夫と海の仲間たち、おしまい」
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ナツキス -ずっとこうしていたかった-
帆希和華
ライト文芸
紫陽花が咲き始める頃、笹井絽薫のクラスにひとりの転校生がやってきた。名前は葵百彩、一目惚れをした。
嫉妬したり、キュンキュンしたり、切なくなったり、目一杯な片思いをしていた。
ある日、百彩が同じ部活に入りたいといい、思わぬところでふたりの恋が加速していく。
大会の合宿だったり、夏祭りに、誕生日会、一緒に過ごす時間が、二人の距離を縮めていく。
そんな中、絽薫は思い出せないというか、なんだかおかしな感覚があった。フラッシュバックとでも言えばいいのか、毎回、同じような光景が突然目の前に広がる。
なんだろうと、考えれば考えるほど答えが遠くなっていく。
夏の終わりも近づいてきたある日の夕方、絽薫と百彩が二人でコンビニで買い物をした帰り道、公園へ寄ろうと入り口を通った瞬間、またフラッシュバックが起きた。
ただいつもと違うのは、その中に百彩がいた。
高校二年の夏、たしかにあった恋模様、それは現実だったのか、夢だったのか……。
17才の心に何を描いていくのだろう?
あの夏のキスのようにのリメイクです。
細かなところ修正しています。ぜひ読んでください。
選択しなくちゃいけなかったので男性向けにしてありますが、女性の方にも読んでもらいたいです。
よろしくお願いします!

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ストーリーテリング
bosobosonovel
ライト文芸
たまたま出会った2人が自他と向き合い巻き込みながら笑顔について問い続ける物語です。
それっぽいものをそれっぽく。
日常と非日常、目に見えるもの見えないもの、様々な考え方や視点をふんわり、ほのぼのとリコとアルトとともに歩んで行けたらと思っています。
平日更新予定です。
初めての投稿作品ですので色々チャレンジしていけたらと思っています。
この作品はカクヨム様、note様でも掲載させていただいています。
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
完全少女と不完全少年
柴野日向
ライト文芸
有数の進学校、州徳高校に入学した水無瀬亜希。真面目な亜希のアルバイト先には、同級生の来栖航がいた。妙に世慣れした彼の振る舞いに感心する亜希。しかし帰り道で航が喫煙している姿を見かけてしまう。
同級生の無法を許せない亜希だったが、航は一向に態度を改めない。
そんなある日、亜希はアルバイト先の店で万引きを働く子どもの姿を見かける。しかし航は捕まえたその子を逃がしてしまう。そこには航のある秘密が関係していた――。
完全である欠如と不完全である欠如。それを補う彼らの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる