終わらない夜と幽霊彼女

幽零

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出会い(2)

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何をしていたか、何を話していたのかはっきりしないまま翌日を迎えた。どうにも破戒僧のような人と会話していたような気がするのだが、どこか記憶がぼやけて思い出せない。ただ、『明日も同じ時間にここに来る』という約束だけは鮮明に覚えていたので、とりあえず時間に間に合うように事務所をでた。

「厳彦~行くのかにゃ~?」

「まぁ現状なんとかしないと、この依頼資料の山が減らないからな……」

「んにゃ、んじゃ由々も付いてくにゃ~」

由々はそういうと、トコトコ自室に歩いていき『ドスン』とベットに何か重い物が落ちる音が鳴ったかと思うと、霊体モードになった由々がふわふわ浮きながら扉をすり抜けて出てきた。

「お前は便利だな………」

「良いでしょ~」


そんなこんなで悠々と浮遊する由々と昨日あの破戒僧に出会った公園へと向かう。


「あれ?厳彦~誰かいる~」

「ん?」


昨日自分が座っていたベンチが見えてくると、その近くに黒いコートを着た男が立っていた。

「あのオボーサンが言ってた人ってあの人の事なのかにゃ~?」

由々が人差し指を口元に当てながら話す。

「さぁな、話しかけてみるか」

東が小走りでベンチに駆け寄ると、由々が東の体に入ったような体勢になる。

「見て見て厳彦~。名付けて『取り憑かれた男』」

「下らんしさっさとやめろ」

「え~、厳彦ノリ悪ーい」

「…ほっとけ」

ある程度ベンチに近寄ると、黒コートの男が東の足音に気が付きこちらを向く。すると突然男が何やら口元を動かしながらこちらに向かって走ってくる。


「……え、ちょっ…あの」

男の目は東を。男は走りながら右手を振りかぶる。東は直感で分かった、由々が危ない。

「……ッッ!!ゆ…」

東が名前を呼ぶより速く男は左手で厳彦の顔を抑え、振りかぶった右手を由々に当てようとした。



……しかし、男の右手は由々にあたる前にビタッと止まった。


「……お前、死んでないな?」

低く、それでいて透き通った男の声が聞こえる。

「え、あ、はい~……」

由々もこの男の手が危ないと思ったのか、受け身を取ろうとしていたらしい。ただその前にこの男が由々は幽霊じゃない事に気がついたらしい。今思えば、この人が右手を振りかざしていたら、今由々はいなかったかもしれない……


「……そうか」

そういうと、男は振りかざそうとしていた右手を下げ、厳彦の顔を掴んでいた左手を離した。

「すまなかったな、お前が取り憑かれているのかと思った」

男の顔を見ると、端正で若く見えるが、眉間にシワが寄っていて常に不機嫌そうに見える。



(こ、怖ぇぇ~……)
(こ、怖いにゃーーッ!!!)


これが対霊専門家ゴーストハンター 北河景字との出会いだった。

















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