14 / 33
訪問?(3)
しおりを挟む
「とりあえず、場所が分かったら連絡すれば良いんですね?」
「あぁ、その神社に妙な奴がいると思うが、絶対に構うな」
「あ、あぁ…はい……」
北河さんがここまで強調して言うのだ。除霊初心者の俺程度ではどうにもならないものがいるのだろう。
「わかりました。あ、報酬の件ですが北河さんなのでタダで……」
っと東が言いかけると、北河はコートの懐から分厚い封筒を取り出し、机に放り投げるように置いた。
「んえ?」
「俺はお前の師匠では無く、依頼人として来ている。俺が依頼料を払うのは当然だ」
北河はそういうと、顎をしゃくる仕草をして東に封筒を取るように促す。恐る恐る東が手をとって封筒を開くと、中には短編小説と同じくらい分厚い札束が入っていた。
「ッッ!?!?き、北河さん!これはいくらなんでも……」
「この件に見合った依頼料だ。300万ある」
「さッッ!?……ビャッ!?!?」
額を聞いて、絶句した。
「本来は俺が探すべきなのだろうが、向こうに俺が探しているとバレたら厄介な事この上ない。すぐに逃げられるだろう。だからアイツと面識のないお前に依頼する。……言っておくが、南雲に出会ったら逃げる事だけ考えろ、最悪死ぬぞ」
「わ、わかりました………」
北河さんの最後の一言に薄ら寒さを感じながら、とりあえず依頼を受諾する。
一連のやり取りが落ち着き、北河さんと他愛もない話をしていると肉体に戻った由々が欠伸をしながら現れた。
「むにゃ~、厳彦おはようだにゃ~」
半分寝ながら現れた由々に、北河が話しかける。
「……久しいな娘。邪魔している」
北河さんのハスキーな声が響いた瞬間、由々は目を見開いて目にも止まらぬ速さで厳彦の後ろに隠れる。
「……お、おはようございます……だにゃ~……」
「……随分怖がられたものだな」
北河は特に怒っているつもりは無いのだが、その常に眉間にシワのよっている不機嫌そうな顔のせいでどう頑張っても怒っているようにしか見えなくなる。だが、由々が北河を怖がっている理由はそれとは別で……
(まぁ、出会い方が出会い方だったし……軽いトラウマにもなるか…)
「……俺はそろそろ失礼する」
「あ、帰るんですか?」
「……依頼があってな」
「あ、お気を付けて!」
北河ほどの人物なら特に『気を付ける』必要もないのだろうが、一応言っておく。
「あぁ……」
北河は扉を開けて事務所から出ていった。
「さて、由々仕事だ」
「んにゃ?どんな仕事かにゃ~?」
「場所探しだ」
「場所~?」
「あぁ、行くぞ」
「ほいほ~い、じゃーあー」
っというといきなり由々がソファーに倒れる。すると体から白く透けている物体が抜け出した。
「んじゃレッツらごー」
「はいはい」
東はコートと帽子をかぶり、外に出る。これからその『南雲文行』が潜伏している小さい神社を探す訳だが、その前に。
……北河さんとの出会いについて、語ろうと思う。
「あぁ、その神社に妙な奴がいると思うが、絶対に構うな」
「あ、あぁ…はい……」
北河さんがここまで強調して言うのだ。除霊初心者の俺程度ではどうにもならないものがいるのだろう。
「わかりました。あ、報酬の件ですが北河さんなのでタダで……」
っと東が言いかけると、北河はコートの懐から分厚い封筒を取り出し、机に放り投げるように置いた。
「んえ?」
「俺はお前の師匠では無く、依頼人として来ている。俺が依頼料を払うのは当然だ」
北河はそういうと、顎をしゃくる仕草をして東に封筒を取るように促す。恐る恐る東が手をとって封筒を開くと、中には短編小説と同じくらい分厚い札束が入っていた。
「ッッ!?!?き、北河さん!これはいくらなんでも……」
「この件に見合った依頼料だ。300万ある」
「さッッ!?……ビャッ!?!?」
額を聞いて、絶句した。
「本来は俺が探すべきなのだろうが、向こうに俺が探しているとバレたら厄介な事この上ない。すぐに逃げられるだろう。だからアイツと面識のないお前に依頼する。……言っておくが、南雲に出会ったら逃げる事だけ考えろ、最悪死ぬぞ」
「わ、わかりました………」
北河さんの最後の一言に薄ら寒さを感じながら、とりあえず依頼を受諾する。
一連のやり取りが落ち着き、北河さんと他愛もない話をしていると肉体に戻った由々が欠伸をしながら現れた。
「むにゃ~、厳彦おはようだにゃ~」
半分寝ながら現れた由々に、北河が話しかける。
「……久しいな娘。邪魔している」
北河さんのハスキーな声が響いた瞬間、由々は目を見開いて目にも止まらぬ速さで厳彦の後ろに隠れる。
「……お、おはようございます……だにゃ~……」
「……随分怖がられたものだな」
北河は特に怒っているつもりは無いのだが、その常に眉間にシワのよっている不機嫌そうな顔のせいでどう頑張っても怒っているようにしか見えなくなる。だが、由々が北河を怖がっている理由はそれとは別で……
(まぁ、出会い方が出会い方だったし……軽いトラウマにもなるか…)
「……俺はそろそろ失礼する」
「あ、帰るんですか?」
「……依頼があってな」
「あ、お気を付けて!」
北河ほどの人物なら特に『気を付ける』必要もないのだろうが、一応言っておく。
「あぁ……」
北河は扉を開けて事務所から出ていった。
「さて、由々仕事だ」
「んにゃ?どんな仕事かにゃ~?」
「場所探しだ」
「場所~?」
「あぁ、行くぞ」
「ほいほ~い、じゃーあー」
っというといきなり由々がソファーに倒れる。すると体から白く透けている物体が抜け出した。
「んじゃレッツらごー」
「はいはい」
東はコートと帽子をかぶり、外に出る。これからその『南雲文行』が潜伏している小さい神社を探す訳だが、その前に。
……北河さんとの出会いについて、語ろうと思う。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
付喪螺旋-TUKUMO‐SPIRAL § ライト伝奇 § 【シリーズ1完結】
竹比古
キャラ文芸
その日【アルカナ】と呼ばれるカードを拾ったことで、幸せな生活が一転した。妻が消え、自宅は全焼(死体あり)、怪しい男にカードを盗られ、殺しをも厭わない連中に拉致される――。
K大学の法医学教室に籍を置く青年、郡司秋良は、車道に突然現れた男が、走って来た車に撥ね飛ばされるのを目撃し、次には妊娠を告げられたばかりの妻、紗夜が目の前から消えるのを目撃する。
現れた男に、消えた妻――。
後に残ったのは一枚のタロットカードだけ――。
紗夜を捜す手掛かりであるその【アルカナ】は、計り知れない力を持つ切り札(トランプ)だという。
郡司にその話を聞かせた男は、アルカナを使って紗夜と同じように消えてしまった。それはテレポーテーション能力を秘める切り札(トランプ)だったのだ。
郡司の手に残されたのは、消えた男が残していった神秘(アルカナ)、『犬の言葉が解る』という何の役にも立たないカードが一枚。
K大学の法医学教室に司法解剖を頼みに来る藤堂刑事や、謎のオカマ、アザミ、雑種のシバの力を借りながら、郡司は妻の行方を捜すが…。
※表紙画:フリーイラストの加工です。
貸本屋七本三八の譚めぐり ~熱を孕む花~
茶柱まちこ
キャラ文芸
「記憶が戻ったら、リツはいなくなっちまうのかな」
越午の地に住まう椿井蒼樹郎(つばいそうじゅろう)に仕える使用人・夏目世助(なつめよすけ)はある日、怪我をして倒れていた謎の女性・リツを保護する。何者かに襲われていたらしい彼女は、名前以外の全ての記憶を失っていた。
これは、全てを忘れた女と、女に恋焦がれた青年が、譚を取り戻すまでの譚。
『譚』と『本』、人と縁をめぐる大昌活劇、第三弾。
護堂先生と神様のごはん あやかし子狐と三日月オムライス
栗槙ひので
キャラ文芸
中学校教師の護堂夏也は、独り身で亡くなった叔父の古屋敷に住む事になり、食いしん坊の神様と、ちょっと大人びた座敷童子の少年と一緒に山間の田舎町で暮らしている。
神様や妖怪達と暮らす奇妙な日常にも慣れつつあった夏也だが、ある日雑木林の藪の中から呻き声がする事に気が付く。心配して近寄ってみると、小さな子どもが倒れていた。その子には狐の耳と尻尾が生えていて……。
保護した子狐を狙って次々現れるあやかし達。霊感のある警察官やオカルト好きの生徒、はた迷惑な英語教師に近所のお稲荷さんまで、人間も神様もクセ者ばかり。夏也の毎日はやっぱり落ち着かない。
護堂先生と神様のごはんシリーズ
長編3作目
【完結】あやかし街の看板娘
MURASAKI
キャラ文芸
さらっと読める3.5万字でHappy完結!|板狩杏美《いたかりあずみ》は、小さな印刷会社のデザイナー。仕事に慣れてきたころ、会社内の嫌がらせが原因で解雇されてしまう。毎日就活の日々を送る中、ランチ無料クーポンに当選する。探しても見つからない店は子猫のおかげで見つけることができたが、そこに居た店員やお客は実はもののけで・・・!?選ばれた人しか呼ばれない「あやかし街」で自分のスキルを生かす場所をみつけていく。嫌がらせをした相手を最後にざまあ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる