人外の多いコンビニ

幽零

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収穫祭編

夜王

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『冥土返しの数珠』は言わば、「黄泉返り」を可能にするアイテムだった。

「一度死んだ人間を蘇らせる」という事実だけで、人間は殺し合いを始めるまでに至った。どこから生まれたのか不明、どう言う仕組みなのかも不明。

去る数百年昔、霊能者機関『陰陽院』はこの数珠をどうしようかと悩んでいた。かつて霊能者として生き、人外の前に散っていった者を蘇らせれば、それはそれは、便利なことだろう。

だがしかし、『黄泉返り』と言う行為をなんのリスクもなく延し遂げられるのかも不明だった。しかし、火のないところに煙は立たない。半信半疑のまま、結局どうすることも出来ずにいた。

それに噂を聞きつけた一般人も殺し合いを始める始末。もういっそ壊した方が良いかもしれないが、貴重な『黄泉返り』をみすみす手放す気にもなれない幹部とのいざこざもあり、八方塞がりだった。


しかし、ふらりと現れたとある破戒僧によって、この問題はさらりと解決された。その破戒僧は数珠を人間には解けない封印を施し、どこかに隠した。民衆には「妖魔に惑わされた」と言う最もらしいことを言い、殺し合いはパタリと止んだ。

破戒僧の正体は誰も知らない。




時代は戻って現代、なぜ人狼帝はこの数珠の封印を解くことができたのか?答えは単純明白。その封印は『人間』には解けない封印だったからだ。つまり、人外にはいとも容易く封印を解けてしまう。


あの破戒僧はそれが狙いだった。


人間の欲から生まれる殺し合いをとめ、人外にそれを使わせる。使われた側は黄泉がえりを阻止しようと、必死になって数珠を壊そうとする。これで、「人間が殺し合いをせず、数珠を壊す」と言う図が完成していたのである。



「して……もう一度問おう。私を蘇らせたのは誰ぞ?」

6枚の黒い翼で羽ばたきながら、ユリフェルは人狼帝、御血、奈血に問いかける。人狼帝が夜王に向かって答えた。


「この我だ。久しいなユリフェル」

「……なぜ貴様がこの私を蘇らせた?」

「まぁ、聞けユリフェル。我は今、我々人狼やお前たち吸血鬼が恐れられていた時代をもう一度作ろうと思っている。しかし、目の前のこいつらが邪魔だ。一度協力しないか?……ユリフェル、聞いた話、お前の率いていた派閥は、そこの黄色い眼をした吸血鬼に滅亡させられたのだろう?」

「……ふむ……?……なるほど、そこの黄眼の同胞よ。貴様見覚えがあると思っていたが……あの時の吸血鬼か…」

「あー、はい」

御血は「バレちった」といったトーンで答える。


「どうだ?ユリフェル。貴様もそいつを殺したいだろう?我と貴様で再び世界に人外蔓延る魔の時代を到来させようではないか。その後はもう一度、貴様としのぎを削ってもいいな……」


「………ほう……」



(おー、御血。アイツが夜王ユリフェルか……、アイツ)

(えぇ先生。ヤツはにもかかわらず、黄眼種にも劣らぬ能力を持っています。それにあれだけの集団をまとめ上げるのであれば、その統率力も凄まじいでしょう。又アイツに派閥でもつくられたら……少し骨が折れますね…)

(……御血くん、あの吸血鬼、段違いだね)

人狼を斬り終えた氷四郎は御血と奈血の近くに来ていた。


夜王ユリフェルは少しの沈黙の後、あっさりと答えた。



「断る」



「な、なにぃッ!?なぜだユリフェル!そいつは派閥の仇だろう!!?」

人狼帝が叫ぶと、ユリフェルは呆れたように説明し始めた。

「私が貴様の申し出を断ったのには三つある。まず1つ、そこにいる黄眼種は確かに私の派閥の仇だ。しかし、正々堂々と正面から挑まれ、私は負けた。今更復讐なぞなんの得もなく、美しくない。2つ、その黄眼種が二人に、そこの人間は日本という場所で悪き怨霊を斬りまくった『幽鬼・氷四郎』だ。これだけの戦力相手だとまず勝てん。そして3つ………まぁ、これが一番の理由なのだが……」

っとここまでいうと、ユリフェルは人狼帝をビッと指差し言い放つ。

「高貴なる我々吸血鬼が、貴様ら下賎な人狼などと手を組むなぞ、億に一つもあり得んからだッッ!!」


バーンと効果音がつきそうな程の勢いで、ずいぶんカッコイイことを言い放つ夜王ユリフェル様。


「ならばどうする!!ユリフェル!」

「ふん、そうだな……」

ユリフェルは手を人狼帝にかざすと、謎のオーラが放たれ、人狼帝を全快させた。


「なんのつもりだ……」

「500年前の決着と行こうではないか人狼帝?満身創痍では相手になるまい?」

「……いいだろう…生き返らせたが……再び冥土に送ってやる!!」


「おー、なんか始まってんなぁ」

「まずいですよお二人とも…あのレベルの人外がぶつかり合えば、まだ大勢いる一般の方が巻き込まれます……なんとか止めないと……」

「あー、そうですかまぁ、でも………いや、止めよう。チウが危ない」

「おー、なんかいったか御血ぃ~?」

「いえ、特には」

「どうやって止めましょうか。あなた方2人なら空を飛べますが、私はこれでも一応人間なもので」

「付喪神なら飛べんじゃね?」

「私がそのイメージを持てないのですよ」

「ユリフェルは吸血鬼の中でも最強です。その魔力は俺でも止められるかどうか……」

などと言っている内にあの二人はヒートアップしてしまった。



「行くぞ!下賎な人狼の王!」

「来やがれ!ウザってぇ吸血鬼の長!」



収穫祭編、とうとう最終局面です。さて、どうなるでしょうか。



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