38 / 81
収穫祭編
夜王
しおりを挟む
『冥土返しの数珠』は言わば、「黄泉返り」を可能にするアイテムだった。
「一度死んだ人間を蘇らせる」という事実だけで、人間は殺し合いを始めるまでに至った。どこから生まれたのか不明、どう言う仕組みなのかも不明。
去る数百年昔、霊能者機関『陰陽院』はこの数珠をどうしようかと悩んでいた。かつて霊能者として生き、人外の前に散っていった者を蘇らせれば、それはそれは、便利なことだろう。
だがしかし、『黄泉返り』と言う行為をなんのリスクもなく延し遂げられるのかも不明だった。しかし、火のないところに煙は立たない。半信半疑のまま、結局どうすることも出来ずにいた。
それに噂を聞きつけた一般人も殺し合いを始める始末。もういっそ壊した方が良いかもしれないが、貴重な『黄泉返り』をみすみす手放す気にもなれない幹部とのいざこざもあり、八方塞がりだった。
しかし、ふらりと現れたとある破戒僧によって、この問題はさらりと解決された。その破戒僧は数珠を人間には解けない封印を施し、どこかに隠した。民衆には「妖魔に惑わされた」と言う最もらしいことを言い、殺し合いはパタリと止んだ。
破戒僧の正体は誰も知らない。
時代は戻って現代、なぜ人狼帝はこの数珠の封印を解くことができたのか?答えは単純明白。その封印は『人間』には解けない封印だったからだ。つまり、人外にはいとも容易く封印を解けてしまう。
あの破戒僧はそれが狙いだった。
人間の欲から生まれる殺し合いをとめ、人外にそれを使わせる。使われた側は黄泉がえりを阻止しようと、必死になって数珠を壊そうとする。これで、「人間が殺し合いをせず、数珠を壊す」と言う図が完成していたのである。
「して……もう一度問おう。私を蘇らせたのは誰ぞ?」
6枚の黒い翼で羽ばたきながら、ユリフェルは人狼帝、御血、奈血に問いかける。人狼帝が夜王に向かって答えた。
「この我だ。久しいなユリフェル」
「……なぜ貴様がこの私を蘇らせた?」
「まぁ、聞けユリフェル。我は今、我々人狼やお前たち吸血鬼が恐れられていた時代をもう一度作ろうと思っている。しかし、目の前のこいつらが邪魔だ。一度協力しないか?……ユリフェル、聞いた話、お前の率いていた派閥は、そこの黄色い眼をした吸血鬼に滅亡させられたのだろう?」
「……ふむ……?……なるほど、そこの黄眼の同胞よ。貴様見覚えがあると思っていたが……あの時の吸血鬼か…」
「あー、はい」
御血は「バレちった」といったトーンで答える。
「どうだ?ユリフェル。貴様もそいつを殺したいだろう?我と貴様で再び世界に人外蔓延る魔の時代を到来させようではないか。その後はもう一度、貴様としのぎを削ってもいいな……」
「………ほう……」
(おー、御血。アイツが夜王ユリフェルか……強いな、アイツ)
(えぇ先生。ヤツは純粋な吸血鬼にもかかわらず、黄眼種にも劣らぬ能力を持っています。それにあれだけの集団をまとめ上げるのであれば、その統率力も凄まじいでしょう。又アイツに派閥でもつくられたら……少し骨が折れますね…)
(……御血くん、あの吸血鬼、段違いだね)
人狼を斬り終えた氷四郎は御血と奈血の近くに来ていた。
夜王ユリフェルは少しの沈黙の後、あっさりと答えた。
「断る」
「な、なにぃッ!?なぜだユリフェル!そいつは派閥の仇だろう!!?」
人狼帝が叫ぶと、ユリフェルは呆れたように説明し始めた。
「私が貴様の申し出を断ったのには三つある。まず1つ、そこにいる黄眼種は確かに私の派閥の仇だ。しかし、正々堂々と正面から挑まれ、私は負けた。今更復讐なぞなんの得もなく、美しくない。2つ、その黄眼種が二人に、そこの人間は日本という場所で悪き怨霊を斬りまくった『幽鬼・氷四郎』だ。これだけの戦力相手だとまず勝てん。そして3つ………まぁ、これが一番の理由なのだが……」
っとここまでいうと、ユリフェルは人狼帝をビッと指差し言い放つ。
「高貴なる我々吸血鬼が、貴様ら下賎な人狼などと手を組むなぞ、億に一つもあり得んからだッッ!!」
バーンと効果音がつきそうな程の勢いで、ずいぶんカッコイイことを言い放つ夜王ユリフェル様。
「ならばどうする!!ユリフェル!」
「ふん、そうだな……」
ユリフェルは手を人狼帝にかざすと、謎のオーラが放たれ、人狼帝を全快させた。
「なんのつもりだ……」
「500年前の決着と行こうではないか人狼帝?満身創痍では相手になるまい?」
「……いいだろう…生き返らせたが……再び冥土に送ってやる!!」
「おー、なんか始まってんなぁ」
「まずいですよお二人とも…あのレベルの人外がぶつかり合えば、まだ大勢いる一般の方が巻き込まれます……なんとか止めないと……」
「あー、そうですかまぁ、でも………いや、止めよう。チウが危ない」
「おー、なんかいったか御血ぃ~?」
「いえ、特には」
「どうやって止めましょうか。あなた方2人なら空を飛べますが、私はこれでも一応人間なもので」
「付喪神なら飛べんじゃね?」
「私がそのイメージを持てないのですよ」
「ユリフェルは吸血鬼の中でも最強です。その魔力は俺でも止められるかどうか……」
などと言っている内にあの二人はヒートアップしてしまった。
「行くぞ!下賎な人狼の王!」
「来やがれ!ウザってぇ吸血鬼の長!」
収穫祭編、とうとう最終局面です。さて、どうなるでしょうか。
「一度死んだ人間を蘇らせる」という事実だけで、人間は殺し合いを始めるまでに至った。どこから生まれたのか不明、どう言う仕組みなのかも不明。
去る数百年昔、霊能者機関『陰陽院』はこの数珠をどうしようかと悩んでいた。かつて霊能者として生き、人外の前に散っていった者を蘇らせれば、それはそれは、便利なことだろう。
だがしかし、『黄泉返り』と言う行為をなんのリスクもなく延し遂げられるのかも不明だった。しかし、火のないところに煙は立たない。半信半疑のまま、結局どうすることも出来ずにいた。
それに噂を聞きつけた一般人も殺し合いを始める始末。もういっそ壊した方が良いかもしれないが、貴重な『黄泉返り』をみすみす手放す気にもなれない幹部とのいざこざもあり、八方塞がりだった。
しかし、ふらりと現れたとある破戒僧によって、この問題はさらりと解決された。その破戒僧は数珠を人間には解けない封印を施し、どこかに隠した。民衆には「妖魔に惑わされた」と言う最もらしいことを言い、殺し合いはパタリと止んだ。
破戒僧の正体は誰も知らない。
時代は戻って現代、なぜ人狼帝はこの数珠の封印を解くことができたのか?答えは単純明白。その封印は『人間』には解けない封印だったからだ。つまり、人外にはいとも容易く封印を解けてしまう。
あの破戒僧はそれが狙いだった。
人間の欲から生まれる殺し合いをとめ、人外にそれを使わせる。使われた側は黄泉がえりを阻止しようと、必死になって数珠を壊そうとする。これで、「人間が殺し合いをせず、数珠を壊す」と言う図が完成していたのである。
「して……もう一度問おう。私を蘇らせたのは誰ぞ?」
6枚の黒い翼で羽ばたきながら、ユリフェルは人狼帝、御血、奈血に問いかける。人狼帝が夜王に向かって答えた。
「この我だ。久しいなユリフェル」
「……なぜ貴様がこの私を蘇らせた?」
「まぁ、聞けユリフェル。我は今、我々人狼やお前たち吸血鬼が恐れられていた時代をもう一度作ろうと思っている。しかし、目の前のこいつらが邪魔だ。一度協力しないか?……ユリフェル、聞いた話、お前の率いていた派閥は、そこの黄色い眼をした吸血鬼に滅亡させられたのだろう?」
「……ふむ……?……なるほど、そこの黄眼の同胞よ。貴様見覚えがあると思っていたが……あの時の吸血鬼か…」
「あー、はい」
御血は「バレちった」といったトーンで答える。
「どうだ?ユリフェル。貴様もそいつを殺したいだろう?我と貴様で再び世界に人外蔓延る魔の時代を到来させようではないか。その後はもう一度、貴様としのぎを削ってもいいな……」
「………ほう……」
(おー、御血。アイツが夜王ユリフェルか……強いな、アイツ)
(えぇ先生。ヤツは純粋な吸血鬼にもかかわらず、黄眼種にも劣らぬ能力を持っています。それにあれだけの集団をまとめ上げるのであれば、その統率力も凄まじいでしょう。又アイツに派閥でもつくられたら……少し骨が折れますね…)
(……御血くん、あの吸血鬼、段違いだね)
人狼を斬り終えた氷四郎は御血と奈血の近くに来ていた。
夜王ユリフェルは少しの沈黙の後、あっさりと答えた。
「断る」
「な、なにぃッ!?なぜだユリフェル!そいつは派閥の仇だろう!!?」
人狼帝が叫ぶと、ユリフェルは呆れたように説明し始めた。
「私が貴様の申し出を断ったのには三つある。まず1つ、そこにいる黄眼種は確かに私の派閥の仇だ。しかし、正々堂々と正面から挑まれ、私は負けた。今更復讐なぞなんの得もなく、美しくない。2つ、その黄眼種が二人に、そこの人間は日本という場所で悪き怨霊を斬りまくった『幽鬼・氷四郎』だ。これだけの戦力相手だとまず勝てん。そして3つ………まぁ、これが一番の理由なのだが……」
っとここまでいうと、ユリフェルは人狼帝をビッと指差し言い放つ。
「高貴なる我々吸血鬼が、貴様ら下賎な人狼などと手を組むなぞ、億に一つもあり得んからだッッ!!」
バーンと効果音がつきそうな程の勢いで、ずいぶんカッコイイことを言い放つ夜王ユリフェル様。
「ならばどうする!!ユリフェル!」
「ふん、そうだな……」
ユリフェルは手を人狼帝にかざすと、謎のオーラが放たれ、人狼帝を全快させた。
「なんのつもりだ……」
「500年前の決着と行こうではないか人狼帝?満身創痍では相手になるまい?」
「……いいだろう…生き返らせたが……再び冥土に送ってやる!!」
「おー、なんか始まってんなぁ」
「まずいですよお二人とも…あのレベルの人外がぶつかり合えば、まだ大勢いる一般の方が巻き込まれます……なんとか止めないと……」
「あー、そうですかまぁ、でも………いや、止めよう。チウが危ない」
「おー、なんかいったか御血ぃ~?」
「いえ、特には」
「どうやって止めましょうか。あなた方2人なら空を飛べますが、私はこれでも一応人間なもので」
「付喪神なら飛べんじゃね?」
「私がそのイメージを持てないのですよ」
「ユリフェルは吸血鬼の中でも最強です。その魔力は俺でも止められるかどうか……」
などと言っている内にあの二人はヒートアップしてしまった。
「行くぞ!下賎な人狼の王!」
「来やがれ!ウザってぇ吸血鬼の長!」
収穫祭編、とうとう最終局面です。さて、どうなるでしょうか。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
エロゲソムリエの女子高生~私がエロゲ批評宇宙だ~
新浜 星路
キャラ文芸
エロゲ大好き少女佐倉かなたの学園生活と日常。
佐倉 かなた
長女の影響でエロゲを始める。
エロゲ好き、欝げー、ナキゲーが好き。エロゲ通。年間60本を超えるエロゲーをプレイする。
口癖は三次元は惨事。エロゲスレにもいる、ドM
美少女大好き、メガネは地雷といつも口にする、緑髪もやばい、マブラヴ、天いな
橋本 紗耶香
ツンデレ。サヤボウという相性がつく、すぐ手がでてくる。
橋本 遥
ど天然。シャイ
ピュアピュア
高円寺希望
お嬢様
クール
桑畑 英梨
好奇心旺盛、快活、すっとんきょう。口癖は「それ興味あるなぁー」フランク
高校生の小説家、素っ頓狂でたまにかなたからエロゲを借りてそれをもとに作品をかいてしまう、天才
佐倉 ひより
かなたの妹。しっかりもの。彼氏ができそうになるもお姉ちゃんが心配だからできないと断る。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる