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二章「シーカーゲーム」
新たな出会い
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陰鬱とした通路を黄島たちは歩いていた。先ほど狂人たちに囲まれていたが、それなりの場数を踏んだ彼らにとって、それは窮地でもなんでもなかった。
「いやはや、これほど視界が広々としていると、やはり気分がいいものであるな」
仮面男から、美形男に生まれ変わった翡翠は相変わらずウキウキしている。
「にしても~、翡翠さんがそんなに美形だったのは意外だね~」
「そうね、それはアタシも思う」
黄島はくすくすと笑いながら、土田はなんか残念そうな顔をしながら話す。
土田は『地図』と呼ばれる端末を手に持ちながら歩いている。
「あのさー黄島さん思うんだけど、それ本当に意味あんのかな~?」
黄島は暇そーに土田に問いかける。『地図』と謳ってはいるが、その実平面的な図形しか表されず、端末同士の通信などもできない、それに表示されているのはこの端末の場所なので、仲間がどこにいるかなどもわからない。なんならわざわざギミックの部屋をクリアしてまで手に入れるより、そこらに落ちている変な武器の方が役立ちそうなものではある。
過去に、そういったアイテムをここにいる人間から奪って優位に立とうとしていた勢力があった。それが、残忍で狡猾で卑怯で卑劣な女、瑠璃垣率いる『地図狩り』勢力だった。
瑠璃垣は持ち前の人を惑わし、正常な判断力を奪い、従えるその力で勢力を強大なものにしていったが、彼女と協力体制をとっていた銀咲、翡翠の裏切りと、彼女の相棒となっていた夜透の寝返りによって、なんとか討伐するに至ったが……
瑠璃垣に捕まっていた奴隷は解放されたが、床の『崩壊』に巻き込まれた夜透、自ら『崩壊』に身を投げた瑠璃垣、その原因を作り出した紅谷が行方不明となっている。
「まぁ、ないよりはマシでしょうね」
「そうであるな」
少なくとも地図を持って入れば行き止まりに追い詰められることはない。
そんな事を話していたら、曲がり角の先から何やら物音が聞こえる。
三人ともピクリと反応し、黄島が音を立てず先を覗く。
黄島の視線の先には、和服と軍服を合わせたような、白く輝く奇妙なデザインの服を着た男だった。男は何やら床に落ちているアイテムを拾っていたらしい。
黄島が二人に合図を送ると、三人は壁から出る。
「お~いそこの奇妙な軍服さ~ん」
黄島が呼びかけると、軍服の男はゆっくり立ち上がり、黄島たちの方を見る。
それなりに若く、目つきは鋭い。そして腰には中世に西欧の戦争で幅広く使われた「ロングソード」が、鞘に納まった状態でベルトにぶら下がっていた。和風な軍服を着ているのに、持っている武器は西欧の武器なのがなんともアンバランスだ。
「おや?生存者ですか。まともな方は久々にお見かけしました」
丁寧な口調。中々に好印象だ。
「えっと、アンタ何してたの?」
土田が聞くと、男は答える。
「えぇ、道端に落ちている道具を回収しようかと思いまして」
軍手のようなものをした手が床を指さす。そこにはいくらかの食糧の詰まったリュックらしきものが落ちていた。
「あ、軍服さん。それ俺たちもほしーんだけど分けて~?」
黄島がいうと、男は少し難しそうな顔をする。
「ふむ、困りましたね。これは一つしかない、そして貴方達も、私もこれを求めている。流石に私も食料がなければ死んでしまいますから」
顎に手を当て、思考する男。その様子を見て黄島は男に提案する。
「あ、じゃあさー軍服さんと俺が戦って勝った方がそれ手に入れるって感じでどう?」
黄島がそう提案すると、男は再び顎に手を当て思考するポーズをとる。
「そう……ですね、現状それしか決め手がないでしょう。ならば始めましょう」
男は腰に付けているロングソードを引き抜く。その動作はまるで日本刀を抜いているようだった。
「はいはーい、黄島さんもいっくよ~ん?」
黄島はナイフを日本引き抜くと、逆手に持ち変えた。
「んじゃ、殺す気でかかってきなよ~軍服さん」
「そうですね、そうさせて頂きましょう」
男はチャッとロングソードを構える。
少しだけの沈黙の後、黄島はノーモーションでナイフを投げようとした。逆手で持っている状態から投げる人はほぼいない……が、黄島はそれを逆手にとって奇襲を仕掛けた。これは試合ではない。卑怯と言われようが、殺人鬼の彼がそんなことを気にするわけがない。
だが、黄島がナイフを投げ出す前に、軍服の男はロングソードを突き出し、まるでフェンシングのような体勢で黄島が投擲する前のナイフをピンポイントで突き飛ばした。ロングソードは黄島の手には当たらず、その手にあったナイフだけを弾いた。弾かれたナイフは土田の横を通り過ぎて、後ろの壁のやや上に刺さる。
黄島があっけに取られている隙に、男はロングソードを引っ込め、凄まじい勢いで斬り上げ、もう片方の手にあったナイフを弾く。そちらのナイフは天井に刺さる。
若干体勢の崩れた黄島に対し、男はくるりとロングソードを逆さに持ち変える。「斬る」ことがメインの「日本刀」とは違い、重量と頑丈さで叩き潰すことが目的の「ロングソード」はそれほど切れ味が良い訳ではない。それに加え、男は軍手を付けているので前提として手が傷つかない。
男は逆さに持ち替えたロングソードの持ち手の部分に体重を乗せて黄島に叩きつける。男が黄島に放った一撃は、あまりの威力の高さに、戦争では禁止された「殺し打ち」と呼ばれる西欧剣術の一つである。
ゴッッ!!という音が鳴り響き、黄島は吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。
黄島が視線を上げる時にはすでに、首元にロングソードの冷たい感触があった。
「さて、降参して頂けますか?」
「……降参で~す……」
黄島が両手を上げると、男は素直にロングソードを収めた。
「上手く当てたつもりですが、もし痛かったらなるべく動かないで安静にしておいた方が宜しいかと思います」
「あ、あのさぁ……」
黄島は土田と翡翠に支えられながら立つと、男に問いかける。
「最初のアレ……どうやったの?黄島さん全く見えなかったんだけど……」
最初のアレとは、男が黄島の投げようとしたナイフを弾き飛ばした時のことだろう。
「あれさ、絶対一歩とかで詰められる距離じゃなかったよね……?瞬間移動してきたようにしか見えなかったんだけど……」
「しゅ、瞬間移動…?」
黄島の言葉に横で支えている土田が反応する。
「あぁ…あれは『縮地』と呼ばれる歩法ですね。間合いを詰めるのにとても便利ですので、よく使わせて頂いています」
『縮地』という単語を聞いた途端、土田の顔の色が変わった。
「しゅ……『縮地』ッ!?それ、武術の達人の……それも極一部の人しか会得できない技じゃない!」
土田はその容姿(オッドアイ)から虐められないようにと、父親に武道を習わされていた。だから、この『縮地』と呼ばれるものがどれほどの境地なのかがわかったのだろう。
「ふむ…確かに人間技ではないのである」
翡翠も感心したような顔をしていた。
「それにさー……軍服さんの1回目の突きはフェンシングみたいな鋭さ…2回目の斬り上げは日本剣術のような重さ…んで最後のは西欧剣術かな…?何したらそんなになる訳……?」
男は少し微笑むと、話す。
「私は幼い頃、とても病弱でして。母や父が強くなるようにと、色々な武芸を一通り習わさせられたのです」
まぁ、昔の話ですけどねと付け加えると、床に落ちていたリュックを拾い上げる。
「では、皆様。縁がありましたらいずれまた」
軽く会釈し、立ち去ろうとする男に翡翠が話しかける。
「貴方の名前を伺いたいのであるが」
そう言われた男は、少しだけ振り返ると名乗った。
「紫月。紫月 御剣と言います」
男は名乗ると、迷宮の奥へと消えていった。
「いやはや、これほど視界が広々としていると、やはり気分がいいものであるな」
仮面男から、美形男に生まれ変わった翡翠は相変わらずウキウキしている。
「にしても~、翡翠さんがそんなに美形だったのは意外だね~」
「そうね、それはアタシも思う」
黄島はくすくすと笑いながら、土田はなんか残念そうな顔をしながら話す。
土田は『地図』と呼ばれる端末を手に持ちながら歩いている。
「あのさー黄島さん思うんだけど、それ本当に意味あんのかな~?」
黄島は暇そーに土田に問いかける。『地図』と謳ってはいるが、その実平面的な図形しか表されず、端末同士の通信などもできない、それに表示されているのはこの端末の場所なので、仲間がどこにいるかなどもわからない。なんならわざわざギミックの部屋をクリアしてまで手に入れるより、そこらに落ちている変な武器の方が役立ちそうなものではある。
過去に、そういったアイテムをここにいる人間から奪って優位に立とうとしていた勢力があった。それが、残忍で狡猾で卑怯で卑劣な女、瑠璃垣率いる『地図狩り』勢力だった。
瑠璃垣は持ち前の人を惑わし、正常な判断力を奪い、従えるその力で勢力を強大なものにしていったが、彼女と協力体制をとっていた銀咲、翡翠の裏切りと、彼女の相棒となっていた夜透の寝返りによって、なんとか討伐するに至ったが……
瑠璃垣に捕まっていた奴隷は解放されたが、床の『崩壊』に巻き込まれた夜透、自ら『崩壊』に身を投げた瑠璃垣、その原因を作り出した紅谷が行方不明となっている。
「まぁ、ないよりはマシでしょうね」
「そうであるな」
少なくとも地図を持って入れば行き止まりに追い詰められることはない。
そんな事を話していたら、曲がり角の先から何やら物音が聞こえる。
三人ともピクリと反応し、黄島が音を立てず先を覗く。
黄島の視線の先には、和服と軍服を合わせたような、白く輝く奇妙なデザインの服を着た男だった。男は何やら床に落ちているアイテムを拾っていたらしい。
黄島が二人に合図を送ると、三人は壁から出る。
「お~いそこの奇妙な軍服さ~ん」
黄島が呼びかけると、軍服の男はゆっくり立ち上がり、黄島たちの方を見る。
それなりに若く、目つきは鋭い。そして腰には中世に西欧の戦争で幅広く使われた「ロングソード」が、鞘に納まった状態でベルトにぶら下がっていた。和風な軍服を着ているのに、持っている武器は西欧の武器なのがなんともアンバランスだ。
「おや?生存者ですか。まともな方は久々にお見かけしました」
丁寧な口調。中々に好印象だ。
「えっと、アンタ何してたの?」
土田が聞くと、男は答える。
「えぇ、道端に落ちている道具を回収しようかと思いまして」
軍手のようなものをした手が床を指さす。そこにはいくらかの食糧の詰まったリュックらしきものが落ちていた。
「あ、軍服さん。それ俺たちもほしーんだけど分けて~?」
黄島がいうと、男は少し難しそうな顔をする。
「ふむ、困りましたね。これは一つしかない、そして貴方達も、私もこれを求めている。流石に私も食料がなければ死んでしまいますから」
顎に手を当て、思考する男。その様子を見て黄島は男に提案する。
「あ、じゃあさー軍服さんと俺が戦って勝った方がそれ手に入れるって感じでどう?」
黄島がそう提案すると、男は再び顎に手を当て思考するポーズをとる。
「そう……ですね、現状それしか決め手がないでしょう。ならば始めましょう」
男は腰に付けているロングソードを引き抜く。その動作はまるで日本刀を抜いているようだった。
「はいはーい、黄島さんもいっくよ~ん?」
黄島はナイフを日本引き抜くと、逆手に持ち変えた。
「んじゃ、殺す気でかかってきなよ~軍服さん」
「そうですね、そうさせて頂きましょう」
男はチャッとロングソードを構える。
少しだけの沈黙の後、黄島はノーモーションでナイフを投げようとした。逆手で持っている状態から投げる人はほぼいない……が、黄島はそれを逆手にとって奇襲を仕掛けた。これは試合ではない。卑怯と言われようが、殺人鬼の彼がそんなことを気にするわけがない。
だが、黄島がナイフを投げ出す前に、軍服の男はロングソードを突き出し、まるでフェンシングのような体勢で黄島が投擲する前のナイフをピンポイントで突き飛ばした。ロングソードは黄島の手には当たらず、その手にあったナイフだけを弾いた。弾かれたナイフは土田の横を通り過ぎて、後ろの壁のやや上に刺さる。
黄島があっけに取られている隙に、男はロングソードを引っ込め、凄まじい勢いで斬り上げ、もう片方の手にあったナイフを弾く。そちらのナイフは天井に刺さる。
若干体勢の崩れた黄島に対し、男はくるりとロングソードを逆さに持ち変える。「斬る」ことがメインの「日本刀」とは違い、重量と頑丈さで叩き潰すことが目的の「ロングソード」はそれほど切れ味が良い訳ではない。それに加え、男は軍手を付けているので前提として手が傷つかない。
男は逆さに持ち替えたロングソードの持ち手の部分に体重を乗せて黄島に叩きつける。男が黄島に放った一撃は、あまりの威力の高さに、戦争では禁止された「殺し打ち」と呼ばれる西欧剣術の一つである。
ゴッッ!!という音が鳴り響き、黄島は吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。
黄島が視線を上げる時にはすでに、首元にロングソードの冷たい感触があった。
「さて、降参して頂けますか?」
「……降参で~す……」
黄島が両手を上げると、男は素直にロングソードを収めた。
「上手く当てたつもりですが、もし痛かったらなるべく動かないで安静にしておいた方が宜しいかと思います」
「あ、あのさぁ……」
黄島は土田と翡翠に支えられながら立つと、男に問いかける。
「最初のアレ……どうやったの?黄島さん全く見えなかったんだけど……」
最初のアレとは、男が黄島の投げようとしたナイフを弾き飛ばした時のことだろう。
「あれさ、絶対一歩とかで詰められる距離じゃなかったよね……?瞬間移動してきたようにしか見えなかったんだけど……」
「しゅ、瞬間移動…?」
黄島の言葉に横で支えている土田が反応する。
「あぁ…あれは『縮地』と呼ばれる歩法ですね。間合いを詰めるのにとても便利ですので、よく使わせて頂いています」
『縮地』という単語を聞いた途端、土田の顔の色が変わった。
「しゅ……『縮地』ッ!?それ、武術の達人の……それも極一部の人しか会得できない技じゃない!」
土田はその容姿(オッドアイ)から虐められないようにと、父親に武道を習わされていた。だから、この『縮地』と呼ばれるものがどれほどの境地なのかがわかったのだろう。
「ふむ…確かに人間技ではないのである」
翡翠も感心したような顔をしていた。
「それにさー……軍服さんの1回目の突きはフェンシングみたいな鋭さ…2回目の斬り上げは日本剣術のような重さ…んで最後のは西欧剣術かな…?何したらそんなになる訳……?」
男は少し微笑むと、話す。
「私は幼い頃、とても病弱でして。母や父が強くなるようにと、色々な武芸を一通り習わさせられたのです」
まぁ、昔の話ですけどねと付け加えると、床に落ちていたリュックを拾い上げる。
「では、皆様。縁がありましたらいずれまた」
軽く会釈し、立ち去ろうとする男に翡翠が話しかける。
「貴方の名前を伺いたいのであるが」
そう言われた男は、少しだけ振り返ると名乗った。
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