アンダーグラウンドゲーム

幽零

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一章「ラビリンスゲーム」

親子

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灰城グループと言えば、大手中の大手企業。あらゆる事業を成功させた、小さな国よりも巨大な企業だ。


そんな中、灰城グループが資産を費やしている施設があった。みすぼらしく、ボロボロで、不気味な施設。何をしているかはトップシークレットらしく、灰城の正社員でもまず知る事は出来ない。





雑草がそこら中に根強く生えた道を1人のスーツ姿の男が歩いていく。

古ぼけた扉に似合っていない最新のセキュリティをアンロックし、中に入る。

中からはホコリと薬品の匂いが漂ってくる。通路にはなんの生物かも分からないものがホルマリン漬けになっていくつも立ててある。

男はある扉のスイッチを押す。するとまるでエレベーターのようにその部屋だけが下へ下へと降下していく。


ガシャン、と到着し、扉から出る。古ぼけた施設なのにところどころ最新のテクノロジーが使われているのは、ひとえに灰城の投資のおかげだろう。


男は先程よりも更に暗く、更に薬品の匂いが漂う通路を、恐れることも無く堂々と進んでいく。


1番奥の部屋にたどり着くと、そこは巨大なパイプが所々に繋がっており、実験用のベットのようなものがあった。ベットには1人のみすぼらしい男が寝かされており、それを白衣を着た、中年ぐらいの男が弄り回していた。


「ふふ……はは…う~む、この薬品には耐えれたようだが…?」


スーツの男はその異様な光景に構うことなく、白衣の男に話しかける。

「『実験』は順調ですか?博士」

博士と呼ばれた男はスーツ姿の男の声を聞くと手を止め、振り返った。その顔はいかにも研究者と言う風貌をしていた。

「うん?ほほぅ…まさか社長自らおいでになるとは……それで?何用でしょうかね?私はもうモルモットが足りないと報告したのでてっきり持ってきてくれるのかと思ってましたが……?」

白衣の男が丸メガネを光らせて社長と呼ばれた男を睨む。

「ふむ、それは失礼。すぐにでも持ってこさせましょう。さて、私が直接来たのは少々お話がありまして」

「ほぅ…何でしょう?」

「『実験』の成果の報告が未だにされていない……っと言う件を言いに来たのですが。まぁ、その様子を見る限りまだ成果は得られていないようですね」

その様子…とはベットに寝かされた男の事だろう。

「ふむぅ…痛いところつきますな社長?まぁ、投資してもらっている以上成功はさせますよ…『不老不死』の薬をね?」

白衣の男はニヤリと顔を歪ませる。

「ふむ、お分かり頂けてるのでしたら結構です……あぁ、それともうひとつお聞きしたいことがありました」

もうひとつ、とスーツの男は人差し指を立てて改めて白衣の男に聞く。

「我が社のコンピューターに何者かが不正アクセスをしたみたいです。我が社のコンピューターは最新式でセキュリティも万全でした。それを突破するなんて無二の才能の持ち主でしょうね……是非とも我が社に欲しい逸材です……おっと失礼、関心してる場合ではありませんでした」

「ほぅ…それで?会社のデータでも盗み取られたのかね?」

「いえ、特に問題はありませんでした。まぁそのためにフェイク用のデータも忍ばせていたのですが…それすら見破られたのです。そこまでしておきながら、何のデータも盗まないとは、いささか不思議です……」

「それで?社長は私に何が言いたいのかね?」

「あぁ、失礼…単刀直入に聞くべきでした。我が社のコンピューターにアクセスしたのは博士でしょうか?データを見ながらも盗まなかったのは興味がなかったからなのでは?」

そう言われた白衣の男はメガネの奥で呆れたような目をした。

「私が?社長の会社に不正アクセス?はっ…冗談も休み休み言いたまえよ。何故私がそんな面倒な事をしなくてはならないのだ?そんな暇があれば研究を進めるさ」

近くの椅子に寄りかかりながら白衣の男はスーツの男に言い放った。

「ふむ…そうでしたか。失礼しました。実験体の件は私にお任せ下さい。それでは、期待していますよ?」

「……期待された分はやるともさ…」


その言葉を聞いたスーツ姿の男は満足そうな顔をし、扉に向かって歩き始めた。

扉を開けると最後にもう一度スーツの男は白衣の男に向かって話しかけた。


「家族すら犠牲にして研究を続けるその姿勢…私は尊敬致しますよ?『紺道博士』?」

「ふん…所詮家族なんて実験と研究の過程でしかないさ」

「あぁ、そうそう…息子さんは元気に……」

「興味はない」

「失敬。それでは私はこれで」


バタン…と扉が閉まる音が響く。


「……私はいずれ世界初の薬を発明する男だ…家族なんてものにうつつを抜かす訳にはいかんのだよ『灰城社長』」


独り言をつぶやくと紺道博士は再びベットに横たわった男に意識を向けた。




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