アンダーグラウンドゲーム

幽零

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一章「ラビリンスゲーム」

言葉ちゃんの調べ物

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問答無用で連れてこられ、地下施設で狂人達から逃げ、時には人と協力したり裏切ったりしてゴールを目指すデスゲーム、通称『ラビリンスゲーム』

どこにあるのか、どのくらい広いのか、何故行われているのか、それらは全くの謎である………




「って言う都市伝説があるんだってー!ねぇ!言葉ちゃん、気にならない!?」

「うーん、私にはそういうの良く分からないのです~」

紅谷 刃の妹、紅谷 言葉はいつも通り中学校に通っていた。言葉の通っている学校はかなり高い偏差値を誇り、上質な教育、最新の校舎、最高品質の食事などかなり有名な、いわゆるお嬢様学校のようなところなのだ。

それほどの学校なので、学費もバカにならないのだが、紅谷兄妹の保護者であるおじさんは「毎年払うのは面倒だからね」という理由で、既に一括で3年間分の言葉の学費を払っているらしい。


(そろそろおじさんの職業が知りたいのですが…絶対教えてくれないのですー…いつか暴いてやるのですー)

「……て、……ねぇってば!言葉ちゃん聞いてるー?」

「あぁ、失礼。ボーッとしてましたですー」

「もう!言葉ちゃんのお兄さんの事にも関係あるかもしれないんだから!」

言葉に話しかけている女生徒は、いかにも品性方向そうな格好をしている。まさに文系子女、といった感じだ。

(まぁ、噂とか都市伝説好きなのは困ったものなのです~…)

「それでね!言葉ちゃんのお兄さんはもしかしたら都市伝説にある『ラビリンスゲーム』に参加しちゃってるのかも!?」

「うーん…信憑性がないのですー、それにあくまでそれは都市伝説の話であって実在とかしないと思うのですー」

「で、でももしかしたら参加しちゃってるかもよ!?」

「あの兄のことですー…どうせ今頃、やむを得ない理由でスタイルが良く、胸の大きい女性と低身長な女性と一緒にロッカーの中でラブコメ見たいな事をしているのですー」

「え?どういう事?」

「私のただの勘なのですー」

「なぁんだ勘かぁ~」

「そうですーただの勘なのですー」





(ねぇ…紅谷…もう少し離れてくれないかしら!?)

(いや、無理だろこれ以上!多少大きいロッカーとはいえ3人入ってるんだぞ!?)

(いやぁ、まさか『鬼』と三体同時に鉢合わせするとはついてないっスねぇ~)

(べ、紅谷……呼吸……しないで…ちょうだい………アンタ、息が耳に当たるのよ……)

(いや、無理だろ!?と言うかお前こそもう少し離れてくれ!色々当たってんだよ!何かとは言わないけど!)

(んッ///…ちょっと!…喋らないでちょうだい……)

(この2人ラブコメ見たいなことしてるっスね~…)




大当たりだった。




放課後になると帰り支度をすませ、そそくさと機械室へ向かう。機械室は本来、職員しか入れず、扉には専用のIDカードが必要なので生徒はまず入れない……のだが…

「ふーむ…この学校、最新をうたってる割にはセキュリティが甘々なのですー。まぁ、ハッキングもピッキングも簡単なのは助かるのですー」

そう言うと言葉は自分のカバンとポケットに手を突っ込みどこに入ってるんだと言わんばかりの量の機械機器をこれでもかと出した。

「ふむふむ、なるほど、じゃあこれをこうして……ここに電磁波妨害装置をあてて…む?…ほほー、一応は最新をうたっているだけの事はあるのですー…ま、別の手を使うだけなのですがねー」

数分もしないうちに機械室の扉に『unlock』の文字が表示され、開いた。

「ふむ、最新をうたっているのに情けないセキュリティなのですー。ま、とりあえず、おじゃまシマウマ~」

言葉は堂々と機械室に入る。セキュリティをハックしてまで機械室に入ったのは一応は最新機器を取り揃えているPCなどを使うためである。しかし、最新のコンピュータなので、セキュリティは完璧で天才ハッカーでも数時間はかかるファイヤーウォールを実用している……はずなのだが、言葉は答えのわかっているクイズを解くようにスラスラハッキングをはじめ、数分のうちには1台のコンピュータの画面に『ALL CLEAR』の文字が表示される。

「はぁ…たかが『普通』の女子中学生に突破されてどうするんですかー」

言葉の『普通』はどこまでをさすのだろうか……それは誰にも分からない。


最新のセキュリティを突破し、最新のPCのファイヤーウォールをも突破した言葉はある事を調べるために使っている。もちろん履歴を残すようなヘマをする言葉では無い。

「ふむ、兄が行方不明になった場所ですが…その場で行方不明事件が頻発してる訳じゃないのですー……」

言葉はカチャカチャとおそらくこの学校、教師を含めても1番のタイピング速度で調べていく

「誘拐事件…なら犯人さんから今頃身代金よこせわっしょい的な文章が来るはずなのですー…『神隠し』…のワードは信憑性が薄いですね~…」


「裏社会…いや、闇社会とでも言うべきでしょうか?そのような権力暴力万歳なことに巻き込まれている……?無くはないと思うのですー…」

言葉は噂が良くない企業や何か裏でしていると噂のたっている企業を片っ端からピックし、徹底的に調べ始める。企業のコンピューターに次々アクセスし、そこの正社員ですら知らないような情報を引き出していく。

それを繰り返して、たった数分。言葉の目がある企業をピックした。

「……『灰城グループ』?」

灰城グループと言えば大手の中の大手企業。ありとあらゆる事業を総合した、下手な国よりも巨大な企業である。

何故その会社に目が止まったかと言うと、とある施設の維持費と言うものが、何やらおかしく、施設の維持費にしては莫大な資金を投与している。

「うーむ、これ以上はさすがに外部のコンピューターからはアクセスできませんか…」

『灰城企業』に喧嘩を売ることは国に喧嘩を売ることに等しい。

「……うーむ、怪しいには怪しいですが個人で出来る事はここまでですかねー」

さすがに言葉でも国家のような企業に単体で喧嘩を売ることは出来ない。それに、完全に黒と決まった訳ではない。

「ふむ、結局兄は今どこで何してるんでしょうか?何やら胸の大きい女性の腰が抜けてしまって仕方なく背負いながら、どこかへ向かっているものの、背中に柔らかい感触を感じで集中できないようなことになってる気がするのですー」

まぁ、勘ですけど。と付け足し、履歴を消去して機械室を出る。

「あ、今日は新作の抹茶タピオカミルクティーの発売日でしたのですー。急がなくては」

言葉は足取りルンルンで下駄箱へと向かう。




「なんでこんな事に……というかなんでロッカーに居ただけで腰が抜けるんだよ…」

「う、うるさいわねッ!…仕方ないじゃないの!紅谷が息を止めないから!」

「いや!あの状況で息止めろとか死ねって言ってるようなもんだろ!?」

「さ、あと少しッスよ~…ん?紅谷後輩~なんで顔が赤いんですか~?」

「何でもないですよ…」


(考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな考えるな)



紅谷は背中に当たる柔らかい感触を必死に誤魔化しながら、13番非常口の部屋へ向かっていた。





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