アンダーグラウンドゲーム

幽零

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一章「ラビリンスゲーム」

また遭遇

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「で、この道向こうに行けば良いよ~ん」

黄島は相変わらずナイフを手元で遊ばせながら横を歩いている。

「アンタさぁ、ここまで道とか覚えておいて、なんでここから出なかった訳?」

「んぁ~?だってここから出なければさぁ、警察とかから逃げなくても『趣味』を楽しめるじゃ~ん?」

そういうと、黄島は親指を立てて自分の首を一文字になぞった。コイツの『趣味』はまぁ、言うまでもなく殺人だろう。

「サイコパスのアンタに聞くのもなんだけどさぁ、なんで人殺したいとか思った訳?」

そう聞くと黄島は少し考えた後に話し始めた。

「ん~?そうだな~…包丁ってさぁ、色々切れるじゃん?牛肉だったり豚肉だったり。それでねー、興味持っちゃったのよー…人を切ったらどんな感じなのかってさ」

黄島は笑いながら話した。やっぱりコイツヤバい奴だわ…

「はぁ…なんでコイツを連れてこうとしたのかしら…」

そんな事を言っていると目の前に狂人が2人出現。相変わらず変なものを被っている。

「ホラ、黄島出番よ。さっさとやりなさい」

「はいはーい…いやぁ、サイコパスに命令できるの土田さんぐらいだよね~…」

そういうと黄島は自慢のナイフであっという間に狂人の首を切り落とした。

「はーい、一丁あがり~」

「アンタ清々しいくらい躊躇いなくやるわよね…」

「いやー躊躇ってもいい事ないしね☆」

そんな会話をしていると、奥からカツン…カツンと足音が聞こえた。

「あらあら?そこにいらっしゃるお2人はまともな人でしょうか?」

姿を見せたのは何故かメイド服を来ている女子だった。

「あぁ、よかった。久々にちゃんとした方にお会い出来ました」

その女子は顔はなんともないが、両腕両足に包帯が巻かれており、痛々しい傷が所々にあった。そして手には……何故かチェーンソー…

「あ、大丈夫ですよ。危害は加えませんからね?」

ニコリと少女が笑う。血の着いたチェーンソー持った子に言われても説得力ないのよ…

「じゃあ、とりあえずそれを置いてもらえるかしら?」

「あ、はい」

少女はすぐにチェーンソーを床に置いた。本当に危害を加える気はないらしい。

とりあえず、黄島がサイコパスって事は伏せといた方が良いかしら?怯えてしまうでしょうし。何よりこの子も中学生ぐらいに見えるし……なんでメイド服着てるのかは知らないけども…

「お嬢ちゃん名前はなんて言うのー?」

「アンタさぁ…そういうのは自分から名乗るもんでしょ…」

「あ、紫暮(シグレ)です。中学を卒業して、色々事情がありまして、ある家のメイドをしておりました」

どうやら本当に中学生だったらしい。とういか卒業してメイドって…どんな事情よ…

「へ~、お嬢ちゃんも大変だったんだねー。俺は黄島って言うんだー。あ、ちなみにサイコパスだから☆」

……コイツ言いやがった…

「え!サイコパスさんなんですか……」

紫暮と名乗った少女は驚いた表情になる

「アンタねぇ…この子驚いてるじゃないの…もう少しわきまえなさいよ…」

「あ、ごめーん。俺そういうの分からないんだ☆」

「全く、とりあえず紫暮ちゃん?だっけ?アタシは土田。コイツヤバいやつだから気を付けて……」

紫暮と名乗った少女の方を見ると、何故か顔を赤らめてウットリした表情になっていた。するとフラフラ黄島の方に歩き出した。

「ん~?紫暮ちゃんどしたの?あ、もしかして殺して欲しいとか?」

黄島は両腕をブラブラさせながらケラケラ笑っている。

「いえ、殺して欲しいとかはないんですけど…」

紫暮は黄島の首元に両腕を回して抱きついた。

「痛めつけて欲しいな、とは思ってます…」

そういうと紫暮ちゃんはウットリした表情のまま、なにかに取り憑かれているような笑顔を見せた。

「はえ~ん?」

珍しく黄島はポカンとした表情になっている。大丈夫黄島、アタシも今多分同じ顔してる。

「えーと、聞き間違いかしら…?痛めつけて欲しいって言った?」

再度確認してみると紫暮ちゃんはアタシの方を振り向き一言。

「はいぃ…死にたくは無いですけど、殴ったり刺したり噛んだりして欲しいんです~」

紫暮ちゃんは赤らめた顔のままハッキリ答えた。

「アハッ!紫暮ちゃん変わってるねぇ~?なんで痛めつけて欲しいの~?」

黄島は目を輝かせながら聞いた。頭のおかしい同類が見つかって嬉しいのだろうか?

「え?なんでって…痛いって…気持ちイイですよね?」

……今まで経験した事の無いような寒気が全身を走った。

「えーと、つまるところ…Mって事かしら?」

身体中を走る寒気を感じながらそういうと紫暮は黄島に抱きついたまま答えた。

「そうなんでしょうか?まぁ、なんでも良いですけど…」

「えーと、紫暮ちゃん?一旦離して?暑い…」

メイド服が暑かったようで、黄島は汗をかいていた。紫暮ちゃんは素直にすいませんと一言言って黄島から離れた。

「ま、とりあえず土田さーんこの子連れてこ~?」

「はぁ!?なんでよ」

「えー、だってこんな少女を置いてく訳には行かないでしょ~?それにホラ、Mなら土田さんの事襲ったやつみたいなのに狙われるかもだし」

黄島が面白そうに話す。まぁ、一理あるかもしれないわね。

「紫暮ちゃんはどうしたいのかしら?」

話しかけると、紫暮は置いていたチェーンソーを持ち上げて答えた。

「1人だと寂しいので…連れて言って欲しいです…」

まぁ、当然の反応だろう。仕方ない…連れていくか。それにしてもなんでアタシの周りには変態ばっかり集まるのかしら……はぁ……

「分かったわ、ただひとつだけ言っておくわ。あの男にはあんまり近づかないこと!良いわね?」

「えー…酷くな~い?」

「一応分かりました…」

そう答えた紫暮ちゃんはあからさまにガッカリしている。

「アンタ、この子に変な事したらぶっ飛ばすわよ」

言うと、黄島はあのさぁ…と反論し始めた。

「俺はだから死体でしか……」

「ハイハイ分かったわ」

「俺の扱い雑じゃな~い?」

とりあえず、紫暮と名乗るマゾ少女と一緒に行動する事になった。はぁ……なんか不安要素が増えたわ……

チェーンソーを両手で持ってトテトテ歩く姿はとても可愛らしいけど…やっぱり気になるのは、両腕両足の包帯……虐待かしら…

(土田さん土田さん…)

そんな事を考えていると隣にいた黄島が耳打ちしてきた。

(何よ?)

(俺の勘だけどねー…あの子、多分生い立ちのせいで歪んじゃった子だね)

黄島は珍しく神妙な顔で話している。

(なんでアンタにそんな事わかるのよ?)

(いや、何となくだけどさ?あの子に過去に色々あった子じゃあないかなーって思うのよ)

(とりあえず、あの子に過去の事聞くのはやめとけって事かしら?)

(ま、そういう事~)

伝えたい事が伝わったからか、黄島は満足したような顔でまた歩き出した。


生い立ちのせいで歪んだ…か……

右側だけ伸ばした前髪に隠れた右目の辺りがズキズキ痛み始める。

こんな小さな子に性格が歪む程の事があったのかしら?

「思い出したくもない過去…か…」

「ん~?土田さんなんか言った?」

「別になんでもないわ」

2人に見られないように右側の顔を抑える。



(隠してるつもりなのかな~、土田さん)

サイコパスはわかってても言葉に出さなかった。彼女の顔の右側…前髪で隠れされたその奥に、火傷の後がある事を…





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