アンダーグラウンドゲーム

幽零

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一章「ラビリンスゲーム」

ラビリンスゲーム(2)

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「うぅん、何でこんな事に…」

いつも通り学校から帰って来ようと思ったら何か知らない人たちに囲まれて連れ去られてしまった。あんなに怖い思いはこの先しないと思う。いやそう思いたい…

「泣き言を言っても始まりません。とりあえず、このゲームと言うものをクリアすればいいようです。チュートリアルもクリアしましたし、なんとかなるでしょう」

「うぅん…でもぉ…紺道(コンドウ)さぁん…」

紺道と言われた青年はメガネをクイっとあげるとニコリと笑う。

「大丈夫ですよ、桃井(モモイ)さん。チュートリアルのような敵が出てきたらまた私が倒しますから」

紺道はそう言うと、コートのポケットからリボルバー式のピストルを出し、残りの球数を数え始めた。

チュートリアルは迷宮の中にいる怪物を倒すと言うものだった。迷宮は無機質なコンクリートで作られており、かなり不気味だった。怪物と言うものは頭に紙袋をかぶった人間だった。私が取り乱していると紺道さんが部屋から持ってきたピストルで撃ってくれた。

「うん、たしかに強力な武器ではありますが、残りの弾は5発しか無いみたいです。慎重に使いましょう」 

弾数を数え終わった紺道はカチャリとピストルをしまうと再び歩き始めた。

「私…足手まといじゃないですかぁ…??」

桃井は涙目で紺道の裾につかまる。その様子を見た紺道は再びニコリと笑うと桃井の頭を撫でながら、穏やかな口調で話し始める。

「大丈夫です。せっかくここまで生き残ったのですから、一緒に生き残りましょう」

紺道は話し終えると桃井に自分の裾を掴ませて歩き始めた。紺道さんはどんな時も冷静だし、一緒にいれば本当に生き残れる気がする。



(ふむ、桃井さんは大分弱ってしまっているな…確か閉鎖的な場所では人にかかるストレスは通常の数倍とかだったか。そろそろ休憩を挟んだ方がいいだろうか…)

…それにしても、まさか自分が拳銃で人を撃つ時が来るとは思わなかった。チュートリアルで出てきた怪物というのは、明らかに人だった。ただ、意思疎通は出来そうになかったところを見るに、狂人だったのだろう。たまたま急所に当たって1発で仕留められたのは幸運だった。

「大丈夫ですか?桃井さん?まだ歩けますか?」

「は、はい!まだ大丈夫です」

「そっか、もう少しだけ、頑張ろう」

(よかった、まだ大丈夫そうだ。しかし、本番だから障害の数が増えるのかと思ったら、全然出てこないな…)

襲われないに越したことはないが、警戒を怠る訳にはいかない。かと言ってずっと警戒していてはこちらが参ってしまう。

そんな事を考えながら歩いていた時、奥から声が聞こえた。私は桃井さんに静かに!っと人差し指を唇に当てサインをした。桃井さんは理解してくれたみたいでコクンと頷いた。

「あーあー、あァァァァ…あー」

この訳の分からない声、間違いない。チュートリアルでもいた狂人だ。声の方向からするに、曲がり角の先にいるようだが、下手にこちらから出る訳には行かない。

「あー……ァァァ…あー」

しかし、やり過ごそうと思ったら段々と声が近付いて来る。接近戦になる前にこちらから仕掛けるか…!

(桃井さんはここにいて、接近戦になる前にこちらから仕掛けようと思う)

(わかりました…無事でいてください…)

桃井さんの言葉に頷くと僕は勢い良く角から出た。人間なら狙うは頭!

…しかし撃てなかった。その狂人は頭を全て覆うように鉄兜を被っていた。

(しまったッ!!チュートリアルで出た奴らしかいないと思い込み油断していたッ!!)

狂人はこちらに気付くとダッシュで向かってくる。

(まずい…っ!)

追いつかれるかと思った時、横から巨大な鉄塊のようなものが飛び出してきた。それは狂人の頭を潰し、あっという間に息の根を止めた。よく見ると、その巨大な鉄塊は赤毛の青年が握っていた。どうやら助かったらしい。

「おぉ~お見事だねージン君!流石だよ~」

「白石さん、今まで通り紅谷でいいですよ…名前で呼ばれた事はほとんどないので違和感しかないです」

あとから来た女性に一言返すと、青年は鉄塊を持ち上げ肩に乗せた。

「で、大丈夫ですか?見たところ襲われそうになっていたみたいでしたが?」

「あ、あぁ助かったよ、ありがとう…」

この赤毛の青年はまるでヒーローのように現れた。





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