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5話
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女性の名前は「サーニャ」と言うらしい。この人は世界を見て周りたくなったらしく、僕らの旅について行きたいと言う事だが……
「えーと、あのご老人から許可は頂いているんですか?」
「はい!もちろん!」
うーん、許可を頂いているなら断る理由もないけど…
「ノゼ様、ただでさえお金に余裕がない旅です。これ以上、人を増やす余裕があるんですか?」
ネイムがムスーっとしながら異を唱える。なんだろう、ここまで嫌がる理由があるのかなぁ…
……ん?待てよ?ネイムはあの賭け事で大勝ちしたから金銭的な余裕はあるんじゃないか?
「ネイム、君は賭け事に大勝ちしたんだよね?じゃあしばらくお金に余裕はあるんじゃないかな?」
そういうとネイムはギクッとしたような表情になった。
「あ、あれはたまたまです!毎回余裕がある訳じゃないでしょう!」
「んー、そうかなぁ…」
僕とネイムが言い争っていると、サーニャが話しかけてきた。
「えっと、私は迷惑にならないように頑張ります!お金も少しなら持ってきましたから」
そういうとサーニャは少し大きめの袋を出した。中は通貨だろう。
「あ、じゃあ問題ないんじゃないかな?」
「で、でも!この人何が出来るんですか!自分の事は自分で守れるぐらい強くないとダメです!」
ネイムがここまで反発するのは珍しいなぁ…何がそこまで嫌なんだろう。
「私は地図が読めますし作れます!」
……ん?待て待て、それは大分助かる能力じゃあないか?
この時代、地図を作れる人なんてそうそういない。ただの町娘かと思っていたが、とんでもない能力を持っていたものだ。有能な人材はいるに越したことはない。
「ネイム、この人連れて行こう。地図を作れる人なんて滅多にいないよ」
「う、嘘かも知れません!」
「嘘じゃないです!お爺様に習いました!」
あのご老人もそんな特技があったとは。人間どんな特技があるか分からないものだ。
……にしても、ネイムもサーニャさんも譲らないなぁ…
「はぁ、僕は荷物を外に出しておくよ。その後、酒場にでもいるから、2人で話し合って」
僕は荷物を持つとスタスタと逃げるように酒場に向かった。
ノゼがいなくなったあとの部屋は殺気が充満していた。
「で、サーニャさんでしたっけ?何故そんなに私たちについて行きたいんですか?」
何となくですが、私はこの人の考えてる事が分かります。そりゃ街を救った英雄ですから気になるのは当然でしょう。しかし、それとこれとは話が違います。
「で、ですから私はこの世界をよく見てみたいと思いまして…」
「じゃあ他にもドリフターの方はいるでしょう?何故私たちなんですか?」
私がこういうと、サーニャさんは焦り始めました。やはりそういう事なんでしょうね。
「えぇと……わ、私は!あの方と一緒なら安心できると思ったからです!」
へぇ、そう来ますか………ならノゼ様は弱いと嘘を言った方が……
…いや!それはダメです!ノゼ様を陥れるような事は絶対言えません!!クッ…この人はこれを見透かして……?だとしたらとんでもないやり手です……!
「そ、そうです、ノゼ様は強いです。恐らく強力な『世界樹の勢力』相手でも勝つことはできるぐらい強いでしょう」
「え!そんなに強いんですか!」
「も、もちろん…それとは別にあの方は優しさも兼ね備えておりますので……」
あぁ…ノゼ様の良い所を話し始めたらキリがありません……
こうして一応ペースを支配したサーニャさんの作戦勝ち(恐らく無意識)で女の戦いは幕を閉じたのである。
「で、ノゼ様?何故そんなに金貨の入った袋を抱えているのです?」
ネイムがノゼを呼びに行くと、彼は酒場で申し訳なさそうにに椅子に座っており、向かいに座っている大きな体格の男はぐしぐしと泣きながらテーブルに突っ伏している。よく見るとその後ろにも似たような人が泣きながらうつ伏せに倒れている。……どう言う状況ですか……
「えーと…ノゼ様?これはどう言う……」
ノゼは申し訳なさそうに笑いながら話し始めた。
「えーと、この人達はこの街の自警団の人達みたいで、僕がこの街の英雄扱いされてるとか何だとかで腕試しに腕相撲って流れになって…」
「ん?待ってください。自警団の方達がいたのであれば何故あの時来なかったんです?」
ネイムがこう言うと、サーニャが答えた。
「あぁ、ここ最近街の近くに『世界樹の勢力』が接近してきてて、それを討伐するために彼らは遠征に行ってたんです。なのでノゼさんの力を借りるしかなくて…」
「なるほど、そういう事でしたか。それで何故この方達はこんなに打ち負かされたような体勢になってるんです?」
「いや、それがね、僕が思ってたよりだいぶ弱くて…」
ノゼは、あははと苦笑いしながら話した。
「1人目の人は普通にやったら体ごと投げ飛ばしちゃって、2人目から人差し指と中指の2本でやってたんだけど、それでも勝っちゃって…最後の5人目に小指1本でやったんだけど、それでも勝っちゃってね…」
それで、気付けばこんな事に…とノゼは自分に起きた事柄を丁寧に話した。
「えーと、事の成り行きはわかりましたが、それで何故金貨袋がこんなに?」
どうやったら腕相撲で金貨袋が貰えるのだろうか……
「あぁ、なんかこの人達、負けたのが悔しかったらしくて、金貨袋ひとつでもう1回やってくれって言われて…」
「あぁ、それでこんなに…」
結論、自警団の皆様は有り金全てをノゼに持って行かれたらしい。自分の力の範囲を知る事も出来ないのですか…情けない。
「まぁ、ホラひとつは返してあげますから、元気出してください」
ノゼはひとつの袋を自警団の団長らしき人物に渡すと、彼らはビィビィ泣きながらありがとうございます!っと暑苦しくお礼をした。
酒場を後にし、荷物を持ってやっとこの街を出る。
「それで、君たちの話し合いに決着は着いたのかな?」
「はい、とりあえずこの方を連れていく事にします」
「お役に立てるよう頑張ります!」
「ま、それなら良かったよ、宜しくねサーニャさん」
名前を呼ばれ、サーニャは顔が赤くなる。その様子を見逃さなかったネイムは小声で一言
「ノゼ様は渡しませんからね」
その人事でサーニャはビクッとしたが「な、何のことでしょう?」と愛想笑いを浮かべた。
仲間が1人増え、彼らはこの街を後にした。
「えーと、あのご老人から許可は頂いているんですか?」
「はい!もちろん!」
うーん、許可を頂いているなら断る理由もないけど…
「ノゼ様、ただでさえお金に余裕がない旅です。これ以上、人を増やす余裕があるんですか?」
ネイムがムスーっとしながら異を唱える。なんだろう、ここまで嫌がる理由があるのかなぁ…
……ん?待てよ?ネイムはあの賭け事で大勝ちしたから金銭的な余裕はあるんじゃないか?
「ネイム、君は賭け事に大勝ちしたんだよね?じゃあしばらくお金に余裕はあるんじゃないかな?」
そういうとネイムはギクッとしたような表情になった。
「あ、あれはたまたまです!毎回余裕がある訳じゃないでしょう!」
「んー、そうかなぁ…」
僕とネイムが言い争っていると、サーニャが話しかけてきた。
「えっと、私は迷惑にならないように頑張ります!お金も少しなら持ってきましたから」
そういうとサーニャは少し大きめの袋を出した。中は通貨だろう。
「あ、じゃあ問題ないんじゃないかな?」
「で、でも!この人何が出来るんですか!自分の事は自分で守れるぐらい強くないとダメです!」
ネイムがここまで反発するのは珍しいなぁ…何がそこまで嫌なんだろう。
「私は地図が読めますし作れます!」
……ん?待て待て、それは大分助かる能力じゃあないか?
この時代、地図を作れる人なんてそうそういない。ただの町娘かと思っていたが、とんでもない能力を持っていたものだ。有能な人材はいるに越したことはない。
「ネイム、この人連れて行こう。地図を作れる人なんて滅多にいないよ」
「う、嘘かも知れません!」
「嘘じゃないです!お爺様に習いました!」
あのご老人もそんな特技があったとは。人間どんな特技があるか分からないものだ。
……にしても、ネイムもサーニャさんも譲らないなぁ…
「はぁ、僕は荷物を外に出しておくよ。その後、酒場にでもいるから、2人で話し合って」
僕は荷物を持つとスタスタと逃げるように酒場に向かった。
ノゼがいなくなったあとの部屋は殺気が充満していた。
「で、サーニャさんでしたっけ?何故そんなに私たちについて行きたいんですか?」
何となくですが、私はこの人の考えてる事が分かります。そりゃ街を救った英雄ですから気になるのは当然でしょう。しかし、それとこれとは話が違います。
「で、ですから私はこの世界をよく見てみたいと思いまして…」
「じゃあ他にもドリフターの方はいるでしょう?何故私たちなんですか?」
私がこういうと、サーニャさんは焦り始めました。やはりそういう事なんでしょうね。
「えぇと……わ、私は!あの方と一緒なら安心できると思ったからです!」
へぇ、そう来ますか………ならノゼ様は弱いと嘘を言った方が……
…いや!それはダメです!ノゼ様を陥れるような事は絶対言えません!!クッ…この人はこれを見透かして……?だとしたらとんでもないやり手です……!
「そ、そうです、ノゼ様は強いです。恐らく強力な『世界樹の勢力』相手でも勝つことはできるぐらい強いでしょう」
「え!そんなに強いんですか!」
「も、もちろん…それとは別にあの方は優しさも兼ね備えておりますので……」
あぁ…ノゼ様の良い所を話し始めたらキリがありません……
こうして一応ペースを支配したサーニャさんの作戦勝ち(恐らく無意識)で女の戦いは幕を閉じたのである。
「で、ノゼ様?何故そんなに金貨の入った袋を抱えているのです?」
ネイムがノゼを呼びに行くと、彼は酒場で申し訳なさそうにに椅子に座っており、向かいに座っている大きな体格の男はぐしぐしと泣きながらテーブルに突っ伏している。よく見るとその後ろにも似たような人が泣きながらうつ伏せに倒れている。……どう言う状況ですか……
「えーと…ノゼ様?これはどう言う……」
ノゼは申し訳なさそうに笑いながら話し始めた。
「えーと、この人達はこの街の自警団の人達みたいで、僕がこの街の英雄扱いされてるとか何だとかで腕試しに腕相撲って流れになって…」
「ん?待ってください。自警団の方達がいたのであれば何故あの時来なかったんです?」
ネイムがこう言うと、サーニャが答えた。
「あぁ、ここ最近街の近くに『世界樹の勢力』が接近してきてて、それを討伐するために彼らは遠征に行ってたんです。なのでノゼさんの力を借りるしかなくて…」
「なるほど、そういう事でしたか。それで何故この方達はこんなに打ち負かされたような体勢になってるんです?」
「いや、それがね、僕が思ってたよりだいぶ弱くて…」
ノゼは、あははと苦笑いしながら話した。
「1人目の人は普通にやったら体ごと投げ飛ばしちゃって、2人目から人差し指と中指の2本でやってたんだけど、それでも勝っちゃって…最後の5人目に小指1本でやったんだけど、それでも勝っちゃってね…」
それで、気付けばこんな事に…とノゼは自分に起きた事柄を丁寧に話した。
「えーと、事の成り行きはわかりましたが、それで何故金貨袋がこんなに?」
どうやったら腕相撲で金貨袋が貰えるのだろうか……
「あぁ、なんかこの人達、負けたのが悔しかったらしくて、金貨袋ひとつでもう1回やってくれって言われて…」
「あぁ、それでこんなに…」
結論、自警団の皆様は有り金全てをノゼに持って行かれたらしい。自分の力の範囲を知る事も出来ないのですか…情けない。
「まぁ、ホラひとつは返してあげますから、元気出してください」
ノゼはひとつの袋を自警団の団長らしき人物に渡すと、彼らはビィビィ泣きながらありがとうございます!っと暑苦しくお礼をした。
酒場を後にし、荷物を持ってやっとこの街を出る。
「それで、君たちの話し合いに決着は着いたのかな?」
「はい、とりあえずこの方を連れていく事にします」
「お役に立てるよう頑張ります!」
「ま、それなら良かったよ、宜しくねサーニャさん」
名前を呼ばれ、サーニャは顔が赤くなる。その様子を見逃さなかったネイムは小声で一言
「ノゼ様は渡しませんからね」
その人事でサーニャはビクッとしたが「な、何のことでしょう?」と愛想笑いを浮かべた。
仲間が1人増え、彼らはこの街を後にした。
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