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穢神戦争編
61話
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最後の一時、谷透達は御堂にいた。
「神守達の手前、ああは言ったが、実際全員で打って出る訳にも行かないな。巫女や非戦闘員は三ツ谷で徹底防戦だ。盾岩の結界も正直数で押されたら、数体は入ってきちまうだろう」
「……待て、白獅子。我の結界の特徴を何故知っている?」
盾岩が谷透に問うと、本人は何にでもない風に答える。
「何も不思議じゃないだろ。盾岩の結界が完璧で破れないならそもそも巫女の補助はいらない。網戸のように隙間のようなものがあるんだろ?巫女に補助させていたのはその隙間を埋める為だ。そもそもその隙間も驚くほど小さいが、相手は元々神だ。数で来られたら持たないから補強してたんだろ?」
「………」
この場にいる三ツ谷以外のメンバーは、口が開いていた。
「……シューヤは脳筋そうに見えて、案外頭が良いんじゃよな」
呟く紅葉を置いて、谷透は話を続ける。
「だが、出来れば一ノ門へ殴り込む戦力は減らしたくない。だから少数精鋭をここに駐屯させる」
「……具体的には?」
結が聞くと、谷透は元々決めていたのかスラスラと答えた。
「蒼糸含む無神機関の部隊。そして二ヶ宮の神守数人と満だ」
「……主、お言葉なんだけど、なんで満を置いてくって感じぃ?」
「そもそも大怪我しながらこっちに逃げてきたんだ。流石に連れて行けない。それに蒼糸、お前は満と長いんだろ?」
「いや~まぁ~そうだけど~」
満更でも無さそうに認める蒼糸。
「さて、会議は終わりだ。1時間後に一ノ門へ進撃する」
出撃する神守達が隊列を組んでいる頃、仄は巫女達のいる部屋に集まっていた。そこへ紅葉がひょこっと現れる。
「おや?仄…」
「ん~?あ~紅葉様じゃあないですか~」
「妾や武神もここを守る役目じゃからな。して仄……お主がそんな物を着ているのは珍しいの」
紅葉がそう言うと、仄はえへへぇ~と顔を緩ませ、首元をぎゅっと手繰り寄せる。
仄は、一回り大きく少しぶかぶかしているどこか見覚えのあるパーカーを、いつもの服の上から着ていた。
三ツ谷神社は決して狭くは無いはずなのだが、流石にここまで人が集まると手狭に感じる。
そんな中、三ツ谷神社の大堂で3人の武神と紅葉、そして三ツ谷神主、二代目白獅子が先頭に立ち、その後には六武衆を含む全ての戦力が控えていた。
谷透は決戦に向けてか、黒いインナーの上から純白の外套を羽織り、封神剣を腰にさしていた。いつものジーンズではなく、なんと袴だ。それも戦闘の邪魔にならないようなデザインで、何処と無く白獅子の着ていた軍服に似ている。その様子を見た紅葉が谷透に尋ねる。
「おや?シューヤよ、いつもの『ぱぁかー』はどうしたのじゃ?」
谷透は首を回しながら答える。
「あぁ、今は手元に無い」
「お~、たにとーなんだその格好!?キマッてるじゃーん!」
「いや~、やっぱり旦那は白獅子様と同じようなデザインの服が似合うって思ってたんですわ~!あっしゃの目に狂いは無かったんで」
「……四方、まさか貴方が谷と…白獅子様の和装を造ったんですか?」
「まぁ2日目もあれば出来ますわ。巫女や武神様方に手伝って貰いましてね。あぁ見えて旦那の和装、あれ普通の霊装とか妖刀ぐらいなら傷一つ付かねぇ代物に仕上げたんですわ~」
「あぁ、流石私の谷透様…いえ、今は白獅子様でしたね…あぁ…なんて神々しい…私は…真陽は何時でも貴方様のお側に…」
「はーいマヒルンストーップ。脱がないでにぃ~」
「……いつの間にやら、私も六武衆か。初めはお前を微塵も信用していなかったが……今は違う。私を失望させるなよ…」
「六武衆筆頭 『二代目白獅子』」
「わかってるさ」
そのまま谷透は控えた神守達の方へ向き直る。
「……改めて、俺に着いてきてくれた君らには感謝する。その上で、だ」
谷透は封神剣を高く掲げる。
「この俺……いや、白獅子の名にかけて宣言する」
天にいる白獅子様に向けるように。
「ここにいる誰一人、俺が死なせない」
歓声。そして好戦的な雄叫び。
「今これより、我ら神守ッ!巨悪の居座る一ノ門に向けて進撃するッ!」
純白の外套を翻し、声たかだかに叫ぶ。
「問おうッ!神社は弱いかッ!?」
「「「「「否ッ!!」」」」」
「我らは弱いかッ!?」
「「「「「否ッ!!」」」」」
「敵は強いかッ!?」
「「「「「否ァッ!」」」」」
「………宜しい」
静まり返る神社の中、背後に立つ武神の方へと向き直る。
「……武神の御三方。我ら神の剣。この白獅子に命じるは何某か」
阿剣が、谷透の正面に立ち告げる。
「しからば、『武神』阿剣が命ずる。穢れた神、その諸悪たる敵を討て」
……今まで、たくさんの事があった。
家族を奪われ、『妖刀狩り』となった。
紅葉を助けて、『穢祓い』になった。
神なんか信じていなかった。
俺一人の命など、何時でも捨てれる。そんな思いが何処かにあったのは間違いない。
「たにとー、アタシも頑張るけど、たにとーも死ぬなよ~?まだ色々やりたい事があるんだにぃ~」
「貴方を白獅子と言うにはまだ慣れませんが…貴方がいなければきっと神社は崩壊していた。生きて帰りましょう。白獅子様」
「貴方様の言葉に、どれだけ救われたか。私は、貴方様無き世界など、もう考えられません」
「思えばあっしゃと旦那が出会ったのは、白獅子様との邂逅でしたわ。それが今や旦那が白獅子の名を背負っている。感慨深いですわ~。この先、あっしゃは旦那以外に仕えようと思うお相手がいねぇんで。死なないで下さいよ?」
「お前に対して劣等感を抱いていた。この際言うが、お前の事が嫌いだったさ。だが、同時に羨ましくもあった。自由に振る舞い、何をも恐れないその生き方に、きっと私は嫉妬していたんだろう。野蛮人と散々言ってきたが、訂正しよう。生き残るぞ『谷透 修哉』」
だが……もう俺の命は、俺一人のものじゃなくなったらしい。振り返れば、沢山の仲間がこちらを見ている。それは、自分が歩いてきた軌跡に他ならない。
谷透は、阿剣の前で片膝をつく。
「『神様の仰せのままに』」
英雄は、立ち上がった。
「神守達の手前、ああは言ったが、実際全員で打って出る訳にも行かないな。巫女や非戦闘員は三ツ谷で徹底防戦だ。盾岩の結界も正直数で押されたら、数体は入ってきちまうだろう」
「……待て、白獅子。我の結界の特徴を何故知っている?」
盾岩が谷透に問うと、本人は何にでもない風に答える。
「何も不思議じゃないだろ。盾岩の結界が完璧で破れないならそもそも巫女の補助はいらない。網戸のように隙間のようなものがあるんだろ?巫女に補助させていたのはその隙間を埋める為だ。そもそもその隙間も驚くほど小さいが、相手は元々神だ。数で来られたら持たないから補強してたんだろ?」
「………」
この場にいる三ツ谷以外のメンバーは、口が開いていた。
「……シューヤは脳筋そうに見えて、案外頭が良いんじゃよな」
呟く紅葉を置いて、谷透は話を続ける。
「だが、出来れば一ノ門へ殴り込む戦力は減らしたくない。だから少数精鋭をここに駐屯させる」
「……具体的には?」
結が聞くと、谷透は元々決めていたのかスラスラと答えた。
「蒼糸含む無神機関の部隊。そして二ヶ宮の神守数人と満だ」
「……主、お言葉なんだけど、なんで満を置いてくって感じぃ?」
「そもそも大怪我しながらこっちに逃げてきたんだ。流石に連れて行けない。それに蒼糸、お前は満と長いんだろ?」
「いや~まぁ~そうだけど~」
満更でも無さそうに認める蒼糸。
「さて、会議は終わりだ。1時間後に一ノ門へ進撃する」
出撃する神守達が隊列を組んでいる頃、仄は巫女達のいる部屋に集まっていた。そこへ紅葉がひょこっと現れる。
「おや?仄…」
「ん~?あ~紅葉様じゃあないですか~」
「妾や武神もここを守る役目じゃからな。して仄……お主がそんな物を着ているのは珍しいの」
紅葉がそう言うと、仄はえへへぇ~と顔を緩ませ、首元をぎゅっと手繰り寄せる。
仄は、一回り大きく少しぶかぶかしているどこか見覚えのあるパーカーを、いつもの服の上から着ていた。
三ツ谷神社は決して狭くは無いはずなのだが、流石にここまで人が集まると手狭に感じる。
そんな中、三ツ谷神社の大堂で3人の武神と紅葉、そして三ツ谷神主、二代目白獅子が先頭に立ち、その後には六武衆を含む全ての戦力が控えていた。
谷透は決戦に向けてか、黒いインナーの上から純白の外套を羽織り、封神剣を腰にさしていた。いつものジーンズではなく、なんと袴だ。それも戦闘の邪魔にならないようなデザインで、何処と無く白獅子の着ていた軍服に似ている。その様子を見た紅葉が谷透に尋ねる。
「おや?シューヤよ、いつもの『ぱぁかー』はどうしたのじゃ?」
谷透は首を回しながら答える。
「あぁ、今は手元に無い」
「お~、たにとーなんだその格好!?キマッてるじゃーん!」
「いや~、やっぱり旦那は白獅子様と同じようなデザインの服が似合うって思ってたんですわ~!あっしゃの目に狂いは無かったんで」
「……四方、まさか貴方が谷と…白獅子様の和装を造ったんですか?」
「まぁ2日目もあれば出来ますわ。巫女や武神様方に手伝って貰いましてね。あぁ見えて旦那の和装、あれ普通の霊装とか妖刀ぐらいなら傷一つ付かねぇ代物に仕上げたんですわ~」
「あぁ、流石私の谷透様…いえ、今は白獅子様でしたね…あぁ…なんて神々しい…私は…真陽は何時でも貴方様のお側に…」
「はーいマヒルンストーップ。脱がないでにぃ~」
「……いつの間にやら、私も六武衆か。初めはお前を微塵も信用していなかったが……今は違う。私を失望させるなよ…」
「六武衆筆頭 『二代目白獅子』」
「わかってるさ」
そのまま谷透は控えた神守達の方へ向き直る。
「……改めて、俺に着いてきてくれた君らには感謝する。その上で、だ」
谷透は封神剣を高く掲げる。
「この俺……いや、白獅子の名にかけて宣言する」
天にいる白獅子様に向けるように。
「ここにいる誰一人、俺が死なせない」
歓声。そして好戦的な雄叫び。
「今これより、我ら神守ッ!巨悪の居座る一ノ門に向けて進撃するッ!」
純白の外套を翻し、声たかだかに叫ぶ。
「問おうッ!神社は弱いかッ!?」
「「「「「否ッ!!」」」」」
「我らは弱いかッ!?」
「「「「「否ッ!!」」」」」
「敵は強いかッ!?」
「「「「「否ァッ!」」」」」
「………宜しい」
静まり返る神社の中、背後に立つ武神の方へと向き直る。
「……武神の御三方。我ら神の剣。この白獅子に命じるは何某か」
阿剣が、谷透の正面に立ち告げる。
「しからば、『武神』阿剣が命ずる。穢れた神、その諸悪たる敵を討て」
……今まで、たくさんの事があった。
家族を奪われ、『妖刀狩り』となった。
紅葉を助けて、『穢祓い』になった。
神なんか信じていなかった。
俺一人の命など、何時でも捨てれる。そんな思いが何処かにあったのは間違いない。
「たにとー、アタシも頑張るけど、たにとーも死ぬなよ~?まだ色々やりたい事があるんだにぃ~」
「貴方を白獅子と言うにはまだ慣れませんが…貴方がいなければきっと神社は崩壊していた。生きて帰りましょう。白獅子様」
「貴方様の言葉に、どれだけ救われたか。私は、貴方様無き世界など、もう考えられません」
「思えばあっしゃと旦那が出会ったのは、白獅子様との邂逅でしたわ。それが今や旦那が白獅子の名を背負っている。感慨深いですわ~。この先、あっしゃは旦那以外に仕えようと思うお相手がいねぇんで。死なないで下さいよ?」
「お前に対して劣等感を抱いていた。この際言うが、お前の事が嫌いだったさ。だが、同時に羨ましくもあった。自由に振る舞い、何をも恐れないその生き方に、きっと私は嫉妬していたんだろう。野蛮人と散々言ってきたが、訂正しよう。生き残るぞ『谷透 修哉』」
だが……もう俺の命は、俺一人のものじゃなくなったらしい。振り返れば、沢山の仲間がこちらを見ている。それは、自分が歩いてきた軌跡に他ならない。
谷透は、阿剣の前で片膝をつく。
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英雄は、立ち上がった。
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