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無神機関・決戦編
42話
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「さァ!殺ろうぜ?」
ゼシは声たかだかに叫ぶ。
「いえ、終わりです」
白獅子は手に持つ神代遺物、招雷刀を解放し答える。
バチバチっと紫電が舞い、白獅子はゼシに挑む。
力は均衡している。
それどころか、白獅子が押していた。
「クハハッ……やっぱり強いな。『神殺しの英雄』は」
「……その名前は数百年も昔に捨てました」
「ハハッ良いぜぇ?お前のやり方はだいたい覚えてんだ。その武器と、俺の穢れ。やり合おうじゃないか」
「……良いでしょう」
白獅子はそう言うと……
鬼の面を外した。
途端に溢れ出す、招雷刀の紫の雷とは違う、蒼色の雷。
短く結んだ髪は解け、片目を隠している髪は雷によってザワつく。
「では、ここから本気です」
そう、ここからが本気。
……つまり、今までは茶番。
真陽と御影はその白獅子の姿を見て、驚嘆する。
「あの蒼色の雷……あれは……神通力……?」
「そんな……いや、でも白獅子様は…」
「その通りよ」
やはり答えるのは、ヒミコだった。
「考えても見なさいな、神人は『神を模して創られた種族』よ?神が神通力を持っているのだから……」
「模造品である神人も、神通力が発現している……という訳か」
谷透が続けるように話す。
「えぇ、その通りよ。流石、私のオトコね」
「お前のになった覚えは無い」
「まぁ冗談はともかく、私たち神人に神通力があるのは本当よ。ただそれは純粋な神のものと違う。神通力っていうエネルギーだけ。信仰とか、そういうものではなくて。言うならば劣化したもの。汎用性は高いわ。怪我を治したり、攻撃の威力を上げたり。ただ、それは純粋な神よりも劣化したものなのだけどね」
つまるところ、神よりは劣るが、その分色々なところに力を回せるという事だろうか。
………そういえば、ナントカっていう犬みたいな神…?はアイツの怪我を治したって聞いたしな。神人も似たような事は出来るが、それよりは力が落ちたものになるってことか。
「考え事してるトコ悪いのだけど」
ヒミコの言葉に顔を上げる。見ると、ヒミコは指を指していた。
「そろそろ、あなた達の最高戦力が決着をつけるわ」
カッハハッ楽しいなぁ……オイ。裏から色々して、神社って奴も調べて、調べて、調べた筈だが。
まさかフヒトが居たなんてなぁ……
まぁ、かなり強い奴がいるとは聞いたが、まさかこいつとは思わねぇよ。
でもまぁ、コイツなら良いか。
白獅子は招雷刀を鞘に収め、居合の姿勢を取る。
「……決着です。ゼシ」
「ハハッ……カハハッッ」
ゼシは纏う穢れ全てをレーザー砲のようにぶっぱなす。質量と威力。そのどちらでも人を殺すには充分なそれが、白獅子に向かっていく。
対して、白獅子が取った行動は………
抜刀、唯一つ。
凄まじい轟音と共に雷撃が放たれ、目の前に迫っていた穢れをまるごと蒸発させた後、ゼシへと向かって飛来する。
飛来した雷はゼシの全身を覆うように命中する。
反響する轟音と閃光に、目と耳を塞いでいた。
それらが静まった後に、ゆっくりと目を開く。
倒れているのはゼシ。立っていたのは白獅子だった。
「勝っ………た?」
谷透がポツリと呟くと、白獅子はこちらをくるりと振り返り、鬼の面をはめた顔で穏やかに答える。
「えぇ」
途端に歓声が巻き起こる。
「勝った……勝ったんだな」
「あぁ雹。もうシダマも、あのゼシって奴も、倒されたって感じぃ」
「蒼糸、良くやってくれた」
「………有山さんも、よくご無事で」
「……御影」
「……えぇ、姉さん。僕達の勝ちですか」
姉弟は静かに拳を合わせる。
「さて、あんた達どうするのかしら?」
「……さてね…」
「パイナポーヘッドが随分消極的ね」
「どこで聞いたんだヒミコォォォォッッ!!」
谷透は、止水総括と共に白獅子の近くまで歩み寄る。
見ると、床には真っ黒に焦げた、ゼシの遺体が転がっていた。
「白獅子さん……コイツ…どうするんです?」
「……神人は全員、核のようなものを持っています」
「核?」
谷透がそう言うと、ゼシの遺体がボロボロと炭のように瓦解し、中からビー玉のようなものがコロっと残った。
「……それが核…か?」
「えぇ…ですがこのままだと、何千年と時間を掛けて、徐々に肉体を再生していきます。そうはさせない。これは神社で厳格に封じるとしましょう」
「……きっとそれが良いかもな」
止水が白獅子に答える。
「さて、これで私たちの仕事は終わった訳です。ヒミコさんもこちらが保護致します。ですが………」
「………わかっているさ。我々の処分だろう?」
止水が答えると、白獅子も応じる。
「えぇ、どのような理由であれ、私たち神社に牙を向いてきた事は無くなりません。ですが、貴方達の拠点は既に崩壊しています。さて、どうしたものでしょうか……」
白獅子と止水が悩む中、谷透は思い付いたように発言する。
「あの、白獅子さん。それなら………」
谷透はなんでもないように言う。
「俺の私兵、という事でどうでしょう?」
「……は?」
驚いたのは止水だ。
「いや、俺の私兵という扱いで神社勢力に入れれば良いだろうし、何より、アンタ達もシダマって奴に散々好き勝手やられてたんだしさ。それに、アンタ達の力も相当なものだ。無くすには惜しいと思うんだが」
谷透の言葉に白獅子は答える。
「……まぁ、今回の件で1番の功労者は谷透さんでしょうし。それに……」
白獅子は穏やかに笑うと、続ける。
「私がそう推薦した……と、言えば、神社も手出しは出来ないでしょうね」
フッと笑う白獅子と、ニヤッとする谷透を見て、総括指導者 止水は言う。
「………正気か?」
ゼシは声たかだかに叫ぶ。
「いえ、終わりです」
白獅子は手に持つ神代遺物、招雷刀を解放し答える。
バチバチっと紫電が舞い、白獅子はゼシに挑む。
力は均衡している。
それどころか、白獅子が押していた。
「クハハッ……やっぱり強いな。『神殺しの英雄』は」
「……その名前は数百年も昔に捨てました」
「ハハッ良いぜぇ?お前のやり方はだいたい覚えてんだ。その武器と、俺の穢れ。やり合おうじゃないか」
「……良いでしょう」
白獅子はそう言うと……
鬼の面を外した。
途端に溢れ出す、招雷刀の紫の雷とは違う、蒼色の雷。
短く結んだ髪は解け、片目を隠している髪は雷によってザワつく。
「では、ここから本気です」
そう、ここからが本気。
……つまり、今までは茶番。
真陽と御影はその白獅子の姿を見て、驚嘆する。
「あの蒼色の雷……あれは……神通力……?」
「そんな……いや、でも白獅子様は…」
「その通りよ」
やはり答えるのは、ヒミコだった。
「考えても見なさいな、神人は『神を模して創られた種族』よ?神が神通力を持っているのだから……」
「模造品である神人も、神通力が発現している……という訳か」
谷透が続けるように話す。
「えぇ、その通りよ。流石、私のオトコね」
「お前のになった覚えは無い」
「まぁ冗談はともかく、私たち神人に神通力があるのは本当よ。ただそれは純粋な神のものと違う。神通力っていうエネルギーだけ。信仰とか、そういうものではなくて。言うならば劣化したもの。汎用性は高いわ。怪我を治したり、攻撃の威力を上げたり。ただ、それは純粋な神よりも劣化したものなのだけどね」
つまるところ、神よりは劣るが、その分色々なところに力を回せるという事だろうか。
………そういえば、ナントカっていう犬みたいな神…?はアイツの怪我を治したって聞いたしな。神人も似たような事は出来るが、それよりは力が落ちたものになるってことか。
「考え事してるトコ悪いのだけど」
ヒミコの言葉に顔を上げる。見ると、ヒミコは指を指していた。
「そろそろ、あなた達の最高戦力が決着をつけるわ」
カッハハッ楽しいなぁ……オイ。裏から色々して、神社って奴も調べて、調べて、調べた筈だが。
まさかフヒトが居たなんてなぁ……
まぁ、かなり強い奴がいるとは聞いたが、まさかこいつとは思わねぇよ。
でもまぁ、コイツなら良いか。
白獅子は招雷刀を鞘に収め、居合の姿勢を取る。
「……決着です。ゼシ」
「ハハッ……カハハッッ」
ゼシは纏う穢れ全てをレーザー砲のようにぶっぱなす。質量と威力。そのどちらでも人を殺すには充分なそれが、白獅子に向かっていく。
対して、白獅子が取った行動は………
抜刀、唯一つ。
凄まじい轟音と共に雷撃が放たれ、目の前に迫っていた穢れをまるごと蒸発させた後、ゼシへと向かって飛来する。
飛来した雷はゼシの全身を覆うように命中する。
反響する轟音と閃光に、目と耳を塞いでいた。
それらが静まった後に、ゆっくりと目を開く。
倒れているのはゼシ。立っていたのは白獅子だった。
「勝っ………た?」
谷透がポツリと呟くと、白獅子はこちらをくるりと振り返り、鬼の面をはめた顔で穏やかに答える。
「えぇ」
途端に歓声が巻き起こる。
「勝った……勝ったんだな」
「あぁ雹。もうシダマも、あのゼシって奴も、倒されたって感じぃ」
「蒼糸、良くやってくれた」
「………有山さんも、よくご無事で」
「……御影」
「……えぇ、姉さん。僕達の勝ちですか」
姉弟は静かに拳を合わせる。
「さて、あんた達どうするのかしら?」
「……さてね…」
「パイナポーヘッドが随分消極的ね」
「どこで聞いたんだヒミコォォォォッッ!!」
谷透は、止水総括と共に白獅子の近くまで歩み寄る。
見ると、床には真っ黒に焦げた、ゼシの遺体が転がっていた。
「白獅子さん……コイツ…どうするんです?」
「……神人は全員、核のようなものを持っています」
「核?」
谷透がそう言うと、ゼシの遺体がボロボロと炭のように瓦解し、中からビー玉のようなものがコロっと残った。
「……それが核…か?」
「えぇ…ですがこのままだと、何千年と時間を掛けて、徐々に肉体を再生していきます。そうはさせない。これは神社で厳格に封じるとしましょう」
「……きっとそれが良いかもな」
止水が白獅子に答える。
「さて、これで私たちの仕事は終わった訳です。ヒミコさんもこちらが保護致します。ですが………」
「………わかっているさ。我々の処分だろう?」
止水が答えると、白獅子も応じる。
「えぇ、どのような理由であれ、私たち神社に牙を向いてきた事は無くなりません。ですが、貴方達の拠点は既に崩壊しています。さて、どうしたものでしょうか……」
白獅子と止水が悩む中、谷透は思い付いたように発言する。
「あの、白獅子さん。それなら………」
谷透はなんでもないように言う。
「俺の私兵、という事でどうでしょう?」
「……は?」
驚いたのは止水だ。
「いや、俺の私兵という扱いで神社勢力に入れれば良いだろうし、何より、アンタ達もシダマって奴に散々好き勝手やられてたんだしさ。それに、アンタ達の力も相当なものだ。無くすには惜しいと思うんだが」
谷透の言葉に白獅子は答える。
「……まぁ、今回の件で1番の功労者は谷透さんでしょうし。それに……」
白獅子は穏やかに笑うと、続ける。
「私がそう推薦した……と、言えば、神社も手出しは出来ないでしょうね」
フッと笑う白獅子と、ニヤッとする谷透を見て、総括指導者 止水は言う。
「………正気か?」
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