神様の仰せのままに

幽零

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無神機関・決戦編

39話

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もはや、言葉はいらないと言ったが。

それでも、当事者以外にはには必要だろう。


無神機関で繰り広げられた戦いは、もはや人の域を超えていた。

機関内部のその殆どを崩壊させ、空が見えてしまうほどだった。



「…………」

「…………」


空に浮くゼシに、迎え撃つように封神剣を構える谷透。


ゼシは穢れを全身に纏い、まるで風が渦巻いているような風貌をしている。反対に谷透は白金の輝きを得た封神剣を構え、まるで彗星の如く動いている。


ゼシの『穢れ』はまるで物質の形が定まっていない物体のようで、ドロドロとしたと思えば鉄のように硬くなったり、空気のように霧散したりする。


一方、本来の力を取り戻した封神剣はなるほど威力も前よりは上がっている。そして、無限にも思える敗北の記憶。それを自在に引き出す能力を得た事で、前よりもはるかに動きをは良い。



だが、谷透は防戦一方だ。



理由は単純。ゼシは浮いていて、谷透は地に立っている。反撃しようにも射程外から一方的にやられているのでは、何もできない。



ゼシはまるで指揮を執るように、腕を前へ掲げる。すると、穢れがゼシの背中からまるで触手のように伸び、谷透へと襲いかかる。

「…………ッ!!」

谷透は記憶を引き出す。


無限にも思える記憶の数々から、今の状況に似た経験を、封神剣を通して感覚を得る。

故に、一撃も当たらない。



硬直状態ではあるが、一方的に攻撃しているゼシの方が有利な事に変わりは無い。


「……何か、無いのかしらね」

口を開いたのはヒミコだった。

神人の技術を持ってすれば、穢れを支配したゼシにも届くかもしれない。だが、ヒミコは長い間、シダマによって無神機関に拘束されており、意識すらない状態だったため、何があるかの把握がいまいちできていない。


「無いことは無いだろうが……」

斑目は武装の砕けた機関隊員達を見る。

「ここまでやられてしまっていれば、もうどうしようもないだろう」

「どうかな」

「っ!?」

異を唱えるのは、有山だった。

「ヒミコさん…っと言ったかな?もしここに、あそこで倒れている4人が復活したらどうなるとおもう?」

「………まぁ、戦況は変わるでしょうね。あのヒト、飛ぶ事が出来ないから苦戦してるんでしょうし」

「……まるで飛べれば苦戦しないとでも言いたげだな」

「当たり前でしょ。あのヒトの持ってる武器、あれ『神代遺物』よ?価値、わかってるかしら?私たち神人が、神々と戦争する時に創った代物よ?それをただの人間が解放まで辿り着いた。もう運命とかそういうレベルじゃないわ。あのヒト……でも……」




ヒミコは目の前の光景を見る。まるで聖剣を引き抜いた英雄が、邪悪なる使徒と戦っている絵画のようだ。

絵画ならば美しいだろう。ボロボロになりながらも戦い続ける英雄譚など、嫌いな奴がいるものか。

だが、これら現実であり、倒さなくてはならない。倒すためには殺さねばならない。

そして、殺すためには攻めなくては。





「………っ……」

体力が無くなってきた。

記憶を辿って攻撃を避けられるとはいえ、それはこちらが反応出来なければ意味が無い。それに、封神剣を解放してから、ずっと何かを消耗し続けているような感覚がある。体力にしろ、精神にしろ。どの道無限大の力では無いのだ。











そんなものがあってたまるか。だが、相手もそれは同じはず。



そこに勝機がある………





「………っとか思ってたりする?」

「…………ッッ!?!?」

見透かしたようにゼシは笑う。


?当たり前じゃん。だってさ、欲望だよ?オマエら人間はひとつ満たされたら満足?な訳無いよな?、ひとつ終われば2つ、2つ終われば3つってさ、尽きないだろ?欲望は?同じだよ。だから……」


ゼシは笑って顔を抑えながら、指の隙間から谷透を見下す。


「消耗戦で言えば、オマエが先に尽きるのさ。………あん?じゃあなんで一気に畳み掛けてこないかって顔してるな?………簡単さ」

首裏に手のひらを当てながら、関節を鳴らして不敵に笑う。

「つまんないからだよ。そんなの」



「……………」



遊ばれていた。それだけ。






…………………………

















神と戦争できる種族だ。異能力を持ってるだけの人間が適うわけが無い。



そして、



白獅子あのひとは絶対にそうする。全てを見透かしたようなあの瞳で、何事も無かったかのように粛々と成すべき事を成す。


まだ、程遠い。だが、今はいい。



「まぁさ、飽きてきたし、もういっか」


ゼシが空高く手を振りあげると、周囲に漂っていた穢れがいっせいに谷透に向かって誘導レーザーのように襲いかかった。



抗え、最後まで。



そして、









そして封神剣から、白金の輝きが消えた。

ふと、記憶がそこで引き出せなくなった。


顔の前まで穢れが迫る。


(………仄……)




こんな時まで、彼の中に居たのは、帰りを待つ彼女だった。





凄まじい衝撃と共に。粉塵が舞う。



「…………は?」




トドメを刺したと思った谷透は五体満足で、穢れだけがゴッソリと、まるで何かにぶつかって蒸発したように消えていた。





「………申し訳ありません。皆様」


コツ、コツと。


「……遅くなりましたね」


妙に足音が響く。


「良く生き残ってくれました」


声の源は、入口だ。


「ようやく一ノ門から許可が下りました。あとは私に任せてください」



白く輝く外套を翻し、鬼の面をつけたその男は、紫色に光る稲妻を携えて、その場に現れた。



谷透は彼の顔を見た途端、安堵と尊敬の眼差しを送る。


本当、毎度毎度。最高のタイミングでこの男は現れるのだ。


「一ノ門大社『六武衆』白獅子。これより、『神人』の保護及び六武衆2人の救援のため、参戦致します」



一ノ門六武衆、その真の筆頭にして最強の神守。


白獅子が、招雷刀を携え、颯爽と現れた。







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