神様の仰せのままに

幽零

文字の大きさ
上 下
3 / 94
序章

3話

しおりを挟む
夕飯が木の実は如何なものかと思ったが、意外と美味く普通に食べれた。

だが、ドヤ顔する紅葉のせいでイライラしながら夕飯を食べることになった。



「おいガキ。相変わらずこの剣抜けねぇぞ」

「そなたに才覚が無いのかの?ま、妾どうなっても知らんと言ったはずじゃ」

「このガキ……」

谷透は息を吐いて気を落ち着かせると、抜けない剣の先端をガツっと床につけ、紅葉に問う。

「まぁ良い……それでお前。とか言ってたが、どんな事情があったんだ」

谷透が鋭い目付きで紅葉を見ると、紅葉はフッと流すように答える。

「さてのう?そなたの態度次第じゃなぁ~?」

「ハイハイ、クソガキ様教えやがれ下さい」

「敬語でもなんでも無いんじゃがっ!?」

結局紅葉は話をぼやしてまともに答えはしなかった。




フクロウの鳴き声が聞こえてきた夜中、御堂の中で脚を組みながら寝ていたが、何やらずっしりとした重みを感じ目を開ける。

「………このガキ…」

組んだ脚の上に大の字になって紅葉が寝ていた。

邪魔な紅葉をどかそうとした時、昨晩と同じ気配を感じ取った。どうやらそれは紅葉も同じようで、今の今まで大の字になってスピスピ寝ていたのに、目をパチっと開けて言葉を発した。

「この気配、おい人の子よ。わかっておるな?」

「分かってんだがよぉ…俺の脚の上で大の字になってシリアスな顔されてもなんも感じねぇぞ?」



そんなこんなで御堂の外に出ると、今度はガリガリに痩せた、まるで骨と皮のような人間がそこに立っていた。

「だ……ダダダダ…だんじ…だんじき…だんじき…だんじ…」

谷透は抜けない剣を肩にかけて、紅葉に尋ねる。

「なぁ…何で神様ってヤツはデカかったりガリガリだったり極端なんだ?」

「なに、穢れに飲まれたからじゃろうのう。あの神は断食がどうやら好みだったようじゃな。あの調子だと、そなたら人の子に断食を強要する勢いじゃな」

「……ったく。それで……」

谷透は剣を鞘から引き抜こうとするが、やっぱり剣は抜けなかった。

「……いつになったら、コイツは抜けんだよ……っんとに…」

「しょーがないじゃろー。手に取ったのはお主なんじゃしー」

紅葉は欠伸をしながら答える。

「だ…ダダダダ…だん、だんだん…だんじき…ダンジキィッ!!」

ガリガリに痩せた神がこちらに走ってくる。合掌しながら走って来ているので、なんとも滑稽に見える。


谷透は抜けない剣をクルクルと回しながら、歩みを進める。

「あのよォ…なんでテメェら穢れた神様ってやつは毎回毎回夜中に来んだよ。そのせいでこっちは寝れてねぇんだぞ…」

「ダンジギィァァッ!!」

ガリガリの神は合掌した手を谷透の首に伸ばして絞め殺そうとした。しかし、神の両手は空を切り、勢い余って自分の肩を自分で抱くようなおかしな体勢になったまま、前のめりになって倒れた。谷透の異能力、霊体化だ。


「おー、おー。神様って奴でも俺を掴む事は出来ねぇ見てぇだな?」

「調子に乗るな人の子よ。そやつが弱いだけじゃ」

紅葉のツッコミに舌打ちしながら、谷透は起き上がろうとするガリガリの神の頭を蹴飛ばし、再び地面にキスさせる。


「断食断食五月蝿うるせェンだよ!俺はテメェらのせいで寝不足なんだよ!テメェは世間のガキ共でも見習ってオネンネしてやがれッッ!!」


谷透は地に伏した神の首目掛けて、抜けない剣をフルスイングする。二度と目覚める事のないオネンネに誘うつもりだろう。ボギィッ!と骨の砕けるような音がなったが、それでも神は起き上がろうとする。しかし谷透は肩甲骨の辺りを踏み付け、それを封じる。



「動かなくなるまで殴り続けんのも大変なんだぞテメェ」

谷透は片手で、返り血の付着した鞘に収まったままの剣を振り上げる。その目は殺気で赤く光っているように見えた。



谷透が神を相手取っている様子を見ていた紅葉は一人つぶやく。

「……あの様子…『穢祓い』の名に恥じぬ獰猛さじゃの。まさに「だあくひいろぅ」ってやつじゃな!」

紅葉は覚えたての単語を、若干怪しいイントネーションで使った。

「……ふむ」

紅葉は自分の手を握ったり開いたり、それを数回繰り返すと言葉を紡いだ。


「そろそろ戻っても良いかもしれんのう……」



朝日が登る気配は無く、ただ月明かりが、宙に舞う鮮血を鮮やかに照らしていた。








しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

アンダーグラウンドゲーム

幽零
キャラ文芸
ただの男子高校生 紅谷(ベニヤ)は、登校中、黒服たちに襲われ拉致されてしまう。 誰が何のために造ったのか一切不明の『ラビリンスゲーム』 人々の思惑が交差する迷宮脱出ストーリー。 御協力 れもん麺 様 イラスト Fubito 様

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン政治家・山下泉はコメントを控えたい

どっぐす
キャラ文芸
「コメントは控えさせていただきます」を言ってみたいがために政治家になった男・山下泉。 記者に追われ満を持してコメントを控えるも、事態は収拾がつかなくなっていく。 ◆登場人物 ・山下泉 若手イケメン政治家。コメントを控えるために政治家になった。 ・佐藤亀男 山下の部活の後輩。無職だし暇でしょ?と山下に言われ第一秘書に任命される。 ・女性記者 地元紙の若い記者。先頭に立って山下にコメントを求める。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

処理中です...