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序章
3話
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夕飯が木の実は如何なものかと思ったが、意外と美味く普通に食べれた。
だが、ドヤ顔する紅葉のせいでイライラしながら夕飯を食べることになった。
「おいガキ。相変わらずこの剣抜けねぇぞ」
「そなたに才覚が無いのかの?ま、妾どうなっても知らんと言ったはずじゃ」
「このガキ……」
谷透は息を吐いて気を落ち着かせると、抜けない剣の先端をガツっと床につけ、紅葉に問う。
「まぁ良い……それでお前。事情があったとか言ってたが、どんな事情があったんだ」
谷透が鋭い目付きで紅葉を見ると、紅葉はフッと流すように答える。
「さてのう?そなたの態度次第じゃなぁ~?」
「ハイハイ、クソガキ様教えやがれ下さい」
「敬語でもなんでも無いんじゃがっ!?」
結局紅葉は話をぼやしてまともに答えはしなかった。
フクロウの鳴き声が聞こえてきた夜中、御堂の中で脚を組みながら寝ていたが、何やらずっしりとした重みを感じ目を開ける。
「………このガキ…」
組んだ脚の上に大の字になって紅葉が寝ていた。
邪魔な紅葉をどかそうとした時、昨晩と同じ気配を感じ取った。どうやらそれは紅葉も同じようで、今の今まで大の字になってスピスピ寝ていたのに、目をパチっと開けて言葉を発した。
「この気配、おい人の子よ。わかっておるな?」
「分かってんだがよぉ…俺の脚の上で大の字になってシリアスな顔されてもなんも感じねぇぞ?」
そんなこんなで御堂の外に出ると、今度はガリガリに痩せた、まるで骨と皮のような人間がそこに立っていた。
「だ……ダダダダ…だんじ…だんじき…だんじき…だんじ…」
谷透は抜けない剣を肩にかけて、紅葉に尋ねる。
「なぁ…何で神様ってヤツはデカかったりガリガリだったり極端なんだ?」
「なに、穢れに飲まれたからじゃろうのう。あの神は断食がどうやら好みだったようじゃな。あの調子だと、そなたら人の子に断食を強要する勢いじゃな」
「……ったく。それで……」
谷透は剣を鞘から引き抜こうとするが、やっぱり剣は抜けなかった。
「……いつになったら、コイツは抜けんだよ……っんとに…」
「しょーがないじゃろー。手に取ったのはお主なんじゃしー」
紅葉は欠伸をしながら答える。
「だ…ダダダダ…だん、だんだん…だんじき…ダンジキィッ!!」
ガリガリに痩せた神がこちらに走ってくる。合掌しながら走って来ているので、なんとも滑稽に見える。
谷透は抜けない剣をクルクルと回しながら、歩みを進める。
「あのよォ…なんでテメェら穢れた神様ってやつは毎回毎回夜中に来んだよ。そのせいでこっちは寝れてねぇんだぞ…」
「ダンジギィァァッ!!」
ガリガリの神は合掌した手を谷透の首に伸ばして絞め殺そうとした。しかし、神の両手は空を切り、勢い余って自分の肩を自分で抱くようなおかしな体勢になったまま、前のめりになって倒れた。谷透の異能力、霊体化だ。
「おー、おー。神様って奴でも俺を掴む事は出来ねぇ見てぇだな?」
「調子に乗るな人の子よ。そやつが弱いだけじゃ」
紅葉のツッコミに舌打ちしながら、谷透は起き上がろうとするガリガリの神の頭を蹴飛ばし、再び地面にキスさせる。
「断食断食五月蝿ェンだよ!俺はテメェらのせいで寝不足なんだよ!テメェは世間のガキ共でも見習ってオネンネしてやがれッッ!!」
谷透は地に伏した神の首目掛けて、抜けない剣をフルスイングする。二度と目覚める事のないオネンネに誘うつもりだろう。ボギィッ!と骨の砕けるような音がなったが、それでも神は起き上がろうとする。しかし谷透は肩甲骨の辺りを踏み付け、それを封じる。
「動かなくなるまで殴り続けんのも大変なんだぞテメェ」
谷透は片手で、返り血の付着した鞘に収まったままの剣を振り上げる。その目は殺気で赤く光っているように見えた。
谷透が神を相手取っている様子を見ていた紅葉は一人つぶやく。
「……あの様子…『穢祓い』の名に恥じぬ獰猛さじゃの。まさに「だあくひいろぅ」ってやつじゃな!」
紅葉は覚えたての単語を、若干怪しいイントネーションで使った。
「……ふむ」
紅葉は自分の手を握ったり開いたり、それを数回繰り返すと言葉を紡いだ。
「そろそろ戻っても良いかもしれんのう……」
朝日が登る気配は無く、ただ月明かりが、宙に舞う鮮血を鮮やかに照らしていた。
だが、ドヤ顔する紅葉のせいでイライラしながら夕飯を食べることになった。
「おいガキ。相変わらずこの剣抜けねぇぞ」
「そなたに才覚が無いのかの?ま、妾どうなっても知らんと言ったはずじゃ」
「このガキ……」
谷透は息を吐いて気を落ち着かせると、抜けない剣の先端をガツっと床につけ、紅葉に問う。
「まぁ良い……それでお前。事情があったとか言ってたが、どんな事情があったんだ」
谷透が鋭い目付きで紅葉を見ると、紅葉はフッと流すように答える。
「さてのう?そなたの態度次第じゃなぁ~?」
「ハイハイ、クソガキ様教えやがれ下さい」
「敬語でもなんでも無いんじゃがっ!?」
結局紅葉は話をぼやしてまともに答えはしなかった。
フクロウの鳴き声が聞こえてきた夜中、御堂の中で脚を組みながら寝ていたが、何やらずっしりとした重みを感じ目を開ける。
「………このガキ…」
組んだ脚の上に大の字になって紅葉が寝ていた。
邪魔な紅葉をどかそうとした時、昨晩と同じ気配を感じ取った。どうやらそれは紅葉も同じようで、今の今まで大の字になってスピスピ寝ていたのに、目をパチっと開けて言葉を発した。
「この気配、おい人の子よ。わかっておるな?」
「分かってんだがよぉ…俺の脚の上で大の字になってシリアスな顔されてもなんも感じねぇぞ?」
そんなこんなで御堂の外に出ると、今度はガリガリに痩せた、まるで骨と皮のような人間がそこに立っていた。
「だ……ダダダダ…だんじ…だんじき…だんじき…だんじ…」
谷透は抜けない剣を肩にかけて、紅葉に尋ねる。
「なぁ…何で神様ってヤツはデカかったりガリガリだったり極端なんだ?」
「なに、穢れに飲まれたからじゃろうのう。あの神は断食がどうやら好みだったようじゃな。あの調子だと、そなたら人の子に断食を強要する勢いじゃな」
「……ったく。それで……」
谷透は剣を鞘から引き抜こうとするが、やっぱり剣は抜けなかった。
「……いつになったら、コイツは抜けんだよ……っんとに…」
「しょーがないじゃろー。手に取ったのはお主なんじゃしー」
紅葉は欠伸をしながら答える。
「だ…ダダダダ…だん、だんだん…だんじき…ダンジキィッ!!」
ガリガリに痩せた神がこちらに走ってくる。合掌しながら走って来ているので、なんとも滑稽に見える。
谷透は抜けない剣をクルクルと回しながら、歩みを進める。
「あのよォ…なんでテメェら穢れた神様ってやつは毎回毎回夜中に来んだよ。そのせいでこっちは寝れてねぇんだぞ…」
「ダンジギィァァッ!!」
ガリガリの神は合掌した手を谷透の首に伸ばして絞め殺そうとした。しかし、神の両手は空を切り、勢い余って自分の肩を自分で抱くようなおかしな体勢になったまま、前のめりになって倒れた。谷透の異能力、霊体化だ。
「おー、おー。神様って奴でも俺を掴む事は出来ねぇ見てぇだな?」
「調子に乗るな人の子よ。そやつが弱いだけじゃ」
紅葉のツッコミに舌打ちしながら、谷透は起き上がろうとするガリガリの神の頭を蹴飛ばし、再び地面にキスさせる。
「断食断食五月蝿ェンだよ!俺はテメェらのせいで寝不足なんだよ!テメェは世間のガキ共でも見習ってオネンネしてやがれッッ!!」
谷透は地に伏した神の首目掛けて、抜けない剣をフルスイングする。二度と目覚める事のないオネンネに誘うつもりだろう。ボギィッ!と骨の砕けるような音がなったが、それでも神は起き上がろうとする。しかし谷透は肩甲骨の辺りを踏み付け、それを封じる。
「動かなくなるまで殴り続けんのも大変なんだぞテメェ」
谷透は片手で、返り血の付着した鞘に収まったままの剣を振り上げる。その目は殺気で赤く光っているように見えた。
谷透が神を相手取っている様子を見ていた紅葉は一人つぶやく。
「……あの様子…『穢祓い』の名に恥じぬ獰猛さじゃの。まさに「だあくひいろぅ」ってやつじゃな!」
紅葉は覚えたての単語を、若干怪しいイントネーションで使った。
「……ふむ」
紅葉は自分の手を握ったり開いたり、それを数回繰り返すと言葉を紡いだ。
「そろそろ戻っても良いかもしれんのう……」
朝日が登る気配は無く、ただ月明かりが、宙に舞う鮮血を鮮やかに照らしていた。
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