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序章
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あれから何日が経っただろう。あの胡散臭い元神の工房を出て、もうしばらく経つ。
妖刀使いも妖も、見境なく見つけ次第殺していた。あれから幾らか考えは変わったのだろうか、何も変わっていないようにも感じる。きっと、自分の心の内を知ることは、1番難しいんだろう。
日差しよけとしてフードを深く被った男は、腰にぶら下げた刀を気にしながら、森を歩いていた。
男に家族は居ない。無理やり妖刀を使った人間に、全員斬り殺された。男にとって、妖も妖刀使いも皆仇だ。だが、今はある兄弟と対峙し、彼自身考え方が変わり始めていた。
「………………」
ザクッ…ザクッ…と雑草を踏みながら歩いていると、何やらポツンと古びた社が出てきた。木造建築で風化が進んでいる。ボロボロだ。
……だが、都合が良い。雨風をしのげる場所を探していた。
彼は元々、妖刀を造る神の工房にいたのだが、出て行くことを決めた。そもそもずっと孤独でいた身の上だ。他人がいる生活に慣れてはいない。
妖刀を造る神……雨谷に、ここを出ると伝えると、やけにあっさり送り出された。
『良いんじゃない?オイラ人の面倒見るの下手だし、て言うか見てたの雪華だし。好きなとこ行っておいでよ~!あ、これ餞別ね』
そうして投げて渡されたのが元々自分が持ってた退魔の刀。
………餞別でもなんでもねぇだろ…元々俺の所有物だ。
だが、研いだり打ち直したりはしてくれていたらしい。ただ殺すためだけに使っていたのだから相当傷んではいたのだろう。
ぎし…と木が軋む音がする。少し飛べば登れるぐらいの小さな段差を上り、扉を開ける。御堂…という程でも無いが、広さは畳4つ分あるかないか。充分だ。
腰から鞘を外し、立て掛ける。
適当な壁に寄っ掛かると、目を閉じる。
「ほう?こんな所に来るとはもの好きなやつじゃのう。人の子よ」
目を開けた。そこには白い和服を着た、黒髪赤目の少女がいた。身長はかなり低い。幼稚園生のような背丈だ。そして直感する。コイツは人間じゃない
男は反射的に刀を手に取り抜刀しようとする。彼が今までそうしてきたように……だが、脳裏にある言葉がよぎる。
『色んな妖とも話をしてみようよ』
「………チッ…面倒な約束させやがって…」
苦い思い出を懐かしむように、男は笑う。そして刀を収めた。
「で、何だガキ。なんのようだ」
「ガキとはなんじゃ!失礼なやつじゃのう!妾は神じゃ!そなたら人の子の言う所の神様じゃ!」
凄かろう!とすごくない胸を張りながらエッヘンと仰け反る自称神のロリ。
「あーそーかよ。で何の用だガキ」
「またガキとぉ……むぅ…まぁ良い。妾は確かにそなたら人の子の視点からすれば若く見えてしまうからのう」
……若いどころじゃねぇよ。
「ま、妾の事が見える人の子など、貴重じゃな!話相手になってくれても良いぞ!」
「寝るか」
「うぉーーい!!!」
目を閉じたあとも、暫くギャンギャン自称神は喚いていたが、観念したのか徐々に静かになって行った。
隙間風の寒さが肌を刺し、ぼんやりと起きた。外はもう暗い。森の中だから真っ暗だ。
「………寝てたか」
特にする事も無いので、そのまま再び眠りにつこうとした時、気配を感じる。
「…………」
そばで大の字で寝ていた自称神のロリを起こさないようにスっと立ち上がると、男は退魔の刀を手に、御堂を出る。暴走した妖刀使いでも、妖の気配でも無い……何だ……これ……
感じた事のない気配を肌で感じながら、男は思考を回す。
(……いや、少しだけこの気配に覚えがある……これは……ッ!?)
そこで思考は止まった。目の前に、何かが落ちてきた。木々を数本薙ぎ倒し、こちらに巨体が向かってくる。
「おいおい……何だよコイツぁ……」
向かってきた巨体の顔目掛けて、言葉を投げた。
「一応聞いておく。会話出来るか?テメェ」
「グルァァァァッ!!」
「……そんな知能ある訳ないよな。そんな顔してやがる」
刀を構え、前進する。所詮はデカブツ、斬れる。
軽く2m程垂直に跳躍し、刀をそのまま巨体の首に突き立てる。
……が
「………あ……??」
退魔の力を持つはずの刀は、バキリと刀身から砕けた。
「嘘だろ…おい」
どうしようもなくなり、とにかく1度距離を取ろうとするが、巨体の腕に、ビンタのような攻撃をくらい、叩き飛ばされる。
「………ガッッ!!」
社のすぐ横の木に激突し、背中を強打する。木は衝撃で折れた。
意識が朦朧とする。やばい。やらかした。
「あれは妖じゃあ無いぞ人の子よ」
切れかかる意識を繋ぎ止めるように凛とした声が聞こえる。横には巨体を冷たい目で見ながら、自称神の少女が立っていた。
「あれは神じゃ。妾と同じな。ひとつ違うのは穢に飲まれた事じゃ」
「………あん……?」
「神は妖に信仰されるものと人の子らに信仰されるものがある。中には妖に堕ちる道を選んだものがいるが、アレは違う。神のまま穢れた。もう二度と元には戻れん」
冷たく言い放つ少女の目は、やはり赤かった。
「……逃げろよ……ガキ……見ての通り俺は深手で刀も折れちまった。俺が殺されてる間にテメェは逃げられるだろう」
「残念だが、妾は事情で力が無い。戦えもしなければ、逃げ切る力も無い。このままだと残念だが妾とそなた、2人仲良くヤツの胃袋に収まるな」
「…………」
絶望的な状況に、乾いた笑いが出てしまった男に向けて、少女は言葉を紡ぐ。
「………一つだけ、2人とも助かる方法がある」
少女はそう言うと、手を前にだし呪文を唱える。すると地面に魔法陣のようなものが現れ、下から剣のようなものが出てきた。
「これを手に取れ、じゃがこの剣はいわく付きでのう。そなたがどうなるか、妾にもわからん。最悪死ぬかもしれん。どうする?」
「………んなもん決まってんだろうが…」
男は迷いなく剣を手に取った。
「殺す事は得意でも、まだ死ぬ事には慣れちゃあいねぇんだよ」
「違いないのう」
男と少女は獰猛に笑った。
……しかし、男は気が付く。
「抜けねぇじゃねぇかこの剣ッ!!」
「だから言ったであろう。いわく付きだと。どうなっても知らんと言っただろうが」
「抜けねぇ剣でどうやってあのデカブツ殺すんだよ!」
「適当に撲殺すれば良いじゃろうよ」
「………殴って殺せんのか?」
「何、そこは妾が保証しよう」
「あーそーかよ」
男はもう半分投げやりで巨体に突撃していく。
「おいバカ!それではさっきと同じように弾かれる………」
そこで少女は見た。巨体の腕が男をすり抜けた事に。
………見えてればどうって事ない。見えてれば俺に攻撃は当たらない。
どれだけそうしていただろう。気が付けば朝日が登り始めていた。
古びた社のそばには、神を自称する小さな少女と、血だらけの巨体を背に、剣を鞘に収めたまま立っている男がいた。
「俺は異能力者なんだよ」
霊体化、体や身につけているものが物体をすり抜けるようになる異能力だ。ただ足首から下は霊体化できない。唯一の弱点だ。
「いやぁ、妾が言うのはあれだが、そなたよく勝てたな。剣を鞘に収めたまま神を撲殺した奴を初めて見たぞ………ちょっと引くわ……」
「テメェが殺せるって言ったんだろうがっ!」
ブチ切れる男をよそに少女は続ける。
「ま、助けてくれた事には礼を言うぞ人の子よ。そういえば名乗りが遅れてもうたな。妾は紅葉。訳あってこんな姿だが、神様じゃ!」
紅葉はそう言うと、男を指さし続ける。
「そなたの名を聞かせよ!何!妾が知りたいのじゃ!」
「…………」
抜けない剣を持ち直しながら、男は返り血と朝日を同時に浴びながら言葉を紡いだ。
「谷透……谷透 修哉だ」
「妖刀狩り」として、妖も妖刀使いも殺して回っていた男…谷透。
彼は、何かが始まったのか、それとも何かが終わったのか、ともあれ何かが起きてしまった事を、朝日と返り血と共に、感じ取っていた。
妖刀使いも妖も、見境なく見つけ次第殺していた。あれから幾らか考えは変わったのだろうか、何も変わっていないようにも感じる。きっと、自分の心の内を知ることは、1番難しいんだろう。
日差しよけとしてフードを深く被った男は、腰にぶら下げた刀を気にしながら、森を歩いていた。
男に家族は居ない。無理やり妖刀を使った人間に、全員斬り殺された。男にとって、妖も妖刀使いも皆仇だ。だが、今はある兄弟と対峙し、彼自身考え方が変わり始めていた。
「………………」
ザクッ…ザクッ…と雑草を踏みながら歩いていると、何やらポツンと古びた社が出てきた。木造建築で風化が進んでいる。ボロボロだ。
……だが、都合が良い。雨風をしのげる場所を探していた。
彼は元々、妖刀を造る神の工房にいたのだが、出て行くことを決めた。そもそもずっと孤独でいた身の上だ。他人がいる生活に慣れてはいない。
妖刀を造る神……雨谷に、ここを出ると伝えると、やけにあっさり送り出された。
『良いんじゃない?オイラ人の面倒見るの下手だし、て言うか見てたの雪華だし。好きなとこ行っておいでよ~!あ、これ餞別ね』
そうして投げて渡されたのが元々自分が持ってた退魔の刀。
………餞別でもなんでもねぇだろ…元々俺の所有物だ。
だが、研いだり打ち直したりはしてくれていたらしい。ただ殺すためだけに使っていたのだから相当傷んではいたのだろう。
ぎし…と木が軋む音がする。少し飛べば登れるぐらいの小さな段差を上り、扉を開ける。御堂…という程でも無いが、広さは畳4つ分あるかないか。充分だ。
腰から鞘を外し、立て掛ける。
適当な壁に寄っ掛かると、目を閉じる。
「ほう?こんな所に来るとはもの好きなやつじゃのう。人の子よ」
目を開けた。そこには白い和服を着た、黒髪赤目の少女がいた。身長はかなり低い。幼稚園生のような背丈だ。そして直感する。コイツは人間じゃない
男は反射的に刀を手に取り抜刀しようとする。彼が今までそうしてきたように……だが、脳裏にある言葉がよぎる。
『色んな妖とも話をしてみようよ』
「………チッ…面倒な約束させやがって…」
苦い思い出を懐かしむように、男は笑う。そして刀を収めた。
「で、何だガキ。なんのようだ」
「ガキとはなんじゃ!失礼なやつじゃのう!妾は神じゃ!そなたら人の子の言う所の神様じゃ!」
凄かろう!とすごくない胸を張りながらエッヘンと仰け反る自称神のロリ。
「あーそーかよ。で何の用だガキ」
「またガキとぉ……むぅ…まぁ良い。妾は確かにそなたら人の子の視点からすれば若く見えてしまうからのう」
……若いどころじゃねぇよ。
「ま、妾の事が見える人の子など、貴重じゃな!話相手になってくれても良いぞ!」
「寝るか」
「うぉーーい!!!」
目を閉じたあとも、暫くギャンギャン自称神は喚いていたが、観念したのか徐々に静かになって行った。
隙間風の寒さが肌を刺し、ぼんやりと起きた。外はもう暗い。森の中だから真っ暗だ。
「………寝てたか」
特にする事も無いので、そのまま再び眠りにつこうとした時、気配を感じる。
「…………」
そばで大の字で寝ていた自称神のロリを起こさないようにスっと立ち上がると、男は退魔の刀を手に、御堂を出る。暴走した妖刀使いでも、妖の気配でも無い……何だ……これ……
感じた事のない気配を肌で感じながら、男は思考を回す。
(……いや、少しだけこの気配に覚えがある……これは……ッ!?)
そこで思考は止まった。目の前に、何かが落ちてきた。木々を数本薙ぎ倒し、こちらに巨体が向かってくる。
「おいおい……何だよコイツぁ……」
向かってきた巨体の顔目掛けて、言葉を投げた。
「一応聞いておく。会話出来るか?テメェ」
「グルァァァァッ!!」
「……そんな知能ある訳ないよな。そんな顔してやがる」
刀を構え、前進する。所詮はデカブツ、斬れる。
軽く2m程垂直に跳躍し、刀をそのまま巨体の首に突き立てる。
……が
「………あ……??」
退魔の力を持つはずの刀は、バキリと刀身から砕けた。
「嘘だろ…おい」
どうしようもなくなり、とにかく1度距離を取ろうとするが、巨体の腕に、ビンタのような攻撃をくらい、叩き飛ばされる。
「………ガッッ!!」
社のすぐ横の木に激突し、背中を強打する。木は衝撃で折れた。
意識が朦朧とする。やばい。やらかした。
「あれは妖じゃあ無いぞ人の子よ」
切れかかる意識を繋ぎ止めるように凛とした声が聞こえる。横には巨体を冷たい目で見ながら、自称神の少女が立っていた。
「あれは神じゃ。妾と同じな。ひとつ違うのは穢に飲まれた事じゃ」
「………あん……?」
「神は妖に信仰されるものと人の子らに信仰されるものがある。中には妖に堕ちる道を選んだものがいるが、アレは違う。神のまま穢れた。もう二度と元には戻れん」
冷たく言い放つ少女の目は、やはり赤かった。
「……逃げろよ……ガキ……見ての通り俺は深手で刀も折れちまった。俺が殺されてる間にテメェは逃げられるだろう」
「残念だが、妾は事情で力が無い。戦えもしなければ、逃げ切る力も無い。このままだと残念だが妾とそなた、2人仲良くヤツの胃袋に収まるな」
「…………」
絶望的な状況に、乾いた笑いが出てしまった男に向けて、少女は言葉を紡ぐ。
「………一つだけ、2人とも助かる方法がある」
少女はそう言うと、手を前にだし呪文を唱える。すると地面に魔法陣のようなものが現れ、下から剣のようなものが出てきた。
「これを手に取れ、じゃがこの剣はいわく付きでのう。そなたがどうなるか、妾にもわからん。最悪死ぬかもしれん。どうする?」
「………んなもん決まってんだろうが…」
男は迷いなく剣を手に取った。
「殺す事は得意でも、まだ死ぬ事には慣れちゃあいねぇんだよ」
「違いないのう」
男と少女は獰猛に笑った。
……しかし、男は気が付く。
「抜けねぇじゃねぇかこの剣ッ!!」
「だから言ったであろう。いわく付きだと。どうなっても知らんと言っただろうが」
「抜けねぇ剣でどうやってあのデカブツ殺すんだよ!」
「適当に撲殺すれば良いじゃろうよ」
「………殴って殺せんのか?」
「何、そこは妾が保証しよう」
「あーそーかよ」
男はもう半分投げやりで巨体に突撃していく。
「おいバカ!それではさっきと同じように弾かれる………」
そこで少女は見た。巨体の腕が男をすり抜けた事に。
………見えてればどうって事ない。見えてれば俺に攻撃は当たらない。
どれだけそうしていただろう。気が付けば朝日が登り始めていた。
古びた社のそばには、神を自称する小さな少女と、血だらけの巨体を背に、剣を鞘に収めたまま立っている男がいた。
「俺は異能力者なんだよ」
霊体化、体や身につけているものが物体をすり抜けるようになる異能力だ。ただ足首から下は霊体化できない。唯一の弱点だ。
「いやぁ、妾が言うのはあれだが、そなたよく勝てたな。剣を鞘に収めたまま神を撲殺した奴を初めて見たぞ………ちょっと引くわ……」
「テメェが殺せるって言ったんだろうがっ!」
ブチ切れる男をよそに少女は続ける。
「ま、助けてくれた事には礼を言うぞ人の子よ。そういえば名乗りが遅れてもうたな。妾は紅葉。訳あってこんな姿だが、神様じゃ!」
紅葉はそう言うと、男を指さし続ける。
「そなたの名を聞かせよ!何!妾が知りたいのじゃ!」
「…………」
抜けない剣を持ち直しながら、男は返り血と朝日を同時に浴びながら言葉を紡いだ。
「谷透……谷透 修哉だ」
「妖刀狩り」として、妖も妖刀使いも殺して回っていた男…谷透。
彼は、何かが始まったのか、それとも何かが終わったのか、ともあれ何かが起きてしまった事を、朝日と返り血と共に、感じ取っていた。
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