ボーダーファンタジア~半人半魔の混ざり者、やがて最強に至る~

y=ボーダー

文字の大きさ
上 下
11 / 11

第10話 ミラの弟クロト②

しおりを挟む
『ぼく、大きくなったらお姉ちゃんの騎士ナイトになる!』
クロトは昔から私の側付きになるんだって、口癖のように言っていた。

お姉ちゃん、お姉ちゃんって甘えん坊だったのに、
最近は成長期に入ったのか、どんどんたくましくなっている。
小さい頃は可愛かったなぁ、と思わなくもないけれど、自慢の弟の成長に将来が楽しみだった。

今でも夢は変わっていないようで、『姉さんは俺が守る』なんて、凛々しい顔で言うものだから、少しドキッとした。

騎士ナイトは貴族のほまれ。
夢に必死で頑張る弟の姿に、いつしか私も励まされていた。

でも、一月ひとつき前のあの日、悪夢が、クロトを襲った。

何の変哲もない、いつも通りの日だった。
クロトは普段と同じように騎士学校に行き、私は高飛車だから冒険者学校に通う。
未来は明るいはずだった。

――――――――――――――――
『ただいま~』
いつも通り、明るく声を出す。
これを聴くとクロトは嬉しそうな顔で駆け寄ってくれるものだから、やりがいを感じていた。
でも、あの日は―――

私が帰宅して、屋敷のエントランスに入ったときには、僅かな異変を感じていた。
...おかしい。いつもだったらクロトの元気な声が聴こえるはず。―――『姉さん、おかえり!』って、凛々しくも優しげな声音で。
それが、...きこえない。
靴はあったから、帰ってきているはず。
それに、屋敷が嫌に静かだった。...不気味なほどに。

『私に気づかなかったな~、クロトめ、これじゃ騎士失格ね』
自然と、そう口に出していた。まるで、不安を押し殺すように。


気づいた時には、私は泣き崩れていた。
私はいつの間に自分の部屋に入ったのか、記憶が無い。
目の前には倒れて意識のないクロトがいる。
号泣しているのに、クロトが倒れているのに、他人事のように現実感が無かった。
俯瞰的に自分をみているような感覚。
すぐに別邸にいるメイドに医者の手配を伝え、
クロトの呼吸及び心臓の脈動確認を行う。
幸い、脈はあるようで危急ではないようだった。

号泣している自分も、それでも冷静に対処している自分も、全て他人事。自分が自分でない感覚。

その後医者によってクロトの診察が行われ、命に別状は無いとのこと。
原因は不明で、一時的に意識を失っているが、次第に意識を取り戻す。
そう言われた。
...次第っていつ?
今日?
アシタ?
あさって?
混乱した思考が、頭をぐるぐると駆け巡る。

......。
両親が帰ってきたときに、私はわれを取り戻した。
『幸い命に別状は無い。まずはクロトを信じて待とう。父さんのツテで腕の良い医者を探してみるから』

パパにそう諭された私は、ゆっくりとだけれど、状況を飲み込むことができた。

寝ているクロト...。
ケガは無い。痛くも無い。でも...、意識もない。

私は信じてクロトを待った。
まだか、まだかと待った。
最初の3日は学校を休んだ。
それ以降は両親に言われて渋々学校に行ったけれど、授業が終われば飛ぶように帰宅してクロトを待った。

両親も手を尽くした。
名医はもちろん、闇医者、万能薬、民間療法だって、ありとあらゆるものを試した。

それでも、クロトは目を覚まさなかった。
今から思えば、効果なんか無くて、詐欺だったものもあると思う。

...あるとき、父はとある占い師を連れてきた。
その占い師はとても高名で権威のある方だという。
見目みめは妙齢のきれいな女性。有名な冒険者の間で引っ張りだこらしい。

最初は胡散臭く思った。
でも話しているうちに、彼女の凄さが分かった。

私しか知らないことや、意識を失っている弟の最近の成績までズバリ言い当てた。
弟のテストが返却されたとき、ぴったりその通りだった。

それ以来私は彼女にすがった。
弟を、クロトを助けたい一心で。

最初、彼女は首を横に降っていた。
『この者を助けるには、あまりにも運命が閉ざされている』
そう言っていた。

それでも私は諦めなかった。
クロトを助けるためなら何でもすると、覚悟を決めて。

『この者には邪悪なる物怪が取り憑いている。これは私でも見たことのないほどの相当な存在だ。
貴方だけの運命では足りない。
もっと、有力な、未来あるものでなければ』

私は叫んだ。クロトを助けて欲しいと、必死に叫んだ。

『死ぬ覚悟は出来ている...ですか。...わかりました。覚悟があるというのなら、私の名誉に賭けて、この者の道を切り拓いてみせましょう』

私の想いが通じたのか、
それから彼女は三日三晩かけて、クロトを助ける方法を占ってくれたんだ。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。  そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!  気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?  するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。  だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──  でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!

異世界転生記 〜神話級ステータスと最高の努力で成り上がる物語〜

かきくけコー太郎・改
ファンタジー
必死に生活をしていた24歳独身サラリーマンの神武仁は、会社から帰宅する途中で謎の怪物に追いかけられてゴミ箱の中に隠れた。 そして、目が覚めると、仁は"異世界の神"と名乗る者によって異世界転生させられることになる。   これは、思わぬ出来事で異世界転生させられたものの、その世界で生きることの喜びを感じて"ルーク・グレイテスト"として、大切な存在を守るために最強を目指す1人の男の物語。 以下、新連載です!楽しんでいってください。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/586446069/543536391

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

世界中にダンジョンが出来た。何故か俺の部屋にも出来た。

阿吽
ファンタジー
 クリスマスの夜……それは突然出現した。世界中あらゆる観光地に『扉』が現れる。それは荘厳で魅惑的で威圧的で……様々な恩恵を齎したそれは、かのファンタジー要素に欠かせない【ダンジョン】であった! ※カクヨムにて先行投稿中

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...