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幕間1 Elena's Heavy Emotions

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夜、兄が寝静まったあと。
わたしは片手でバランスを取りながら、寝ているベッドから這い出た。

ベッドの際でしゃがみ込み、至近距離で兄の顔を直視する。残念ながら左目しか見えていないが、兄の幸せそうな顔を記憶に焼き付ける。
...両親と同じように、兄が私から居なくなってしまわないように。

30分ほど、ひとしきり眺めたあと、兄に口づけをした。
舌を入れ、歯の表面をなぞる。
ほんのり、さっき食べた夕食の味がした。
お兄ちゃんはいつも、『歯をよく磨けよ~』っていうけれど、お兄ちゃんの方が出来てないじゃん!
なーんて、思ってみたり。
こんなことしてる妹に、口出しされる筋合いはないと思うけれど。

わたしは兄とキスをしながら、兄の体内へとある刻印を施した。
...私のことを絶対に忘れない催眠。
必ず生きて帰ると誓わせる洗脳。

これは、私のたった一つ残された固有能力。
私の体液を任意の生物に飲ませることで発動できる。
潜在意識に働きかけるこの力は、特性上、魔物《モンスター》との戦闘には何の役にも立たない。
しかし対人間においては絶大な効果を発する。
何でも自分の思い通りになるからだ。
まあ、私は兄以外に使ったことはないけれど。
それに、兄に対しても生存本能を刺激する以外には使ってない。
あくまで、私の恋は本物であってほしいから。

...私はいつも兄に甘えてしまっている。
いや、甘えるでは済まないな。依存していると言ってもいい。
私は、兄無くしては生きられない。

だから願わくば、兄に平和と安寧があらんことを。


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幕間です。
時系列的には第1話 決意の直後の話となります。
ただ、エレナにとっては、どうやら日常的な行為のようで...?
おそらく、リーンがダンジョンに行く前日には必ずやっていそうですね。



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