537 / 567
8月20日 涼香の誕生日編
涼香の誕生日会にて 11
しおりを挟む
さすがに二百五十人前後の人数で、流しそうめんの竹が一つだけというのは難しい。本当は十個程度用意出来ればと思っていたのだが、水道とスペースの関係で、四個だけになった。
「ついこの間作ったばかりよ」
「いいから手を動かせ――違うそうじゃない。手をくねくねさせるな」
彩に怒られながらも、涼香は手を動かすのを止めない。
「いいではないの。これだけ人数がいれば私はなにもしなくても。本日の主役なのよ?」
「うっざ」
確かに涼香の言う通りなのだが、細かな調整は涼香に頼るしかないのだ。
「先輩もちゃんと働いてくださいよー」
「涼音はなにもしなくてもいいわよ。私が許可するわ」
「檜山は関係無いだろ」
いつも通り、眉間に皺を寄せている彩である。
「彩ちゃん、そんなに怒らないのー」
そんな彩の眉間を、軽くマッサージするかのように指を当てて動かすのは明里だった。
「邪魔!」
「あら、明里ではないの」
「あ、どうも」
「こんにちは~」
彩に手を払い除けられたのも気にせず、いつも通りのほほんとしている。
「なにしに来た?」
「彩ちゃんに会いに来たの~。だってあの時言ったでしょ~? さみ――」
「あぁあああああああぁああああ黙れええええええええええええ‼」
なにか言いかけていた明里の口を抑える彩。一体なにごとかと涼香と涼音は思ったが、赤くなっている彩のことだ。なにかいじられる要素が生まれたのだろうと勝手に、失礼にも考える。
それにしても、この二人の仲の良さは結構謎な部分が多い。
同級生の中で、唯一彩が心を許しているであろう人物が明里なのだ。
「ねえ先輩、なんでこの二人ってこんなに仲がいいんですか?」
「なんでだったかしら……。分からないわ」
涼香ですらよく分からない。彩と夏美の関係なら、ある程度知ってはいるが。
「本当はなにしにきた?」
そんな涼香と涼音の相談は聞こえなかった彩。明里にもう一度問いかける。
明里はもごもごと口を動かしながら、手に持った物を見せる。
「ああ、水漏れか」
そう言った彩は、明里からシートをひったくる。
「敷いとくからあっち行ってろ」
「彩ちゃん優しい~」
最後にそれだけを言って、素直に明里は離れていく。
時間にして数分。それなのに疲れが尋常ではない。
「こっち見んな!」
「面白かったわ」
「はい。意外でした」
「はあ? あ、おい檜山。夏美にはなにも言うなよ」
「やましいことしているの?」
「あたしは別に言いませんよ。てかそもそも話したくないですし」
「舐めてんのか?」
「あなた……なかなか面倒ね。せっかく可愛い顔をしているのに」
「うっざ……」
「ついこの間作ったばかりよ」
「いいから手を動かせ――違うそうじゃない。手をくねくねさせるな」
彩に怒られながらも、涼香は手を動かすのを止めない。
「いいではないの。これだけ人数がいれば私はなにもしなくても。本日の主役なのよ?」
「うっざ」
確かに涼香の言う通りなのだが、細かな調整は涼香に頼るしかないのだ。
「先輩もちゃんと働いてくださいよー」
「涼音はなにもしなくてもいいわよ。私が許可するわ」
「檜山は関係無いだろ」
いつも通り、眉間に皺を寄せている彩である。
「彩ちゃん、そんなに怒らないのー」
そんな彩の眉間を、軽くマッサージするかのように指を当てて動かすのは明里だった。
「邪魔!」
「あら、明里ではないの」
「あ、どうも」
「こんにちは~」
彩に手を払い除けられたのも気にせず、いつも通りのほほんとしている。
「なにしに来た?」
「彩ちゃんに会いに来たの~。だってあの時言ったでしょ~? さみ――」
「あぁあああああああぁああああ黙れええええええええええええ‼」
なにか言いかけていた明里の口を抑える彩。一体なにごとかと涼香と涼音は思ったが、赤くなっている彩のことだ。なにかいじられる要素が生まれたのだろうと勝手に、失礼にも考える。
それにしても、この二人の仲の良さは結構謎な部分が多い。
同級生の中で、唯一彩が心を許しているであろう人物が明里なのだ。
「ねえ先輩、なんでこの二人ってこんなに仲がいいんですか?」
「なんでだったかしら……。分からないわ」
涼香ですらよく分からない。彩と夏美の関係なら、ある程度知ってはいるが。
「本当はなにしにきた?」
そんな涼香と涼音の相談は聞こえなかった彩。明里にもう一度問いかける。
明里はもごもごと口を動かしながら、手に持った物を見せる。
「ああ、水漏れか」
そう言った彩は、明里からシートをひったくる。
「敷いとくからあっち行ってろ」
「彩ちゃん優しい~」
最後にそれだけを言って、素直に明里は離れていく。
時間にして数分。それなのに疲れが尋常ではない。
「こっち見んな!」
「面白かったわ」
「はい。意外でした」
「はあ? あ、おい檜山。夏美にはなにも言うなよ」
「やましいことしているの?」
「あたしは別に言いませんよ。てかそもそも話したくないですし」
「舐めてんのか?」
「あなた……なかなか面倒ね。せっかく可愛い顔をしているのに」
「うっざ……」
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
乙男女じぇねれーしょん
ムラハチ
青春
見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。
小説家になろうは現在休止中。
プレッシャァー 〜農高校球児の成り上がり〜
三日月コウヤ
青春
父親の異常な教育によって一人野球同然でマウンドに登り続けた主人公赤坂輝明(あかさかてるあき)。
父の他界後母親と暮らすようになり一年。母親の母校である農業高校で個性の強いチームメイトと生活を共にしながらありきたりでありながらかけがえのないモノを取り戻しながら一緒に苦難を乗り越えて甲子園目指す。そんなお話です
*進行速度遅めですがご了承ください
*この作品はカクヨムでも投稿しております
ほのぼの学園百合小説 キタコミ!
水原渉
青春
ごくごく普通の女子高生の帰り道。帰宅部の仲良し3人+1人が織り成す、青春学園物語。
ほんのりと百合の香るお話です。
ごく稀に男子が出てくることもありますが、男女の恋愛に発展することは一切ありませんのでご安心ください。
イラストはtojo様。「リアルなDカップ」を始め、たくさんの要望にパーフェクトにお応えいただきました。
★Kindle情報★
1巻:第1話~第12話、番外編『帰宅部活動』、書き下ろしを収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B098XLYJG4
2巻:第13話~第19話に、書き下ろしを2本、4コマを1本収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B09L6RM9SP
3巻:第20話~第28話、番外編『チェアリング』、書き下ろしを4本収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B09VTHS1W3
4巻:第29話~第40話、番外編『芝居』、書き下ろし2本、挿絵と1P漫画を収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BNQRN12P
5巻:第41話~第49話、番外編2本、書き下ろし2本、イラスト2枚収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CHFX4THL
6巻:第50話~第55話、番外編2本、書き下ろし1本、イラスト1枚収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9KFRSLZ
Chit-Chat!1:1話25本のネタを30話750本と、4コマを1本収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTHQX88H
★第1話『アイス』朗読★
https://www.youtube.com/watch?v=8hEfRp8JWwE
★番外編『帰宅部活動 1.ホームドア』朗読★
https://www.youtube.com/watch?v=98vgjHO25XI
★Chit-Chat!1★
https://www.youtube.com/watch?v=cKZypuc0R34
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる