上 下
99 / 520
6月

涼香の部屋にて 11

しおりを挟む
 ある日のこと。

「いっ……⁉」

 目薬をさそうとした涼音すずねが、薬液が落ちる瞬間に目を閉じる。目薬は涼音の目に入らず、瞼に阻まれる。

「相変わらず下手ね」

 その様子を、私は余裕でさせるわよ、とでも言いたげな表情で見ていた涼香りょうか

「今日はいけると思ったんですけどね……」
「ほら、来なさい。さしてあげるわ」

 ぽんぽんと太ももを叩くと、涼音はキャップを閉めた目薬を渡し、涼香の太ももの上に頭を乗せる。

「目を開けなさい」
「いや……、怖いじゃないですか」

 なかなか目を開けない涼音の目を指で広げて目薬を構える。

 半ば閉じそうになっている涼音の目を強引に開きながら涼香は目薬をさそうとするが――。

「あら?」
「先輩……キャップ、ついたまま……です」
「……慣れる練習よ」
「えぇ……」

 キャップを取った涼香が再び構える。

「いぃ⁉」
「大丈夫よ、目薬ではなく私を見て」
「目薬で見えないで――ぎゃあ!」

 なんの合図もなく落とされた薬液は、ビビる涼音の眼球にクリーンヒット。目薬のせいか、はたまた別の理由があるのか、涙目の涼音が涼香を睨む。

「なんで言ってくれないんですか!」
「次は反対ね」
「ちょっと聞いてくださ――あぁい!」
「はい、瞬き」

 涼香の声に従って、涼音は目をぱちぱちさせる。

 その後、しばらくの間涼音のほっぺをむにむにする涼香であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

夜の公園、誰かが喘いでる

ヘロディア
恋愛
塾の居残りに引っかかった主人公。 しかし、帰り道に近道をしたところ、夜の公園から喘ぎ声が聞こえてきて…

声劇・シチュボ台本たち

ぐーすか
大衆娯楽
フリー台本たちです。 声劇、ボイスドラマ、シチュエーションボイス、朗読などにご使用ください。 使用許可不要です。(配信、商用、収益化などの際は 作者表記:ぐーすか を添えてください。できれば一報いただけると助かります) 自作発言・過度な改変は許可していません。

全体的にどうしようもない高校生日記

天平 楓
青春
ある年の春、高校生になった僕、金沢籘華(かなざわとうか)は念願の玉津高校に入学することができた。そこで出会ったのは中学時代からの友人北見奏輝と喜多方楓の二人。喜多方のどうしようもない性格に奔放されつつも、北見の秘められた性格、そして自身では気づくことのなかった能力に気づいていき…。  ブラックジョーク要素が含まれていますが、決して特定の民族並びに集団を侮蔑、攻撃、または礼賛する意図はありません。

処理中です...