9 / 24
#9 眷属とはそして詐欺師とは
しおりを挟む
なんでもマスター曰く、悪魔の世界は弱肉強食が世の常であり、人間のように弱者を労わることはないのだそうです。弱きものを助けるヒーローはちゃんちゃらおかしいと笑っていました。
ですので、悪魔となった私も郷に入っては郷に従えということなわけです。
「貴様が戦っている間我はここで寝る」
マスターは桜の木の下に横になると、頭の後ろで手を組んで早速寝てしまいました。残された私はマスターの命令を反故にするわけにもいかないので、気の進まないまま瓶の蓋を開けました。
すると、瓶の中の小鳥もといインプがぴょんと飛び出し、私の手に乗って体を震わせます。
「はあーようやく出られたぜ、クソがッ!」
「え? え?」
「何鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてんだガキ!」
「だってそんな……」
そんな口調だとは思わないじゃないですか! こんな可愛らしい姿なのに!
って、騙されてはいけません。私は慌てて眼鏡をかけ直しました。
これで口調と見た目のギャップが埋まります。
「何見てんだっつてんだよダボ! お前の耳は飾りか?」
「ちゃ、ちゃんと聞こえています!」
「授業だか何だか知らねえが、俺様がお前のダシにされてたまるかよ。さっさとこんな所からおさらばさせてもらうぜ」
「でも授業が……!」
「付き合ってられっか!」
そう言うとインプは蝙蝠の翼を広げてパタパタと飛んでいき……見えない壁にぶつかって戻ってきました。
「おい! あそこで寝ている奴に障壁を解けと言ってこいクソ野郎!」
「自分で言えばいいじゃないですか。それに私はクソ野郎じゃないんですけど」
「言えるわけねえだろ! あいつはマリッドだ、俺様のようなインプなんて一捻りで潰されちまう!」
「駄目です。だって私、マスターにあなたを倒すように言われているんです。そして、『悪魔の目』を会得するのです」
「マスター? あいつが? おいおい、嘘だろ……」
突然インプが膝から崩れ落ちました。
「どうしたんです?」
「お前、もしやしてあいつの眷属か?」
「はい、私はマスターの眷属です」
「おいおい、ふざけんなよ。マリッドが眷属をつくるなんて聞いたこともねえ」
「そうですか? 悪魔は普通眷属を作りたがると学びましたが」
「それはイフリートまでの話だ。マリッドを普通に当てはめるな。あいつらはすべてにおいて規格外なんだからな」
確かに言われてみれば、私が暗記した『悪魔大全』の『悪魔の眷属』という項目で、イフリートまでの眷属についての解説は載っていましたが、私のようなマリッドの眷属については載っていませんでした。
「事情が変わった。不本意だがお前に協力してやる」
「私に倒されるってことですか?」
それは好都合です。できることなら、これからも力で捻じ伏せるやり方ではなく、このようなやり方で行きたいのですが。
「違う! 俺様がインプ共を倒すサポートをしてやるってことだよ」
「え?」
「お前、気が付いていないのか?」
「何にです? インプならあなたがそうじゃないですか」
「ここにいるのが俺様だけだと思ったら大間違いだ。ここにはそれこそ『犇めく』と言っていいくらいのインプ共がいる」
ハッとして目を凝らしてみると、桜の木の上に何やら小さい生き物が無数に跳ねているではありませんか。
「……」
思い返してみれば、マスターはインプを倒せと言っていましたが、数まで指定していませんでした。
ですので、悪魔となった私も郷に入っては郷に従えということなわけです。
「貴様が戦っている間我はここで寝る」
マスターは桜の木の下に横になると、頭の後ろで手を組んで早速寝てしまいました。残された私はマスターの命令を反故にするわけにもいかないので、気の進まないまま瓶の蓋を開けました。
すると、瓶の中の小鳥もといインプがぴょんと飛び出し、私の手に乗って体を震わせます。
「はあーようやく出られたぜ、クソがッ!」
「え? え?」
「何鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてんだガキ!」
「だってそんな……」
そんな口調だとは思わないじゃないですか! こんな可愛らしい姿なのに!
って、騙されてはいけません。私は慌てて眼鏡をかけ直しました。
これで口調と見た目のギャップが埋まります。
「何見てんだっつてんだよダボ! お前の耳は飾りか?」
「ちゃ、ちゃんと聞こえています!」
「授業だか何だか知らねえが、俺様がお前のダシにされてたまるかよ。さっさとこんな所からおさらばさせてもらうぜ」
「でも授業が……!」
「付き合ってられっか!」
そう言うとインプは蝙蝠の翼を広げてパタパタと飛んでいき……見えない壁にぶつかって戻ってきました。
「おい! あそこで寝ている奴に障壁を解けと言ってこいクソ野郎!」
「自分で言えばいいじゃないですか。それに私はクソ野郎じゃないんですけど」
「言えるわけねえだろ! あいつはマリッドだ、俺様のようなインプなんて一捻りで潰されちまう!」
「駄目です。だって私、マスターにあなたを倒すように言われているんです。そして、『悪魔の目』を会得するのです」
「マスター? あいつが? おいおい、嘘だろ……」
突然インプが膝から崩れ落ちました。
「どうしたんです?」
「お前、もしやしてあいつの眷属か?」
「はい、私はマスターの眷属です」
「おいおい、ふざけんなよ。マリッドが眷属をつくるなんて聞いたこともねえ」
「そうですか? 悪魔は普通眷属を作りたがると学びましたが」
「それはイフリートまでの話だ。マリッドを普通に当てはめるな。あいつらはすべてにおいて規格外なんだからな」
確かに言われてみれば、私が暗記した『悪魔大全』の『悪魔の眷属』という項目で、イフリートまでの眷属についての解説は載っていましたが、私のようなマリッドの眷属については載っていませんでした。
「事情が変わった。不本意だがお前に協力してやる」
「私に倒されるってことですか?」
それは好都合です。できることなら、これからも力で捻じ伏せるやり方ではなく、このようなやり方で行きたいのですが。
「違う! 俺様がインプ共を倒すサポートをしてやるってことだよ」
「え?」
「お前、気が付いていないのか?」
「何にです? インプならあなたがそうじゃないですか」
「ここにいるのが俺様だけだと思ったら大間違いだ。ここにはそれこそ『犇めく』と言っていいくらいのインプ共がいる」
ハッとして目を凝らしてみると、桜の木の上に何やら小さい生き物が無数に跳ねているではありませんか。
「……」
思い返してみれば、マスターはインプを倒せと言っていましたが、数まで指定していませんでした。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
前世を思い出したのでクッキーを焼きました。〔ざまぁ〕
ラララキヲ
恋愛
侯爵令嬢ルイーゼ・ロッチは第一王子ジャスティン・パルキアディオの婚約者だった。
しかしそれは義妹カミラがジャスティンと親しくなるまでの事。
カミラとジャスティンの仲が深まった事によりルイーゼの婚約は無くなった。
ショックからルイーゼは高熱を出して寝込んだ。
高熱に浮かされたルイーゼは夢を見る。
前世の夢を……
そして前世を思い出したルイーゼは暇になった時間でお菓子作りを始めた。前世で大好きだった味を楽しむ為に。
しかしそのクッキーすら義妹カミラは盗っていく。
「これはわたくしが作った物よ!」
そう言ってカミラはルイーゼの作ったクッキーを自分が作った物としてジャスティンに出した…………──
そして、ルイーゼは幸せになる。
〈※死人が出るのでR15に〉
〈※深く考えずに上辺だけサラッと読んでいただきたい話です(;^∀^)w〉
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げました。
※女性向けHOTランキング14位入り、ありがとうございます!!
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
婚約破棄されたら、既に婚約者のいる女性と婚約していることが判明しました
hikari
恋愛
ブルボン王国の王弟、アーチュウに婚約破棄されたサーラ。
アーチュウは既に婚約者がいるはずのブリジットと浮気をしていたのだ!
ブリジットは公爵令息と婚約破棄をしていたことが判明!!しかも、ブリジットは王立学園のクラスメイトだった!!
さらに、ブリジットはサーラが娼婦だという噂を流す。しかし、親友のカミーユと魔法の教師クリストフだけがサーラの味方となってくれた。サーラは魔法が苦手だが、クリストフはやさしく指導してくれる。
そしてサーラはクリストフに惚れていくが、クリストフは実は過去の記憶を失っていて!?
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる