前世で愛されなかった悪役令息は愛されたい

過去編

8．涼斗の終わり

　
　最近はもう、部屋にこもってひたすらにネットで小説や漫画を読み漁る生活をしていた。
　友達と遊びに行くことももうなくなったので、今までバイトで貯めた金は全部それらに費やした。
　それくらいしか、1人で何も考えず没頭できるものがなかったからだ。

　それはもう色々なジャンルの小説を読み漁っていた。SFも、ホラーも、恋愛も、ミステリーも。
　でもどうしても、BLにだけは手が出せなかった。
　読んでるうちに父さんのことを思い出して辛くなるんじゃないかと思っていたから。

　だけどネットの小説仲間にものすごくおすすめされてたBL小説があった。
　異世界物で、不憫な主人公が色んなイケメンたちに愛されて、当て馬からも守られて、だんだん心を開かれていく。
　そんな物語だと聞いていた。
　それを俺は興味本位で覗いてしまった。そんな、素敵な物語を心の何処かで望んでいたからかもしれなかった。

　明日は休日だし大丈夫だろうと読み進めていくうちに止めどころがわからなくなり、約10000話ほぼ読み尽くしてしまっていた。
　おかげで沈みかけていたはずの夕日がいつの間にか高い位置まで昇ってきていたことにも気づかなかった。

　自分の境遇と主人公の境遇を重ねて見てしまったところも多く、ときに泣いてときに笑って、でも心のなかで
　(そんな事現実にあるわけない)
　とも思ってたし、何より当て馬のはずの悪役が今の俺とそっくりで、最終的に処刑されてしまった事はものすごく心に来た。
　正直ここまで楽しめた小説は今までになかったし、BLだからといって手を出さなかった自分が馬鹿だったと反省してしまうほどだった。

　思わず教えてくれた小説仲間に感想を言いまくった。
　文面でも剣幕に引いてるんだろうなということがわかるような反応をしていた。

　そしてそいつに、このネット小説は書籍化されてて、その書籍で色んなキャラの細かい設定などが書かれてる。
　さらに、キャラ達がネット小説の中で放ったセリフの伏線がそれぞれ番外編として回収されてるんだと教えてもらい、今すぐ買ってくると言って家を飛び出した。

　地元の本屋はもう俺の噂が届いているのと同時に、学校の近くだから知っている人にあってもまずいと思い、遠くのでかい本屋に行くことにした。

　電車で45分かかりようやく本屋にたどり着き、目的の本を見つけた。
　その頃にはもう夕方になっていた。

　電車が来るまでキャラそれぞれの設定だけでも読んでおこうと思って周りを何も気にしていたかったのが悪いのだろうか。

『電車が参ります』のアナウンスとドンッという衝撃とともに、俺の体が後ろ向きに倒れていくのがわかった。
　…ﾌｫｫｫ‐ﾝという電車の汽笛とともに、最後に視界に入ったのは小説の悪役のキャラ設定のページと、人混みに紛れてぽっちゃりしたおじさんがこちらを見ながら『ざまぁみろ』と口パクしてニヤけた姿だった。

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　はい、というわけでですね。
　とりあえずは過去編が終わりということで…！！
　これから異世界編にちょっとずつ入っていこうと思ってますが、確か5話くらいから連続で2時間位？かけてリアタイで書かせていただいたので少し話がわかりにくかったところもあったと思います。

是非何かありましたら、コメントでご指南いただけると幸いです。