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器楽部
ピアノ三重奏曲第3番
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その楽譜はモーツァルト ピアノ三重奏曲第3番 変ロ長調 K.502だった。今度は本当にアマデウス モーツアルトだった。
この曲は今まで聞いた事はあったが、実際に弾いた事は無かった。
「これは?」
「モーツアルト」
「いや、それは分かってるって。なんでこの曲なん?」
と僕は瑞穂に聞いた。
この楽曲を三人でやる意図が僕にはまだ見えていなかった。
確かにこの曲はモーツアルトのピアノ三重奏曲の中では最高傑作と言われている楽曲だ。
なのでそれ自体は何ら問題はない。でもこの三人で最初に演奏する曲となぜこの曲を選んだのか? と僕はそれが聞きたかった。
「それはね、長沼先生がくれたん」
と瑞穂は意外な名前を口にした。
「長沼先生?」
何故ここでその名前が出てくるのか? 僕はちょっと気になった。
「うん」
「長沼先生って軽音の顧問やったけ?」
彼女の口にした先生は確か音楽担当の先生だったはず。
だから瑞穂は相談したのだろうか?
「ちゃう」
「ちゃうのになんで長沼先生が出てくんのや?」
「うちのクラスの担任や」
「え? そうなん?」
「うん。で、先生にこのメンツで一緒に演奏するって言ったらこの楽譜くれたん」
「ふ~ん」
僕と哲也は声を揃えて頷いた。
聞けば単純な事だったが、先生は何故この楽曲を選んだのだろうか? それを瑞穂に確認したかったが、面倒くさくなって聞くのを止めた。
「で、軽音楽部には入部届出したんやな?」
「ううん。出してへん」
瑞穂は首を軽く横に振った。
「え? なんで?」
僕は予想外の返事に驚いて聞き直したが、哲也は知っていたのか表情も変わらずに彼女の話を聞いていた。
「先生がね。そのメンツなら軽音楽部ではなく器楽部やって」
「器楽部? なんやそれ? この学校にそんな部活があったんや」
「ないよ」
瑞穂はあっさりと否定した。
「はぁ?」
僕と哲也は声を揃えて聞き返した。この二日で何度哲也とハモったことだろう。全世界ハモリ選手権があったら間違いなく僕ら二人は優勝するだろう。
で、哲也もこの話は初めて聞くようだった。
「あんたらホンマに仲ええな」
瑞穂は半ば呆れかえったように言った。
「存在せえへん部に入ってどうすんねん?」
哲也が聞いた。
「だから作るねん」
「何を?」
今度は僕が聞いた。
「だから器楽部を作るねん」
「はぁ!?」
またもや僕と哲也はハモってしまったが、それどころではなかった。瑞穂の真意が全く読めない僕たちは彼女の言っている事が理解できていなかった。
「だから、その器楽部を私たちが作るって言うてんねん。あんたら頭悪いな。何度も言わすなよ」
瑞穂は案外気が短いのかもしれない。しかし瑞穂の言わんとする事は理解できた……が、これから何をどうしていいのかは全く想像もできなかった。
「兎に角、長沼先生が『今日の放課後に音楽室に集合』って言ってたから話はそれからやね」
瑞穂はそういってあっさりとこの場を取りまとめた。
僕は『軽音楽部に入れと言ったり器楽部に入れと言ったり、一体全体この女は何を考えているんだ』と思わなくもなかったが、軽音楽部というのに今一つピンと来ていなかった事もあって瑞穂の言うことにあえて反論することはなかった。
結局、僕の中に沸き上がった疑問は、この場で解決することなく放課後まで持ち越しになった。
この曲は今まで聞いた事はあったが、実際に弾いた事は無かった。
「これは?」
「モーツアルト」
「いや、それは分かってるって。なんでこの曲なん?」
と僕は瑞穂に聞いた。
この楽曲を三人でやる意図が僕にはまだ見えていなかった。
確かにこの曲はモーツアルトのピアノ三重奏曲の中では最高傑作と言われている楽曲だ。
なのでそれ自体は何ら問題はない。でもこの三人で最初に演奏する曲となぜこの曲を選んだのか? と僕はそれが聞きたかった。
「それはね、長沼先生がくれたん」
と瑞穂は意外な名前を口にした。
「長沼先生?」
何故ここでその名前が出てくるのか? 僕はちょっと気になった。
「うん」
「長沼先生って軽音の顧問やったけ?」
彼女の口にした先生は確か音楽担当の先生だったはず。
だから瑞穂は相談したのだろうか?
「ちゃう」
「ちゃうのになんで長沼先生が出てくんのや?」
「うちのクラスの担任や」
「え? そうなん?」
「うん。で、先生にこのメンツで一緒に演奏するって言ったらこの楽譜くれたん」
「ふ~ん」
僕と哲也は声を揃えて頷いた。
聞けば単純な事だったが、先生は何故この楽曲を選んだのだろうか? それを瑞穂に確認したかったが、面倒くさくなって聞くのを止めた。
「で、軽音楽部には入部届出したんやな?」
「ううん。出してへん」
瑞穂は首を軽く横に振った。
「え? なんで?」
僕は予想外の返事に驚いて聞き直したが、哲也は知っていたのか表情も変わらずに彼女の話を聞いていた。
「先生がね。そのメンツなら軽音楽部ではなく器楽部やって」
「器楽部? なんやそれ? この学校にそんな部活があったんや」
「ないよ」
瑞穂はあっさりと否定した。
「はぁ?」
僕と哲也は声を揃えて聞き返した。この二日で何度哲也とハモったことだろう。全世界ハモリ選手権があったら間違いなく僕ら二人は優勝するだろう。
で、哲也もこの話は初めて聞くようだった。
「あんたらホンマに仲ええな」
瑞穂は半ば呆れかえったように言った。
「存在せえへん部に入ってどうすんねん?」
哲也が聞いた。
「だから作るねん」
「何を?」
今度は僕が聞いた。
「だから器楽部を作るねん」
「はぁ!?」
またもや僕と哲也はハモってしまったが、それどころではなかった。瑞穂の真意が全く読めない僕たちは彼女の言っている事が理解できていなかった。
「だから、その器楽部を私たちが作るって言うてんねん。あんたら頭悪いな。何度も言わすなよ」
瑞穂は案外気が短いのかもしれない。しかし瑞穂の言わんとする事は理解できた……が、これから何をどうしていいのかは全く想像もできなかった。
「兎に角、長沼先生が『今日の放課後に音楽室に集合』って言ってたから話はそれからやね」
瑞穂はそういってあっさりとこの場を取りまとめた。
僕は『軽音楽部に入れと言ったり器楽部に入れと言ったり、一体全体この女は何を考えているんだ』と思わなくもなかったが、軽音楽部というのに今一つピンと来ていなかった事もあって瑞穂の言うことにあえて反論することはなかった。
結局、僕の中に沸き上がった疑問は、この場で解決することなく放課後まで持ち越しになった。
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