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お正月の頃の物語
暇な人たち
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わざわざシゲルは僕の家まで迎えに来てくれた。こんな坂の上の我が家まで……と少し申し訳ない気持ちになった。
「朝までバイトやったんやろ?」
と僕が聞くと
「ああ」
とシゲルはブルゾンのポケットに手を突っ込んだまま応えた。
「寝たんか?」
「大丈夫や。五時間寝たから平気や」
シゲルは事もなげに言った。
僕なら絶対に五時間では起きられない。本当にシゲルは尊敬するほど元気だ。
「元気やなぁ」
「時間が勿体ないやん。寝てる時間がなんか損した気分になるわ」
そう言うとシゲルは歩き出した。
それにつられて僕も一緒に歩き出した。
「損ねぇ……俺は寝てる時間が一番幸せやけどなぁ」
「堕落しとぉなぁ」
シゲルはそう言って笑った。
「で、どこ行くん?」
「いや、他にする事無いからお茶でも飲みに行こうかなと思っただけや」
「なんやそれ。堕落しとるな」
「お前が言うな!」
シゲルが横顔で笑っていた。
――他にする事が無いなら寝てればいいのに――
と思ったが、シゲルは家にいるよりも外を出歩くのが好きなようだ。
多分あまり家には居たくないんだろう……と僕は勝手に想像した。
「こんな正月に開いてる店なんてあるんか?」
「あるある。三宮行ったらなんぼでも開いとぉで」
シゲルは自信たっぷりに言った。世の中はシゲルを筆頭に働き者が多い様だ。
僕たちがそんな話をしながら歩き出したら、背中から「亮平!」と聞き覚えのある声がした。
振り向くと坂の上に冴子が腰の手をやり、ふんぞり返って僕たちを文字通り見下して立っていた。
僕たちは立ち止まって冴子を見上げた。
「なんや冴子かぁ。こんなとこで何してんのや?」
と僕は声をかけた。
冴子は坂道を下りて来て
「宏美の家に行くとこやけど、あんたらは?」
と聞いてきた。
「シゲルと茶ぁでも飲みに行こうかなって話しててん」
「正月から茶ぁってホンマに要素無い奴等やな」
冴子は呆れたような口調で明らかに僕達をバカにして言った。
「なんやその要素って」
「モテる要素も欠片も無いなって言う事に決まっとぉやんか」
と冴子は僕たち二人を見て言い放った。
「そんなもん、勝手に決めるな」
と僕が冴子の嫌味に反論を試みていたらシゲルは笑って
「ホンマに要素ないよなぁ」
と聞き流していた。
「なんやねん、それ。お前まで……」
僕は抵抗を諦め冴子に聞いた。
「で、お前は宏美の家に何しに行くん?」
「なんでもええやん」
「どうせお前も暇やから、する事ないんやろう?」
「そんな事無いわ。おせちも食べるもん」
どうやら図星だったようだ。これで冴子もヒマ人の仲間入り決定だ。
「ひとんちのおせちたかってどうすんねん。お前もおいらと変わらへんやんか」
「あんたらと一緒にせんといて」
「ホンマに冴子も要素ないな」
シゲルはまた笑いながらそう言った。
僕たち三人はそんなくだらない事を言い合いながら一緒に歩き出した。
すると家の前で冴子を待っている宏美の姿が目に入った。
宏美も気が付いてこちらを見ていた。
「あれ? 亮ちゃんもシゲル君も一緒?」
と不思議そうに聞いてきた。
「こいつらはそこで会っただけや。何もする事がない究極のヒマ人や」
と冴子は吐き捨てるように言った。
本当に可愛げのない女だ。
「え、そうなん。だったらうちに来たらええやん」
と宏美は目を見開いてとても建設的な意見を述べた。
僕は断る理由が無かったが一応シゲルに視線で聞いてみた。
シゲルは黙って軽く頷いた。異論はない様だ。
冴子は納得しかねるような表情だったが何も言わなかった。
「朝までバイトやったんやろ?」
と僕が聞くと
「ああ」
とシゲルはブルゾンのポケットに手を突っ込んだまま応えた。
「寝たんか?」
「大丈夫や。五時間寝たから平気や」
シゲルは事もなげに言った。
僕なら絶対に五時間では起きられない。本当にシゲルは尊敬するほど元気だ。
「元気やなぁ」
「時間が勿体ないやん。寝てる時間がなんか損した気分になるわ」
そう言うとシゲルは歩き出した。
それにつられて僕も一緒に歩き出した。
「損ねぇ……俺は寝てる時間が一番幸せやけどなぁ」
「堕落しとぉなぁ」
シゲルはそう言って笑った。
「で、どこ行くん?」
「いや、他にする事無いからお茶でも飲みに行こうかなと思っただけや」
「なんやそれ。堕落しとるな」
「お前が言うな!」
シゲルが横顔で笑っていた。
――他にする事が無いなら寝てればいいのに――
と思ったが、シゲルは家にいるよりも外を出歩くのが好きなようだ。
多分あまり家には居たくないんだろう……と僕は勝手に想像した。
「こんな正月に開いてる店なんてあるんか?」
「あるある。三宮行ったらなんぼでも開いとぉで」
シゲルは自信たっぷりに言った。世の中はシゲルを筆頭に働き者が多い様だ。
僕たちがそんな話をしながら歩き出したら、背中から「亮平!」と聞き覚えのある声がした。
振り向くと坂の上に冴子が腰の手をやり、ふんぞり返って僕たちを文字通り見下して立っていた。
僕たちは立ち止まって冴子を見上げた。
「なんや冴子かぁ。こんなとこで何してんのや?」
と僕は声をかけた。
冴子は坂道を下りて来て
「宏美の家に行くとこやけど、あんたらは?」
と聞いてきた。
「シゲルと茶ぁでも飲みに行こうかなって話しててん」
「正月から茶ぁってホンマに要素無い奴等やな」
冴子は呆れたような口調で明らかに僕達をバカにして言った。
「なんやその要素って」
「モテる要素も欠片も無いなって言う事に決まっとぉやんか」
と冴子は僕たち二人を見て言い放った。
「そんなもん、勝手に決めるな」
と僕が冴子の嫌味に反論を試みていたらシゲルは笑って
「ホンマに要素ないよなぁ」
と聞き流していた。
「なんやねん、それ。お前まで……」
僕は抵抗を諦め冴子に聞いた。
「で、お前は宏美の家に何しに行くん?」
「なんでもええやん」
「どうせお前も暇やから、する事ないんやろう?」
「そんな事無いわ。おせちも食べるもん」
どうやら図星だったようだ。これで冴子もヒマ人の仲間入り決定だ。
「ひとんちのおせちたかってどうすんねん。お前もおいらと変わらへんやんか」
「あんたらと一緒にせんといて」
「ホンマに冴子も要素ないな」
シゲルはまた笑いながらそう言った。
僕たち三人はそんなくだらない事を言い合いながら一緒に歩き出した。
すると家の前で冴子を待っている宏美の姿が目に入った。
宏美も気が付いてこちらを見ていた。
「あれ? 亮ちゃんもシゲル君も一緒?」
と不思議そうに聞いてきた。
「こいつらはそこで会っただけや。何もする事がない究極のヒマ人や」
と冴子は吐き捨てるように言った。
本当に可愛げのない女だ。
「え、そうなん。だったらうちに来たらええやん」
と宏美は目を見開いてとても建設的な意見を述べた。
僕は断る理由が無かったが一応シゲルに視線で聞いてみた。
シゲルは黙って軽く頷いた。異論はない様だ。
冴子は納得しかねるような表情だったが何も言わなかった。
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