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さよならコンサート
三年生の演奏
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この卒部会の司会進行役の琴葉が、
「それではお待たせしました今回卒部される三年生による演奏を皆さんお聞きください。これが三年生最後の演奏です。心して聞いてください!」
と叫んだ。
ざわついていた音楽室が静かになった。
ピアノの前にヴァイオリンの彩音さんそしてヴィオラの千龍さん。その間に少し下がってコントラヴバスの石橋さんが並んだ。
もうこの三人の演奏を聞くのもこれが最後だと思うと少し寂しい。
「さっきのコンサートではこの三人でバッハはやってしまったのでそれはもうやりません。ハイドンもやりません」
と千龍さんが言った。
軽い笑い声が漏れた。このひとことで部員達の大方の予想は覆ってしまったとようだ。そういう僕もその線でやるのかなと思っていた。
「それでは一曲目。『ヘンデルの主題によるパッサカリア』をやります」
と千龍さんが言った。
部員の中から
「ヨハン・ハルヴォルセンかぁ」
という声が漏れた。
『パッサカリア』とは、緩やかな三拍子の元繰り返し現れる低音の旋律の上に、メロディーが次々と変化して展開してゆくバロック音楽の一形式だ。
原曲はヘンデルの『ハープシコード組曲第7番 HWV432の最終楽章』である。
これを元にヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲としてヨハン・ハルヴォルセンが編曲したのだが、『ヘンデルの主題を元にヨハン・ハルヴォルセンが作曲した』と言った方が良い程オリジナリティに満ち溢れている曲である。
そしてこの曲は、名曲である上に難しい曲でもある。
しかし流石、このメンバーである。最後の演奏にこの曲を選らんで僕たちに聞かせてくれるというのだ。三年生の自信とプライドを垣間見たような気がした。
この曲を知っている部員はこの曲名を聞いた瞬間どんな音が効けるか期待したに違いない。少なくとも僕は楽しみだった。やはりこの先輩たちのし好はシブイ。シブ過ぎる。
千龍さんと石橋さんが彩音さんに視線を送る。それを受けて彩音さんの弓が一瞬止まり一瞬で呼吸を合わせると、見事に息の合った三人の演奏が始まった。
出だしは彩音さんのヴァイオリンを千龍さんと石橋さんが寄り添うように支えて始まったが、すぐにヴァイオリンとヴィオラの熱を帯びた競演に変わり、それを石橋さんのコンバスが厚みを増す様に支えだした。
今までヴァイオリンとヴィオラの二重奏は今まで何度か耳にしてきたが、コントラバスが入っての三重奏を聞くのはこれが初めてだった。
音の厚みが予想以上に荘厳で僕好みの音だった。予想以上に石橋さんのコントラバスの音が響いていた。
そのコントラバスの重低音の絨毯の上で彩音さんと千龍さんがヴァイオリンとヴァイオラの見事な掛け合いを演じていた。
僕は演奏を聞きながら、その音自体がなんだかこの三人の関係そのものの様な気がしていた。
――うちの三年生はホンマに仲が良い――
といつも思っていたが、こうやって演奏を聞いていると改めてそれを実感する。その上、文句なくこの先輩達はこの曲を自分たちのモノにして音を創り上げていた。憎らしいほどの息の合った演奏を三人が楽しんでやっているのが伝わってくる。
いつまでも聞いていたいと思っていたが、残念ながらこの曲は六分程度で終わってしまった。
「それではお待たせしました今回卒部される三年生による演奏を皆さんお聞きください。これが三年生最後の演奏です。心して聞いてください!」
と叫んだ。
ざわついていた音楽室が静かになった。
ピアノの前にヴァイオリンの彩音さんそしてヴィオラの千龍さん。その間に少し下がってコントラヴバスの石橋さんが並んだ。
もうこの三人の演奏を聞くのもこれが最後だと思うと少し寂しい。
「さっきのコンサートではこの三人でバッハはやってしまったのでそれはもうやりません。ハイドンもやりません」
と千龍さんが言った。
軽い笑い声が漏れた。このひとことで部員達の大方の予想は覆ってしまったとようだ。そういう僕もその線でやるのかなと思っていた。
「それでは一曲目。『ヘンデルの主題によるパッサカリア』をやります」
と千龍さんが言った。
部員の中から
「ヨハン・ハルヴォルセンかぁ」
という声が漏れた。
『パッサカリア』とは、緩やかな三拍子の元繰り返し現れる低音の旋律の上に、メロディーが次々と変化して展開してゆくバロック音楽の一形式だ。
原曲はヘンデルの『ハープシコード組曲第7番 HWV432の最終楽章』である。
これを元にヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲としてヨハン・ハルヴォルセンが編曲したのだが、『ヘンデルの主題を元にヨハン・ハルヴォルセンが作曲した』と言った方が良い程オリジナリティに満ち溢れている曲である。
そしてこの曲は、名曲である上に難しい曲でもある。
しかし流石、このメンバーである。最後の演奏にこの曲を選らんで僕たちに聞かせてくれるというのだ。三年生の自信とプライドを垣間見たような気がした。
この曲を知っている部員はこの曲名を聞いた瞬間どんな音が効けるか期待したに違いない。少なくとも僕は楽しみだった。やはりこの先輩たちのし好はシブイ。シブ過ぎる。
千龍さんと石橋さんが彩音さんに視線を送る。それを受けて彩音さんの弓が一瞬止まり一瞬で呼吸を合わせると、見事に息の合った三人の演奏が始まった。
出だしは彩音さんのヴァイオリンを千龍さんと石橋さんが寄り添うように支えて始まったが、すぐにヴァイオリンとヴィオラの熱を帯びた競演に変わり、それを石橋さんのコンバスが厚みを増す様に支えだした。
今までヴァイオリンとヴィオラの二重奏は今まで何度か耳にしてきたが、コントラバスが入っての三重奏を聞くのはこれが初めてだった。
音の厚みが予想以上に荘厳で僕好みの音だった。予想以上に石橋さんのコントラバスの音が響いていた。
そのコントラバスの重低音の絨毯の上で彩音さんと千龍さんがヴァイオリンとヴァイオラの見事な掛け合いを演じていた。
僕は演奏を聞きながら、その音自体がなんだかこの三人の関係そのものの様な気がしていた。
――うちの三年生はホンマに仲が良い――
といつも思っていたが、こうやって演奏を聞いていると改めてそれを実感する。その上、文句なくこの先輩達はこの曲を自分たちのモノにして音を創り上げていた。憎らしいほどの息の合った演奏を三人が楽しんでやっているのが伝わってくる。
いつまでも聞いていたいと思っていたが、残念ながらこの曲は六分程度で終わってしまった。
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