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夏休みの部活
昼休み
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僕たち三人はそのまま音楽室で昼休憩をとりはじめた。
弁当箱を空けながら
「なあ、今日の俺の音どうやった?」
と哲也が聞いてきた。
「どうやったって言われてもなぁ……いつもと一緒やったんちゃう?」
と拓哉はリュックから弁当箱を出しながら応えた。
「まあ、悪くはなかったけど……ちゃんと譜面通りに音が出ていたんやないの?」
と僕も拓哉の意見と同じだった。
「そっかぁ……」
哲也の返事は何か心もとない……そう、心ここにあらずという感じがした。
僕はオフクロに作ってもらったサンドウィッチを頰張りながら哲也の表情を見ていた。
彼は僕の視線には気が付かないようで、黙って弁当箱を見つめていた。
気が付いたのは拓哉だった。
拓哉は僕と目が合うと『訳が分からないな』と言う風に首を傾げた。
僕達は静かに昼食を取り始めた。
暫くして清水琴葉と結城瑞穂が音楽室に戻ってきた。
「あぁ、あんたらもう弁当食べてんのや」
と瑞穂が僕たちを見て叫んだ。音楽室に急に華やいだ空気が漂った。
「ああ? もう昼休みやんか」
と拓哉が反論した。これが彼らの挨拶のようだ。
瑞穂と琴葉は僕たちの傍に座って、お弁当箱を取り出し食事を始めた。
「……なんか哲也君が悩んでいるみたいなんやけど……」
と拓哉が瑞穂に切り出した。
「なになに? 哲ちゃん、恋煩いか?」
と瑞穂が嬉しそうに聞いてきた。
「あほ、ちゃうわ」
と哲也は即座に否定した。
「なぁんだ。つまらん」
「いや、哲也は自分の音に納得していないみたいなんや」
と僕は瑞穂にさっき哲也が僕たちに、自分の音について聞いてきたことを教えた。
それを聞いた途端
「なんや? まだ悩んでんのや?」
と瑞穂は呆れたような顔をした。
「この頃、くよくよ考えるの止めたと思っていたのに……また再発したんかぁ?」
そう言って弁当のウィンナーを箸で突っつきながら哲也に不機嫌そうに顔を向けた。
この二人の関係だからできる表情だな。
そんなに親しくない関係でこの顔でなじられたら心が折れてしまうだろうなぁと僕はそのやり取りを見ながら思っていた。
そう言えば僕と冴子もこんな関係かもしれないなと、この二人の空気感が僕と冴子との空気感に少し似ている事に気が付いた。
まあ、冴子の場合はもっと辛辣な罵声を浴びせ倒すのだろうけど……。
そんな事を考えていたら瑞穂が僕の顔を見て
「亮ちゃんどう思うん?」
と聞いてきた。
この頃このパターンも増えてきたような気がする。哲也の事に関して最終的に瑞穂は僕に意見を求める。
ほとんどの場合僕も瑞穂の意見と同じだったりするので、結局は単に僕が瑞穂の意見に同意したという形になる場合が多い。
今回もそうだった。この二人のやり取りを聞きながら、僕はサンドウィッチを咀嚼しながら瑞穂のいう事に心の中でいちいち肯いていた。
僕はコーヒー牛乳を慌てて飲んでから答えた。
「まあ、本人が思う程下手ではないが……と言うか正確で上手いと思うけど、哲也はそんなんでは満足でけへんねんな?」
瑞穂の意見には同意して聞いていたが、そのまま同じように自分の意見を押し付けるような物言いはしたくなかった。
「満足でけへんっていう訳やないんや。ただ、何か物足りん。もう少し出せる音があるような気がすんねん」
と哲也は弁当箱を見つめながら呟くように言った。
「ああ、そういう事かぁ」
と言う声が背中越しに聞こえた。
弁当箱を空けながら
「なあ、今日の俺の音どうやった?」
と哲也が聞いてきた。
「どうやったって言われてもなぁ……いつもと一緒やったんちゃう?」
と拓哉はリュックから弁当箱を出しながら応えた。
「まあ、悪くはなかったけど……ちゃんと譜面通りに音が出ていたんやないの?」
と僕も拓哉の意見と同じだった。
「そっかぁ……」
哲也の返事は何か心もとない……そう、心ここにあらずという感じがした。
僕はオフクロに作ってもらったサンドウィッチを頰張りながら哲也の表情を見ていた。
彼は僕の視線には気が付かないようで、黙って弁当箱を見つめていた。
気が付いたのは拓哉だった。
拓哉は僕と目が合うと『訳が分からないな』と言う風に首を傾げた。
僕達は静かに昼食を取り始めた。
暫くして清水琴葉と結城瑞穂が音楽室に戻ってきた。
「あぁ、あんたらもう弁当食べてんのや」
と瑞穂が僕たちを見て叫んだ。音楽室に急に華やいだ空気が漂った。
「ああ? もう昼休みやんか」
と拓哉が反論した。これが彼らの挨拶のようだ。
瑞穂と琴葉は僕たちの傍に座って、お弁当箱を取り出し食事を始めた。
「……なんか哲也君が悩んでいるみたいなんやけど……」
と拓哉が瑞穂に切り出した。
「なになに? 哲ちゃん、恋煩いか?」
と瑞穂が嬉しそうに聞いてきた。
「あほ、ちゃうわ」
と哲也は即座に否定した。
「なぁんだ。つまらん」
「いや、哲也は自分の音に納得していないみたいなんや」
と僕は瑞穂にさっき哲也が僕たちに、自分の音について聞いてきたことを教えた。
それを聞いた途端
「なんや? まだ悩んでんのや?」
と瑞穂は呆れたような顔をした。
「この頃、くよくよ考えるの止めたと思っていたのに……また再発したんかぁ?」
そう言って弁当のウィンナーを箸で突っつきながら哲也に不機嫌そうに顔を向けた。
この二人の関係だからできる表情だな。
そんなに親しくない関係でこの顔でなじられたら心が折れてしまうだろうなぁと僕はそのやり取りを見ながら思っていた。
そう言えば僕と冴子もこんな関係かもしれないなと、この二人の空気感が僕と冴子との空気感に少し似ている事に気が付いた。
まあ、冴子の場合はもっと辛辣な罵声を浴びせ倒すのだろうけど……。
そんな事を考えていたら瑞穂が僕の顔を見て
「亮ちゃんどう思うん?」
と聞いてきた。
この頃このパターンも増えてきたような気がする。哲也の事に関して最終的に瑞穂は僕に意見を求める。
ほとんどの場合僕も瑞穂の意見と同じだったりするので、結局は単に僕が瑞穂の意見に同意したという形になる場合が多い。
今回もそうだった。この二人のやり取りを聞きながら、僕はサンドウィッチを咀嚼しながら瑞穂のいう事に心の中でいちいち肯いていた。
僕はコーヒー牛乳を慌てて飲んでから答えた。
「まあ、本人が思う程下手ではないが……と言うか正確で上手いと思うけど、哲也はそんなんでは満足でけへんねんな?」
瑞穂の意見には同意して聞いていたが、そのまま同じように自分の意見を押し付けるような物言いはしたくなかった。
「満足でけへんっていう訳やないんや。ただ、何か物足りん。もう少し出せる音があるような気がすんねん」
と哲也は弁当箱を見つめながら呟くように言った。
「ああ、そういう事かぁ」
と言う声が背中越しに聞こえた。
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