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No.8 ※他者視点有+自慰有
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マジ泣きしたわたしは、大きなバスタオルに包まれて、玉藻さんによるお姫様抱っこによって、ベッドまで運ばれて来ました!!
イった瞬間を目撃されただけで恥ずかしさのあまり死ねるのに、エイルさんがくれた液体のせいで体が未だ動かず、玉藻さんが真っ赤な顔で世話を焼いてくれています(今現在)
く っ 、 殺 せ !
ホント死にたい……。
毛布に包まったりとか、丸くなって顔を隠したりとか一切出来ないんです!
体が動かないせいで!
濡れた体を拭いてくれる玉藻さんに感謝したい……でも素直に感謝出来ない!!
だってタオルが擦れるだけでビクッてなっちゃったから……。
玉藻さんにそういう気がないのはわかってる、知ってる!
でもアソコとか敏感になってる所拭かれるのはアカンかった!
玉藻さんが目を逸らしながら拭いてくれてたけど、体は跳ねちゃったし声が出ちゃったしでホント土下座ものなんですけど……。
そしてこの土下座はエイルさんも一緒にすべきだと思う。
「ひぐ……、ホント、すいませんホン……ひくっ、すいませんいっそ殺してください」
「落ち着け、主。大丈夫だ、嗚呼、大丈夫だから」
すいません、玉藻さんの方が落ち着いてないのがよくわかります。
体拭いたのにもう1回バスタオル持ってきたり、バスローブの紐を力いっぱい絞めてわたしがカエルの潰れたような声を出したり、水持ってきますって言ってコップに水入れるの忘れたり……。
今も声が上擦ってますがな。
玉 藻 さ ん ど れ だ け う ぶ な の ! ?
逆にわたしが冷静になったわ。
まあ、この話での被害者は確実に玉藻さんだな。
溢れた涙を拭うことは出来ないからそのままだけど、わたしは目だけをしっかりと玉藻さんの方に向けた。
「本当にみっともないもの見せちゃってすいませんでした。出来たら忘れていただけると有り難いです」
「あ……う……」
「でも玉藻さんのおかげでベッドまで来れたし、面倒かけちゃったけど……助かりました。ありがとうございました」
「…………いえ、お気になさらず」
漸く玉藻さんも落ち着いたのか、無表情に近い顔になっている。
だけど、どこか怒っているように感じた。
ベッドに仰向けのまま転がるあたしの側に立つと、じっと見下ろし流れた涙の跡を指の背でそっと拭ってくれた。
その指は優しくて、なんだか胸がじんわりと温かくなる。
「……あの、エイルさんを怒らないでくださいね?」
「……ですが、あれは……」
「あれは……まあ、半分は同意の上でなんで……」
「は……?」
どうしてああなったのかを説明すれば、玉藻さんの眉が寄せられる。
いやホント、一服盛られたけど魔力あげるって言ったのわたしですし。
あ ん な こ と さ れ る な ん て 思 わ な か っ た け ど ね !
渋い顔をしているのは、きっと内心で色々考え込んでいるからだろうなぁ……。
なんか玉藻さんに精神的ストレス与えまくりじゃね?
ホント今度何かでお詫びしなくちゃ。
渋い顔をしつつも玉藻さんはわたしに布団を被せてくれて、そしてふかぁく溜め息を吐いた。
「とりあえず、今回はわかりました。ですが奴隷の管理はしっかりお願いします」
「はい……」
「……今日はお疲れでしょう。お休みください」
「はい、明日からも宜しくお願いしますね」
ぎこちなくではあるが玉藻さんが微笑んでくれたので、わたしも胸を撫で下ろして微笑み返す。
ああ良かった。
契約解除したいとか言われなくて。
性格が合わないとかあるけれど、嫌われたいわけじゃないからね。
安心したら眠気がぐぐーっと押し寄せてきた。
そうだよ、結構長い時間起きてたようなもんだし。
そりゃ眠くもなるよねぇ……。
あー…………。
「おやすみなさぁい……」
「はい、おやすみなさいませ……」
すぅーっと眠りの世界に吸い込まれていくわたしを、玉藻さんが静かに見下ろしていた。
その瞳には優しさだけじゃない、幾つもの感情が渦巻く複雑な色を湛えていることに、わたしは気付かなかった。
~~~~~~~~~~
エイル視点
~~~~~~~~~~
真っ赤な顔をした玉藻に、主様が抱えられて部屋へと戻っていった。
あの玉藻が、今日は表情豊かなものだ。
「……主様のせい、よね」
薔薇の花びらが浮かぶ浴槽に身を沈め1人笑う。
あの可愛らしい主様の魅力に右往左往させられるその姿は、冷徹な狐形無しだ。
同じ主に一緒に買われることがなかったせいで、冷徹な狐が見せる様々な表情を初めて見たが……面白い。
ああしていればあの狐が昔どこぞの大国を滅ぼす原因だったとは、誰も思うまい。
わたしとてちょっとした興味で調べただけだし、詳しくはないが……。
その日記に記されていた性格と今の彼とはまるで別人だ。
そして奴隷になった理由も知らない。
まあ、想像はつくけれどね。
玉藻には大して興味はないから、どうでもいい話だわ。
しかし主様は可愛いものね。
異世界人だと言う彼女の様子を観察していたけれど、基本的な知識はなくともそれなりの考え方が出来るみたいだし。
奴隷であるわたし達を無碍に扱うつもりはないみたいだし。
優しい子ね。
ああいう子ならわたしも楽しく過ごせそうだわ。
1人愉しく笑っていると不意に扉が開かれ、そこには憮然とした表情の玉藻が立っていた。
「あら、主様は?」
「寝た」
「うふふ、今日は疲れたでしょうしねぇ」
「貴様……どういうつもりだ」
「あら、何がかしら?」
玉藻はとぼけるわたしに怒っているようだ。
それがわかっていても対応は変えないけれど。
「あまり調子に乗るなよ……?」
「ふふ、怖い怖い」
顰めっ面のまま玉藻が扉を閉めて去っていくのを見送る。
ああ、愉しい。
「……そういえば……」
ふと主様から感じる魔力を思い出す。
どこかで感じたことのある、懐かしい感じがしたあの魔力。
甘くて身体中に染み渡る魔力に含まれた、ほんの僅かな懐かしさ。
……そんなに気にすることでもないか。
悪意は一切感じられないし。
主様と一緒にいればこれから先、とても愉しそうだということは間違いないだろう。
わたしの好奇心を満たしてね、主様。
ざばり、とお湯を揺らして立ち上がると隅に置いておいた小瓶を手に、ワクワクと心踊らせながらわたしは浴室を後にした。
~~~~~~~~~~
玉藻視点
~~~~~~~~~~
こんなはずじゃなかった。
俺の心境はこの言葉に尽きる。
俺の名前は玉藻。
狐族の1頭である。
性別は雄であり、奴隷となって早数10年が経った。
奴隷になる前の俺はのぼせ上がっていたと言っても過言ではない。
9つの尾を持つ九尾の狐へと進化し、他者を省みること無く我が儘を通し、力を使って好き勝手に生きていた。
……その罰が当たったのだろう。
俺は力を削がれ、狐族の中でも最強に匹敵する力を失い、そして今……奴隷として生きている。
俺が奴隷になったのは当然の如く、力を取り戻す為だ。
奴隷となり、上手く主に取り入ることで少なくない魔力を受け取ってきた。
それは奴隷契約における最低限以上の量であり、失った力の僅かばかりを補充してきた。
他者とは使うものである。
《主》も俺でいい思いをし、その対価として魔力を得るのは当然の等価交換である。
幾ら九尾の狐としての力の幾ばくかを失ったとしても、俺は弱くなく、そして誰から見ても賞賛される外見をしている。
のぼせ上がっていると、言うかもしれないが……これはただの事実である。
昔のように、前面に押し出して好き勝手をするつもりは今はないが、使えるものは使う。
そうして俺はいつか再び九尾の狐として返り咲くのだ。
だから今奴隷であることは、ただの通過点でしかない。
奴隷であることで、通常自分で高められる分プラス、主からも魔力を受け取れる。
例えそれが僅かな量であったとしても、ないよりはある方が確かにいい。
人族の諺に『人を隠すなら人の中』という言葉がある。
狐族の中にも俺を恨む奴がいる。
そしてそれは他種族の中にもいるだろう。
俺はそれだけのことをしてきたのだから。
だが、力の大半を失った俺としては面倒になるのはごめんだ。
昔は他者を傅かせてきた俺だからこそ、他者に傅く立場にいるとは誰も想像しないだろう。
失った魔力の補充と、面倒から隠れる為に俺は《奴隷》になった。
それだけの為だった……。
だが、今日新しく主となった女は……何故か俺を惹き付ける。
今までの《主》とて、俺の機嫌を取り、俺の前ではしたなく股を開く者もいた。
それを冷めた感情で見下ろし、蔑み、馬鹿にしてきた。
新しい主には……それが出来ず困惑する。
何故こんなにも心が騒ぐのか。
あの女が絡むことだけは、平静を保てない。
硬いベッドに寝転がり目を閉じるが、閉じた瞼の裏にもあの女の顔が、身体がこびり付いている。
顔は可愛いとは思うが、他者に埋もれてしまうだろう。
傾国の女とは程遠い。
他にも見目のいい女はゴロゴロと存在している。
だが、くるくる変わる表情に、心の内を全く隠し切れない表情に、飽きない。
今まで生きてきた中にもそういう奴はいたのに。
何故かあの女だけは、俺の心(なか)に残る。
面白くない。
面白くないといえば、あの女性同性愛者(エレン)は気に食わない。
あの女に擦り寄り、俺よりあの女の近くにいる。
買い物の時もあの女と手を繋ぎ仲睦まじくしていた。
しまいには俺をからかってきやがった。
何故俺が女の下着に慌てなくてはいけなかったのか。
……だが、見せられた下着に身を包んだあの女の姿を想像しただけで、俺の何かが反応してしまったことは事実だった。
女も男も、他者が俺|に(・)欲情することはあっても、俺から他者に欲情したことなどなかった。
他者など俺の性的欲求を発散させるための器でしかなかった。
それがあの女の身を包む下着を見て、その姿を想像しただけで、思わず唾を飲み込むことになるとは。
あの女の魔力がどこか甘いせいだろうか。
契約の時に俺の中で混じり合ったあの女の魔力は、まるで甘味のようだった。
あの一瞬、もっと欲しいと思う自身を理性で押し止められたのに……。
女性同性愛者(エイル)が浴場であの女を啼かせていたせいで、絶頂に達したあの姿を見たせいで、酷く飢えていることに気が付いた。
あの女の身体に触れたい。
あの女を啼かせたい。
あの女の蜜はどれ程甘いのだろうか。
あの女を味わいたい。
抱き上げた体は軽く、俺が組み伏せれば逃げることなど出来ないだろう。
この手で、唇で、舌で、そして俺の雄であの女の全てを組み伏せたい。
「……くそっ……」
苛立ちながら体を横向け、夜着の合わせから手を入れて己の雄芯を掴む。
ソコは既に固く勃ち上がり痛いぐらいだ。
目を閉じて手で擦り上げる。
(『あっ……やだ……っ』)
耳に残っていたあの女の甘い声が再生される。
俺の下で淫らに揺れる身体が勝手に脳内で作られる。
(『や、玉藻さぁん……っ』)
あの女が俺の名を上擦った声で呼ぶだけで、ゾクゾクする。
嗚呼……足りない……。
(『玉藻、さ……も……っ、ダメ……ぇ』)
雄芯からは汁が溢れ、布団の中から粘着質な音が聞こえる。
あの女の蜜壺にしゃぶりついたら、どんな声を上げるだろうか。
浴室の扉を開けた瞬間、目に飛び込んできたあの女の身体……。
声……。
恍惚とした表情……。
そして雄(おとこ)を誘うようにひくつく蜜壺が……欲しい。
(『きゃ……っ、あああっ!』)
俺の雄芯をあの女の奥の奥まで挿し込んで、その柔らかさを味わいたい。
あの女を心ゆくまで突き上げて、食べ尽くしたい。
あの女も俺を欲しがればいい。
俺だけがあの女を欲しがるなんて……許せない。
瞼の裏であの女を揺さぶり最奥までを突き上げる。
あの小さな蜜壺はきっと俺の雄芯に絡みつき、俺を昂らせるだろう。
甘い声で啼き、俺にしがみついて俺を求めるあの女の姿はなんと甘美なものだろう。
俺を求めろ、欲しがれ。
あの女を思うがまま突き上げ、その奥に精を溢れるほど吐き出したい。
(『玉藻さ、ぁんっ、も……奥にっ、出してぇ……!』)
涙で濡れた目で見つめられぶるりと体が震えた。
「くぅ……!」
腰を揺らして己の精を掌で受け、荒い息を吐く。
嗚呼……この俺が女を想像して己を慰めるなんて……。
べったりと汚れた自分の手を見つめ、舌打ちをする。
その汚れを払うように手を振れば、力によって跡形も無く消えた。
「……くそっ!」
手早く夜着を直し布団を頭まで被る。
そうしてやり切れない思いと欲望に身体を燻らせながら、夢の世界を求めて目をキツく閉じた──。
嗚呼……こんなはずじゃなかったのに……。
イった瞬間を目撃されただけで恥ずかしさのあまり死ねるのに、エイルさんがくれた液体のせいで体が未だ動かず、玉藻さんが真っ赤な顔で世話を焼いてくれています(今現在)
く っ 、 殺 せ !
ホント死にたい……。
毛布に包まったりとか、丸くなって顔を隠したりとか一切出来ないんです!
体が動かないせいで!
濡れた体を拭いてくれる玉藻さんに感謝したい……でも素直に感謝出来ない!!
だってタオルが擦れるだけでビクッてなっちゃったから……。
玉藻さんにそういう気がないのはわかってる、知ってる!
でもアソコとか敏感になってる所拭かれるのはアカンかった!
玉藻さんが目を逸らしながら拭いてくれてたけど、体は跳ねちゃったし声が出ちゃったしでホント土下座ものなんですけど……。
そしてこの土下座はエイルさんも一緒にすべきだと思う。
「ひぐ……、ホント、すいませんホン……ひくっ、すいませんいっそ殺してください」
「落ち着け、主。大丈夫だ、嗚呼、大丈夫だから」
すいません、玉藻さんの方が落ち着いてないのがよくわかります。
体拭いたのにもう1回バスタオル持ってきたり、バスローブの紐を力いっぱい絞めてわたしがカエルの潰れたような声を出したり、水持ってきますって言ってコップに水入れるの忘れたり……。
今も声が上擦ってますがな。
玉 藻 さ ん ど れ だ け う ぶ な の ! ?
逆にわたしが冷静になったわ。
まあ、この話での被害者は確実に玉藻さんだな。
溢れた涙を拭うことは出来ないからそのままだけど、わたしは目だけをしっかりと玉藻さんの方に向けた。
「本当にみっともないもの見せちゃってすいませんでした。出来たら忘れていただけると有り難いです」
「あ……う……」
「でも玉藻さんのおかげでベッドまで来れたし、面倒かけちゃったけど……助かりました。ありがとうございました」
「…………いえ、お気になさらず」
漸く玉藻さんも落ち着いたのか、無表情に近い顔になっている。
だけど、どこか怒っているように感じた。
ベッドに仰向けのまま転がるあたしの側に立つと、じっと見下ろし流れた涙の跡を指の背でそっと拭ってくれた。
その指は優しくて、なんだか胸がじんわりと温かくなる。
「……あの、エイルさんを怒らないでくださいね?」
「……ですが、あれは……」
「あれは……まあ、半分は同意の上でなんで……」
「は……?」
どうしてああなったのかを説明すれば、玉藻さんの眉が寄せられる。
いやホント、一服盛られたけど魔力あげるって言ったのわたしですし。
あ ん な こ と さ れ る な ん て 思 わ な か っ た け ど ね !
渋い顔をしているのは、きっと内心で色々考え込んでいるからだろうなぁ……。
なんか玉藻さんに精神的ストレス与えまくりじゃね?
ホント今度何かでお詫びしなくちゃ。
渋い顔をしつつも玉藻さんはわたしに布団を被せてくれて、そしてふかぁく溜め息を吐いた。
「とりあえず、今回はわかりました。ですが奴隷の管理はしっかりお願いします」
「はい……」
「……今日はお疲れでしょう。お休みください」
「はい、明日からも宜しくお願いしますね」
ぎこちなくではあるが玉藻さんが微笑んでくれたので、わたしも胸を撫で下ろして微笑み返す。
ああ良かった。
契約解除したいとか言われなくて。
性格が合わないとかあるけれど、嫌われたいわけじゃないからね。
安心したら眠気がぐぐーっと押し寄せてきた。
そうだよ、結構長い時間起きてたようなもんだし。
そりゃ眠くもなるよねぇ……。
あー…………。
「おやすみなさぁい……」
「はい、おやすみなさいませ……」
すぅーっと眠りの世界に吸い込まれていくわたしを、玉藻さんが静かに見下ろしていた。
その瞳には優しさだけじゃない、幾つもの感情が渦巻く複雑な色を湛えていることに、わたしは気付かなかった。
~~~~~~~~~~
エイル視点
~~~~~~~~~~
真っ赤な顔をした玉藻に、主様が抱えられて部屋へと戻っていった。
あの玉藻が、今日は表情豊かなものだ。
「……主様のせい、よね」
薔薇の花びらが浮かぶ浴槽に身を沈め1人笑う。
あの可愛らしい主様の魅力に右往左往させられるその姿は、冷徹な狐形無しだ。
同じ主に一緒に買われることがなかったせいで、冷徹な狐が見せる様々な表情を初めて見たが……面白い。
ああしていればあの狐が昔どこぞの大国を滅ぼす原因だったとは、誰も思うまい。
わたしとてちょっとした興味で調べただけだし、詳しくはないが……。
その日記に記されていた性格と今の彼とはまるで別人だ。
そして奴隷になった理由も知らない。
まあ、想像はつくけれどね。
玉藻には大して興味はないから、どうでもいい話だわ。
しかし主様は可愛いものね。
異世界人だと言う彼女の様子を観察していたけれど、基本的な知識はなくともそれなりの考え方が出来るみたいだし。
奴隷であるわたし達を無碍に扱うつもりはないみたいだし。
優しい子ね。
ああいう子ならわたしも楽しく過ごせそうだわ。
1人愉しく笑っていると不意に扉が開かれ、そこには憮然とした表情の玉藻が立っていた。
「あら、主様は?」
「寝た」
「うふふ、今日は疲れたでしょうしねぇ」
「貴様……どういうつもりだ」
「あら、何がかしら?」
玉藻はとぼけるわたしに怒っているようだ。
それがわかっていても対応は変えないけれど。
「あまり調子に乗るなよ……?」
「ふふ、怖い怖い」
顰めっ面のまま玉藻が扉を閉めて去っていくのを見送る。
ああ、愉しい。
「……そういえば……」
ふと主様から感じる魔力を思い出す。
どこかで感じたことのある、懐かしい感じがしたあの魔力。
甘くて身体中に染み渡る魔力に含まれた、ほんの僅かな懐かしさ。
……そんなに気にすることでもないか。
悪意は一切感じられないし。
主様と一緒にいればこれから先、とても愉しそうだということは間違いないだろう。
わたしの好奇心を満たしてね、主様。
ざばり、とお湯を揺らして立ち上がると隅に置いておいた小瓶を手に、ワクワクと心踊らせながらわたしは浴室を後にした。
~~~~~~~~~~
玉藻視点
~~~~~~~~~~
こんなはずじゃなかった。
俺の心境はこの言葉に尽きる。
俺の名前は玉藻。
狐族の1頭である。
性別は雄であり、奴隷となって早数10年が経った。
奴隷になる前の俺はのぼせ上がっていたと言っても過言ではない。
9つの尾を持つ九尾の狐へと進化し、他者を省みること無く我が儘を通し、力を使って好き勝手に生きていた。
……その罰が当たったのだろう。
俺は力を削がれ、狐族の中でも最強に匹敵する力を失い、そして今……奴隷として生きている。
俺が奴隷になったのは当然の如く、力を取り戻す為だ。
奴隷となり、上手く主に取り入ることで少なくない魔力を受け取ってきた。
それは奴隷契約における最低限以上の量であり、失った力の僅かばかりを補充してきた。
他者とは使うものである。
《主》も俺でいい思いをし、その対価として魔力を得るのは当然の等価交換である。
幾ら九尾の狐としての力の幾ばくかを失ったとしても、俺は弱くなく、そして誰から見ても賞賛される外見をしている。
のぼせ上がっていると、言うかもしれないが……これはただの事実である。
昔のように、前面に押し出して好き勝手をするつもりは今はないが、使えるものは使う。
そうして俺はいつか再び九尾の狐として返り咲くのだ。
だから今奴隷であることは、ただの通過点でしかない。
奴隷であることで、通常自分で高められる分プラス、主からも魔力を受け取れる。
例えそれが僅かな量であったとしても、ないよりはある方が確かにいい。
人族の諺に『人を隠すなら人の中』という言葉がある。
狐族の中にも俺を恨む奴がいる。
そしてそれは他種族の中にもいるだろう。
俺はそれだけのことをしてきたのだから。
だが、力の大半を失った俺としては面倒になるのはごめんだ。
昔は他者を傅かせてきた俺だからこそ、他者に傅く立場にいるとは誰も想像しないだろう。
失った魔力の補充と、面倒から隠れる為に俺は《奴隷》になった。
それだけの為だった……。
だが、今日新しく主となった女は……何故か俺を惹き付ける。
今までの《主》とて、俺の機嫌を取り、俺の前ではしたなく股を開く者もいた。
それを冷めた感情で見下ろし、蔑み、馬鹿にしてきた。
新しい主には……それが出来ず困惑する。
何故こんなにも心が騒ぐのか。
あの女が絡むことだけは、平静を保てない。
硬いベッドに寝転がり目を閉じるが、閉じた瞼の裏にもあの女の顔が、身体がこびり付いている。
顔は可愛いとは思うが、他者に埋もれてしまうだろう。
傾国の女とは程遠い。
他にも見目のいい女はゴロゴロと存在している。
だが、くるくる変わる表情に、心の内を全く隠し切れない表情に、飽きない。
今まで生きてきた中にもそういう奴はいたのに。
何故かあの女だけは、俺の心(なか)に残る。
面白くない。
面白くないといえば、あの女性同性愛者(エレン)は気に食わない。
あの女に擦り寄り、俺よりあの女の近くにいる。
買い物の時もあの女と手を繋ぎ仲睦まじくしていた。
しまいには俺をからかってきやがった。
何故俺が女の下着に慌てなくてはいけなかったのか。
……だが、見せられた下着に身を包んだあの女の姿を想像しただけで、俺の何かが反応してしまったことは事実だった。
女も男も、他者が俺|に(・)欲情することはあっても、俺から他者に欲情したことなどなかった。
他者など俺の性的欲求を発散させるための器でしかなかった。
それがあの女の身を包む下着を見て、その姿を想像しただけで、思わず唾を飲み込むことになるとは。
あの女の魔力がどこか甘いせいだろうか。
契約の時に俺の中で混じり合ったあの女の魔力は、まるで甘味のようだった。
あの一瞬、もっと欲しいと思う自身を理性で押し止められたのに……。
女性同性愛者(エイル)が浴場であの女を啼かせていたせいで、絶頂に達したあの姿を見たせいで、酷く飢えていることに気が付いた。
あの女の身体に触れたい。
あの女を啼かせたい。
あの女の蜜はどれ程甘いのだろうか。
あの女を味わいたい。
抱き上げた体は軽く、俺が組み伏せれば逃げることなど出来ないだろう。
この手で、唇で、舌で、そして俺の雄であの女の全てを組み伏せたい。
「……くそっ……」
苛立ちながら体を横向け、夜着の合わせから手を入れて己の雄芯を掴む。
ソコは既に固く勃ち上がり痛いぐらいだ。
目を閉じて手で擦り上げる。
(『あっ……やだ……っ』)
耳に残っていたあの女の甘い声が再生される。
俺の下で淫らに揺れる身体が勝手に脳内で作られる。
(『や、玉藻さぁん……っ』)
あの女が俺の名を上擦った声で呼ぶだけで、ゾクゾクする。
嗚呼……足りない……。
(『玉藻、さ……も……っ、ダメ……ぇ』)
雄芯からは汁が溢れ、布団の中から粘着質な音が聞こえる。
あの女の蜜壺にしゃぶりついたら、どんな声を上げるだろうか。
浴室の扉を開けた瞬間、目に飛び込んできたあの女の身体……。
声……。
恍惚とした表情……。
そして雄(おとこ)を誘うようにひくつく蜜壺が……欲しい。
(『きゃ……っ、あああっ!』)
俺の雄芯をあの女の奥の奥まで挿し込んで、その柔らかさを味わいたい。
あの女を心ゆくまで突き上げて、食べ尽くしたい。
あの女も俺を欲しがればいい。
俺だけがあの女を欲しがるなんて……許せない。
瞼の裏であの女を揺さぶり最奥までを突き上げる。
あの小さな蜜壺はきっと俺の雄芯に絡みつき、俺を昂らせるだろう。
甘い声で啼き、俺にしがみついて俺を求めるあの女の姿はなんと甘美なものだろう。
俺を求めろ、欲しがれ。
あの女を思うがまま突き上げ、その奥に精を溢れるほど吐き出したい。
(『玉藻さ、ぁんっ、も……奥にっ、出してぇ……!』)
涙で濡れた目で見つめられぶるりと体が震えた。
「くぅ……!」
腰を揺らして己の精を掌で受け、荒い息を吐く。
嗚呼……この俺が女を想像して己を慰めるなんて……。
べったりと汚れた自分の手を見つめ、舌打ちをする。
その汚れを払うように手を振れば、力によって跡形も無く消えた。
「……くそっ!」
手早く夜着を直し布団を頭まで被る。
そうしてやり切れない思いと欲望に身体を燻らせながら、夢の世界を求めて目をキツく閉じた──。
嗚呼……こんなはずじゃなかったのに……。
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