奴隷とイッショ!~愛欲の加護~

冬生羚那

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NO.16

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 わたしは買ってきたものをその部屋で広げる。
 そしてスマホの画像フォルダを開き、目当ての画像を探す。
 必要そうな布地を手に、床に座り込む。
 そして布地を床に置くとにんまりと笑みを浮かべる。

「さあ、錬金だー!」

 画像を食い入るように見つめ、脳内にイメージを描く。
 布地に手を触れ、イメージがブレないように目を閉じる。
 ……うん、わたしが作りたいのはこれだ!
 イメージしたものになるように、掌から魔力を流す。
 布地がほんのり温かくなった、と思ったらぱぁっと光った。
 その光が収まったところで、そーっと目を開いてみる。
 すると布地だったものがネグリジェへと姿を変えていた。
 余った布地はその横にちょん、とある。
 そっとネグリジェを手に取り、表に裏にとひっくり返して確認してみる。

「……成功したぁ!」

 嬉しさに思わずガッツポーズをしちゃうぜ!
 やったね!
 これはお試しだけど、これで俺勝つる!
 興奮したわたしは思うがまま錬金術を使って色々なものを作っていく。
 染料を使って色を染めたり、ワンポイントになるだろう小さな花や蝶などを布地で作り、うんうん唸りながら作り続けた。

 そして出来上がったのが、ランジェリーの山である。
 これはただのランジェリーではございません!
 いや、ただのランジェリーもあるんだけどね。
 メインは絹のあれそれである。
 ぐふふ。
 この絹のランジェリーは売り物にするのだ!
 商売相手は一般人ではないけどね。
 さて……これらをどう売り込もうか……。
 普通にお店に持っていくんじゃあ売れないだろうし……。

「……そうだ、スマホ」

 スマホでとあることを調べてみる。
 すると、思っていた場所があることがわかり1人ほくそ笑む。
 アイテムボックスに作ったランジェリーを全て仕舞い、部屋を出て軽い足取りで月兎さんを探す。

「月兎さんはどーこっかなー」

 館の2階をぐるりと1周してみるけれど、いない。
 おっかしーなー?
 あ、もう片付け終わったのか。
 じゃあどこにいるのかなー?
 …………。

 皆 の 部 屋 わ か ん な い !

 すっかり聞くの忘れてたよ!
 皆部屋どこにしたんだろ!?
 えー……じゃあ……食堂行ってみようかな。
 ということで急いで食堂へ。
 そこにはエイルさんがいて、玉藻さんが地下と食堂を行ったり来たりしていた。

「あ、サツキちゃん」
「ここにいたんですね」
「今月兎が食事を用意してくれているから、少し待っててねぇ」

 そういうエイルさんは椅子に座ってまったりしている。
 玉藻さんは地下のキッチンから食事を運んでいるようで、わたしも手伝おうと地下へ向かう。
 地下にキッチンだなんて、酸素的に危なくないのかと思ったけれど、どこからか風が吹いていて、通気孔があるらしいのがわかった。

 地下に降りてすぐにキッチンがあり、奥に扉が2つある。
 1つは食料庫へ、もう1つは倉庫だ。
 食料庫からはワインセラーへ行ける扉がある。

「おや、サツキ様。もう出来上がりますよ」
「うん、お手伝いに来たんだけど……」
「ふふ、こちらは問題ありませんので座ってお待ちください」

 月兎さんは踏み台を使って鍋をふるっていた。
 ……月兎さん小さいもんね。
 そんな月兎さんの指示で双子があっちで食器を用意し、こっちで火の番をしている。
 わたしに出来ることがない……。
 わたしは大人しく食堂に戻ることに。
 わたしも椅子に座り、目の前に並ぶ美味しそうな食事に唾を飲み込む。

「何かしていたみたいだけど、上手くいったのかしら?」

 エイルさんにそう聞かれ、わたしは頷く。

「いい感じで出来たから、後で売り込みに行こうと思ってるの」
「売り込み?」
「そう」

 エイルさんに答えながらわたしはスマホのアイテムボックスを開く。
 そしてエイルさんの隣に移動するとその画面を開いて見せる。

「あら……あらあら」
「売れると思う?」
「そうねぇ……人を選ぶでしょうけど、売れるかもしれないわぁ」
「場所はね、当たりをつけてるの。そこに後で行こうと思ってるよ」
「ふぅん……面白そうねぇ」
「うっふっふ」
「楽しそうですね」
「あ、月兎さん」

 エイルさんと話している間に食事の用意が全て出来たらしく、皆がそれぞれ椅子に座り始めた。
 わたしもスマホを仕舞って席につく。
 そうしたら皆がこっちに目を向けてきた。

「……えーっと……あ、今日1日お疲れ様でした。これからも宜しくお願いします」

 ぺこりと頭を下げると皆が頷いてくれたのでほっと胸を撫で下ろす。

「じゃあ……えと……いただきます」

 手を合わせると皆が不思議そうに見ていた。
 どうしたのかと首を傾げればいただきます、と口にするのは奴隷だけだと言われてしまった。

 な ん で す と 。

「わたしのいた所では普通に言うんですよ。食材に、生産者に、食事を作ってくれた人に……みんなに感謝の気持ちを込めて」
「そうだったんですか。ですがそれは外ではしない方がよろしいですよ」
「わかりました」

 今までは小さな声で言ってたから玉藻さんにも言われなかったんだなぁ。
 これは気を付けておこう。

 食事はめちゃくちゃ美味しかったです。
 月兎さん凄い。
 鍋に大きさ負けてるように見えたのに。
 食後にジュースを飲んでいると月兎さんが不意にこちらを向いた。

「先ほどは何を話しておられたのですか?」
「え?……ああ!そうそう、月兎さんにはまたお仕事?をお願いしたいんですけど、いいですか?」
「お仕事?何でしょう?」
「とあるものを売り込みに行きたいんです。それの窓口になってもらおうかと思いまして」
「おや、何をどこに売り込みに行かれるんでしょう?」
「えー…………まずは娼館に行きます」

 そう言った瞬間、玉藻さんと双子が噎せた。
 エイルさんはけらけら笑っているし、月兎さんは面白そうに目を細めている。

「何故娼館へ?」
「そういった人達用のものなんです。あ、ただの娼館じゃなくて1番いい所がいいですね」
「なるほど……急ぎますか?店が開く前にということでしたらもう出ないと。仕事の時間になってしまいますと相手をしてもらえなくなりますよ」
「あっ、じゃあ今すぐ……いいですか?」
「わかりました。では八智と夜刀は片付けを」
「ごほ……はい……」
「ん゛ん゛、わかりました……」
「わたしはやることがあるから、帰ってきたらどうだったか教えてねぇ」
「はい、わかりました」
「わたしも行きます」
「あ、じゃあ護衛お願いします」

 こうしてわたしと月兎さん、そして玉藻さんの3人でお出かけすることになりました。



 月兎さんの案内で訪れたこの街1番の高級娼館。
 出入り口には強面のガタイのいい門番さんが2人立っていました。
 わたしは黙って月兎さんの後ろをついていくだけです。
 今のわたしはただのメイドさんです。
 ランジェリーを作っている時に、一緒にメイド服も作っていたのでした!
 いやだって……折角若くなったんだから、こういう格好もしてみたいなーって……。
 それにわたしが主だとか言うより、『主の命令で動いている月兎さんに従うメイド』の方が怪しまれないと思うんだもん。
 だってわたし少女。

 い た い け な 少 女 だ か ら !

 どうやらこの娼館の主人は月兎さんを知っていたらしく、すんなりと主人の部屋へ通されました。
 目の前には艶やかなお姉様がおられます。
 年齢不詳……。
 歳は聞いちゃいけないんだろうけど。

「お久しぶりですねぇ、月兎殿」
「ええ、お久しぶりです、ナーガ殿」

 にこやかに話し始める月兎さんと、お姉様……ナーガさん。
 だけどわたしはその会話が耳に入ってこない。
 だってナーガさん……上半身は美女で艶やかなんだけど、下半身とぐろ巻いてるんです。
 半分蛇さんなのです。
 鱗は薄い灰色で、明かりを反射して光ってる。
 うん、綺麗です。

「……それでナーガ殿に見てもらいたいものがあるのですよ」
「へぇ、わざわざ売り込みに来たのかい?」
「ええ、貴女の店で需要があれば、どこの娼館でも欲しがる者は出てくるでしょうからね」

 いつの間にか話が進んでました。
 ソファーに座っている月兎さんが振り向いてわたしに目配せしてきた。
 わたしは月兎さんの傍に立ち、鞄からランジェリーの1枚を取り出す。
 そのランジェリーは絹で出来た薄いものだ。

「なんじゃ……ただのランジェリーではないか。そこらにでも売っているものだろう?」
「説明をお願いしますね」

 訝しむナーガさんを前に月兎さんは説明をわたしに回す。

「このランジェリーは普通のランジェリーとは違って、見せるランジェリーになります」
「見せるランジェリー……?」
「はい。実際に着てみてください」

 そう言ってナーガさんにランジェリーを差し出す。
 ナーガさんはずるり、と動くとランジェリーを手に取る。

「まず、このランジェリーは通常のものより更に薄く出来ています。下に胸布を着用していてもいいですし、つけていなくても大丈夫です。胸布に関しましてはこういうものもございます」

 そう言って再び鞄に手を突っ込む。
 そして取り出したのは同じように薄い胸布だ。
 スケスケである。

「胸布やランジェリーを邪魔なものとしない、逆に見せて|魅せる(・・・)ものになります」

 ナーガさんはわたしの説明を聞きながらランジェリーをしげしげと見つめている。
 実は薄いだけなら普通に売っているのである。
 だけど、それらはただ薄いだけで飾りもない面白味のないものなのだ。
 今ナーガさんが手にしているのは薄い紫色で肩紐はレース裾にはフリル、胸元にはワンポイントのリボンがついている。
 所謂ベビードールである。
 このワンポイントのリボンを解くと左右に開くことが出来る。

「ふむ、普通のものとは違い飾りがあるのか」
「はい。……そしてこういったものもございます」

 このベビードールはまだ大人しいものである。
 わたしが実際に売り込みたいのはここからだ。

「なんじゃこれは?」
「胸布でございます」
「これが?」
「はい。ですが胸布よりオープンですから胸布としては機能しませんが。そしてこちらは下布になります」
「……紐ではないか」
「はい。魅せるランジェリーですから」

 唖然とするナーガさんににっこりと微笑みかける。
 わたしが売り込もうとしているのはセクシーランジェリーだ。
 下着というより裸体を|飾る(・・)ものである。
 レースで飾られているが、胸をほぼ隠さないフルオープンブラ。
 局部を一切覆っていない、もうこれ紐じゃね?と言わんばかりのショーツ。
 ナーガさんはそれらを手にぽかーんとしているけど、これで終わりじゃない。

 ま だ ま だ あ り ま っ せ !
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