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変わる関係

穏やかな時間

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 御主人様達の御友人との行為から3日が過ぎた。
 わたしは変わらず御主人様達の性奴隷のままだ。
 捨てられることも、売られることもなく、静かに日々を過ごしている。

 あの日、あの夜、わたしは調教部屋で御主人様達にたっぷりと教え込まれた。
 わたしが受け入れるのは御主人様達だけだと。
 その独占欲が嬉しくて、わたしは泣きながら御主人様達にしがみつき、強請ねだり、何度も御主人様達を受け入れた。
 御主人様達も、まるで離さないとばかりにぎゅうぎゅうと抱き締めてくれて、息が出来ない程の力強さに今死んでもいいとさえ思えた。
 ……実際抱き潰されて昇天したかと思ったのだけれど。

 御友人との行為は、本当に言ってはなんだけれど……気持ち悪かった。
 今までそんな状況になったことがないから、気付かなかった。
 好きな人以外との行為は、苦痛でしかない。
 これが、わたしが御主人様達を好きでなければ、また違ったのかもしれないけれど。

 ステファン様に許可を出された時は、悲しくて苦しくて辛くて……、だけど今は幸せだ。
 逃げる為に死にたくなった過去と違う、幸せの中で永遠を求めて死にたくなるなんて、わたしは何て恵まれたのだろう。
 望まれる幸せは、この先きっとない。
 ううん、御主人様達以外に望まれたって幸せじゃない。
 今、大好きな御主人様達に望まれているから幸せなのだ。
 性奴隷と御主人様という関係だけれど、わたしは幸せだ。
 もし、御主人様達がわたしに飽きたとしても、悪いようにはしないだろうと思うぐらいには信頼もしているし。

 だけど欲を言えば、もし飽きた時は性奴隷から解放してほしいな……と思う。
 御主人様達を想いながら強要されて奉仕させられるのは……きっと、死にたくなるほど辛いだろうから。
 …………そんな我が儘が通るかは、わからないけれど……。

 そしてあの夜の後、わたしは御主人様達にそういう意味では呼び出されてはいない。
 一緒にお茶をして、他愛ない戯れを受け、抱き締められ、抱き締め返し、口付けを受け、口付けを返し……そして1人で眠るのだ。
 身体を求められないのは少し不安だけれど、ジェイさんは何も心配することはないって言うし、御主人様達も何かを急いでいるみたいで、忙しそうなのはわかった。
 何をしてるのかはわからないけれど。

 大丈夫だよ、心配しなくていいよ……そう言うのなら何をしてるのか教えてくれてもいいのにな、とは思うけれど口にはしないでおく。
 煩わしく思われるのは嫌だからね。
 それが原因で放り投げられたら困るし。
 御主人様達とジェイさんの言葉を信じて待とう。

 そして4日目の今日、ただいま居間でステファン様とウィリアム様と3人でお茶しています。
 どうやら御主人様達は寝る間も惜しんで何かしていたらしい。
 麗しいお顔の、目の下には薄らと隈が見えている。
 けれども御主人様達はどこかやり切った、という表情をしている。
 ……わたしだけが蚊帳の外で、ちょっと悲しいけれど……それよりも、今の御主人様達との時間を大事にしなくちゃね。

 並んで座れるソファーに3人で並んで腰掛けている現在……御主人様達の手があっちこっちをさわさわなでなでと動き回っている。
 くすぐったいし不意に気持ち良いしでわたしは身を縮こまらせてしまうのだけれど、そうすると2人はくすくすと笑いながらわたしの頭を優しく撫でて頬にキスをくれる。
 御主人様達に身体を求められるのも好きだけど、こうやって穏やかな時間を過ごすのも、とても幸せだと思える。

 ああ……まるで恋人同士のような時間だ……。

 幸せの中にほんの少し……水を1滴垂らしたような波紋は、気付かないフリをしなくちゃ。
 これ以上を望んではいけない。

 女の性奴隷はわたしだけであってほしい。
 好きになってほしい……なんて……。

 ふふ、身体を求められないからか、ちょっと不安なのかもしれない。
 性奴隷の存在理由は身体だから。
 これが一般人同士なら、……いけない。
 そんなどうしようもないことは考えちゃいけない。

 わたしは性奴隷で、御主人様達はわたしを可愛がってくれている。
 それで充分じゃない。

「どうしたの?浮かない顔して」
「ぁ……、いえ、なんでもないです」
「なんでもない風には見えないけどなぁ?ねぇ、ステフ」
「ああ。何を考え込んでいる?」
「……わたしは幸せだなぁ、って……。こんなに甘やかされて、いいのかなぁって……」

 2人の間で小さく微笑む。
 他の性奴隷を詳しく知らないけれど、自分が甘やかされていると思うからね。
 ああだけど……やっぱり御友人との一件も、心の片隅で燻っている。
 2度とないと言われていても、性奴隷は性奴隷でしかないから。
 じわじわと拡がる波紋を収める方法が、今はわからない。

「……シーナ」
「あ、はい」

 わたしの腰に腕を回しているステファン様が、不意にわたしを呼んだ。
 その腕には僅かに力が入り、ステファン様に抱き寄せられる。
 どうしたのかと顔をあげると、真剣な目で見下ろされていた。
 もう1つ腕が腰に回り、ウィリアム様がわたしにくっついてきた。
 ウィリアム様とステファン様の間にぴったりと収められて身動きが取れなくなってしまう。
 御主人様達を交互に見上げるけれど、2人共真剣な目をしていた。
 どうしたのだろうか、何か言われるのだろうか。
 唾を飲み込み2人の言葉を待つ。
 先程までのまったりとした空気は霧散していて、緊張感が漂う。

「……シーナは、もし性奴隷から解放されたらどうする?」

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