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変化?

悩み

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「うー……」

 頭がくらくらする。
 ちょっと考えることがあったせいだ。
 悩んでたら熱が出た。
 びっくりです。
 これが知恵熱か。

 2日前、偶然聞いちゃった奴隷メイドの言葉に、御主人様達からの突然の休暇期間。
 物凄くもやもやしてたら……昨日の朝、熱が出ました。

 いっぱい考え過ぎたらしい。
 今まで知恵熱なんて出したことなかったのに。
 だけどいっぱい考えたおかげで、ちょっと気付いたことがありました。

 どうやらわたしは御主人様達が好きらしい。

 何やらお仕事で忙しい御主人様達が、心配そうに顔を覗かせた昨夜……気付いてしまいました。
 ちょっと熱でくらくらしてたけど、ううん、熱のせいで泣けてきた。
 心配かけてしまって申し訳ない……でも、心配してくれて、嬉しい……。
 そして唐突に気付いた、わたしの心。

 ああ、好きだなぁ。

 熱で赤くなっていた顔が更に熱くなっちゃって、御主人様達が狼狽えてた。
 大丈夫か、熱が上がったか、何か冷たいものは、医者を呼べ……そんな御主人様達にちょっと笑っちゃった。
 熱だけだから心配ないと何度か言ったんだけどお医者様が呼ばれてしまった。
 診断はやっぱり知恵熱。
 申し訳ないです、知恵熱で呼び出して。
 でも御主人様達はお医者様の診断を聞いて少しほっとしたような表情だった。

 きちんと診断されると何か安心するよね。

 ジェイさんも診断結果を聞いてほっとしてた。
 ジェイさんには色々良くしてもらっててありがたいなぁ。
 わたしの世話も大変だろうに、嫌な顔はしないし。
 わたしは周りの人に恵まれている。
 御主人様達にジェイさん。
 性奴隷のわたしがこんなにも良くしてもらってる。

 だから、御主人様達は好かれるんだ。

「起きてる?」

 ぼんやりしているとジェイさんがやってきた。
 まだ頭がくらくらするから顔だけを向ける形になったけど、安心させるように笑う。

「起きてますー」
「熱は……まだあるわね」

 ジェイさんが額に乗せていた温くなったタオルを冷やしてまた乗せてくれる。
 その冷たさに目が細くなった。

「何か食べる?お水は?」
「うーん……お水だけ欲しいです」
「ん」

 わたしの額からタオルを取りゆっくりと起こしてくれて、テーブルに載せられた水差しからコップに水を注いでくれる。
 ありがとうとコップを受け取り水を飲めば、なんだか少しスッキリした。

 でも、彼女はどうなったのかと頭にチラつくのだ。
 御主人様達の性奴隷になるのか。
 そうしたらわたしは捨てられるのか、売られるのか。

「ふぅ……」
「何を考えているの?」

 不意にジェイさんに問いかけられてドキリとした。
 探るような目でじっと見つめられると、居心地が悪い。
 御主人様達のことを好きだと気付かなければ、こんな風に思わなかっただろうに……。

「あの……この前の奴隷メイドって、どうなったんですか?」
「……どうして?」
「彼女も御主人様達の性奴隷になるなら、わたしはどうなるのかなぁ、って……思って……」

 ジェイさんに顔を向けられず、手元のコップに視線を落とす。
 ジェイさんが手入れしてくれる髪がさらりと滑ってわたしの顔を隠してくれた。
 こんな顔、見せたくない。

「彼女の処遇はもうすぐ決まると思うわ」
「……」
「だけど、彼女が御主人様達の性奴隷になることはないでしょう」
「え……?」

 ジェイさんの口から御主人様達の性奴隷にならないと聞かされて思わず顔を上げてしまう。
 ジェイさんは小さく、優しそうな微笑みを浮かべていた。

「シーナは奴隷が自分の道を決められると思う?」

 そう問いかけられて考えてみる。
 わたしが知る奴隷は、この屋敷に居る奴隷メイド達とわたしだけだ。
 他にも預かっている性奴隷が居るらしいけれど、まだ会ったことはないからちょっと置いておく。
 それにしても、奴隷というのは主人が買った人間になる。
 主人に逆らうような事をすればいらないと手放される存在だ。
 ならば主人には従うものだし、主人の敷いた道を歩くものだろう。

 首を小さく横に振ればジェイさんは頷いた。

「あの子は御主人様達に買われて奴隷メイドになりました。だから彼女が何かを望んでも、最終決定は御主人様達がする」
「そうですね」
「そして御主人様達は彼女を御自身の性奴隷にしないと決められた」
「……はい」
「それだけの話よ」
「……じゃあわたしはまだ捨てられないんですね」

 ぽつりと飛び出したわたしの言葉にジェイさんは一瞬目を丸くすると次いで目を細めそっとわたしの頭を撫でた。

「何を心配しているのかと思ったら……。まあ仕方ない話だけれど、御主人様達は理不尽なことはしないでしょう」
「そうですね。御主人様達は優しくて……でも、だから心配にもなります……。この状況は、御主人様達がわたしに飽きたら終わってしまうから……」

 じわりと浮かぶ涙を慌てて拭う。
 ジェイさんはそんなわたしの頭を優しく何度も撫でてくれて、それがまた涙を誘う。

「……貴女が貴女であれば……この状況は続くわ」
「……わたしが、わたしであれば……?」
「さあ、悩むよりも早く元気になって、御主人様達に笑顔を見せて差し上げなさい」
「……はい」

 うん、悩んでてもわたしにはどうすることも出来ないし、ね。
 早く元気にならなくちゃ。
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