霊感少女の日常

冬生羚那

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たまにある

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 あたしは女子高生らしく、朝起きて学校へと向かう。
 起きる為のアラームはスマホ頼みだ。

 いつも傍に居るあっくんや、紅では当てにならないのだ。
 あっくんは『めんどくさい』、紅は『何故我がそんなことをせねばならぬ』。
 お願いしてみた時の反応はコレだった。

 楽は出来ないなぁ、と若干残念にも思ったが、まだスマホのアラームで起きることが出来るから、いいだろう。
 中学の時に仲の良かった子は、目覚まし時計やスマホのアラームでは起きられず、親や近所に住む幼馴染に叩き起こされていると聞いたことがある。
 比喩ではなく、『頭を叩かれ』、『頬を叩かれ』……最終的にはベッドがら落とされるらしい。
 なんてバイオレンス、と恐怖もしたが、そこまでされても寝る友人の方が微妙に怖い。

 閑話休題。

 起きて顔を洗って、着替えてあるもので朝食を済ませれば、すぐ家を出る時間だ。
 毎日あっくんは憑いてくるけれど、紅は気分で憑いてくる時と、そうじゃない時がある。

 普通に歩いていれば、何のことはないただの通学途中。

 だけど『視て』みれば、そこかしこでふわふわゆらゆらと視える。
 浮遊霊ぐらいならば、危険はないのだが、時折何とも言えない『存在』も視かける。

 それは人と変わらない姿で存在している。
 少し透けてはいるが。
 そして何故か鉄パイプを持っていたりするのだ。
 ゴリゴリ、とコンクリートを削る音を立てながら、覚束ない足取りのソレ。

 恨み辛みだろうか、ブツブツと何かを呟きながら歩くソレはいわゆる『生霊』だ。

 この時のは殺意を持った生霊だった。
 殴り殺したい、という感情から生まれてしまったのだろう。

 たまに、こうして生霊を生み出す人は居るのだ。
 意識的にしろ、無意識的にしろ。

 生霊と浮遊霊の違いは、その背中だとか頭だとか、足辺りに、ほんのりと視える。
 何かと繋がっているような感覚がするのだ。

 後、生霊はなんか生きてる感覚がする。
 生気、とでも言うのだろうか。
 そういうなんとなく温かいモノを感じるのだ。

 そして生霊は指向性を持っている。

 何故今、そんな話をしているかと言うと、現在前の方から刃物を振りながら歩く生霊を視ているからだ。
 すれ違う人に切り付けているが、透けた刃はすり抜け、痕を残さない。

 そして憎々しげに去りゆく人を睨んでいるのだ。

 切り付け、気付かれず、違う人にも切り付け、やっぱり気付かれない。
 忌々しそうに人々を睨み、そうしてまた違う人を切り付けようとしている。

 あれは、良くない。

 今はまだ誰も危害を加えられていないが、力を増した時には無差別に人を害する存在となるだろう。
 そうなれば、始めはちょっとした切り傷がいつの間にかついていた、で済む話が命を落とす人が出てくるかもしれない。

 そう思いながらぼんやりと視ていたら、『ソイツ』は次の獲物として、あたしを見定めた。
 バッチリと視線が交わった。

 ニヤァ、と厭な笑みを浮かべたソイツは、ゆらゆらとあたしの方へと歩いてくる。

『……アイツ、なんかこっち向かってね?』
「っぽい」

 背後で浮いたまま憑いてくるあっくんも、気付いた。
 パーカーのポケットに手を突っ込んだまま、ふーんと気のない声を出している。
 お互い目立つような動きはしない。
 進行方向に居る生霊はあたしの方へ向かってくる。
 あたしも普通に歩いて近づく。
 そうしてお互いの距離は狭まり、生霊は手に持っていた包丁らしきものを振り上げた。

あ、虫きえろ

 右手を下から斜め上へと振り上げれば、生霊の左顎にヒットした。
 肌の感触はしないがそこに何かの質量は感じ、そしてそのまま腕を振る。
 顔が跳ね上がった生霊は、そのまま空気に溶ける様にして消えていった。

 そしてあたしは何もなかったと、再び学校へと向かったのだ。
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